2016/3/25 Fri
日本でサービスを成功させるAirbnbの展開
~『史上初、東京タワーに泊まろう!夜景も日の出も独り占め!』~
小田 誠
Airbnb Japan 株式会社 カントリー・ブランド・マーケティング・マネージャー
岡田 寿代
株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 グローバル戦略局 局長
有賀 翔平
株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 オンラインビデオソリューション局 プランナー
安藤 啓一
株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 クリエイティブ・テクノロジー局 ディレクター
海外発のサービスを日本で成功させるためのキャンペーン企画を実施。
「主役はゲスト」という想いに軸を置き、企画を成功に導くことで、Airbnbの国内認知度の向上に寄与しました。
Airbnb Japan より小田氏を迎え、本プロモーション担当者と共にインタビュー取材を行いました。
企画概要と、企画に至る背景
CA有賀:Airbnbのサービスを通して、一夜限りの夢のおもてなし企画『史上初、東京タワーに泊まろう!夜景も日の出も独り占め!』という、東京タワーに宿泊できるキャンペーンを昨年末の12月に行いました。
お孫さんやお子さんがキャンペーンに応募して、祖父母やご両親に夢の一夜をプレゼントするという企画です。
日本を牽引してきたシニア世代の方1組2名様をご招待し、東京のシンボル的存在である東京タワーの大展望台に、和の風情感じるお部屋を一夜限りご用意。当日は近隣の増上寺でお茶体験などのツアーから、宿泊翌日は日の出と共に朝食を召し上がっていただくなど、東京タワー宿泊以外にも1泊2日の予定を楽しんでいただきました。
小田氏:これまでAirbnbは、息を呑むような感動の瞬間を世界中で創出してきました。これまで体験できるとは夢にも思っていなかったような何かを体験できる企画です。例えば、ノルウェー・オスロにあるスキーのジャンプ台の上や、サッカーW杯にも使用されたブラジル・リオデジャネイロにある世界最大規模のサッカースタジアムに泊まれるというユニークなキャンペーンを実施してきました。日本でもいくつか実施してきたのですが、もう一歩上を行く「本当に一生に一度!」と思えるような体験ができる場所で行ってみたいと考えていました。そこで御社にお話ししたところ、東京タワーを宿泊場所とした本企画を提案していただきました。
意識したポイント
小田氏:本企画で一番大事にしていたことは、『主役はあくまでも宿泊するゲスト』ということです。これは、御社含め企画に関わる方全員に対して何度も伝えていた想いです。宿泊するゲストが一番気持ち良く時間を過ごしてもらうこと。ここに全ての判断基準をおきました。
結果として、メディア露出的なPR効果はとても良いものとなったのですが、その効果を生み出せたのも、結局は良いストーリーのもとゲストが心から楽しみ、その様子が映像や写真に残り伝わったからだと考えています。そして、我々にとって一番の成功は、泊まっていただくゲストが「来てよかったな。泊まってよかったな。」と心から感じて下さったことです。
CA有賀:Airbnbでは、「ホスト」という宿泊者(ゲスト)を迎え入れるホスピタリティの考え方があるのですが、今回自分がホストになって宿泊するゲストを迎え入れ宿泊を楽しんでもらうということを、企画段階から意識し制作にあたりました。
CA安藤:私は宿泊以外のおもてなしツアーのところを担当していたのですが、本企画は、旅行会社が企画するツアーではなく、普段Airbnbが提供している「ホスト」と「ゲスト」という個人間の温かみがきちんと伝わることを意識していました。
例えば、旅のしおりを手作り感のあるデザインにしたり、押し付けがましい感じではないということを最後まで大事にしました。
今回Airbnbのサービスに触れた「ゲスト」の方々がとても楽しんで下さっていて、そして、サービスを提供する側である「ホスト」をやってみたいな、というリアルな声を聞けたのもとても嬉しかったです。
企画の効果
CA有賀:宿泊当日に向けて事前募集を1ヶ月前から行ったのですが、告知の段階からとても多くの問い合わせを各方面よりいただき、既にとても盛り上がりをみせていました。
本企画は、親孝行や祖父母孝行を兼ねて東京タワーでの一夜限りのお泊まり体験をプレゼントする、という応募形式をとっておりました。ところが、おじいちゃんおばあちゃんから「泊まってみたい」と東京タワーに問い合わせがきていたそうで、お孫さんの代である若者だけではなく、高齢の方にも本企画が届いたというのはとても嬉しかったです。
小田氏:社内で応募目標数を掲げていたのですが、その数はちょっとハードルが高いかなというものだったんです。
何故かというと、応募者本人が宿泊できるのではなく、応募者のご両親や祖父母が宿泊者になるので、そうするとスキーム的には少し手間のかかるものになってしまうからです。ですが、いざ蓋を開けてみると、応募目標数の1.5倍を超えるご応募をいただけました。
CA岡田:本キャンペーン同時期に、社内のインターンで関わる学生から「Airbnbが新しい面白いことをやっている!」という話を耳にしたり、テレビで観たという声を周りからも聞いていました。本キャンペーンを通じて、Airbnbの取り組みを周知したい層にも届いているのだなと改めて感じていました。
小田氏:本当に良い企画で、我々が想像していた以上の結果となりました。
印象的だったのが、本企画を取り上げた朝の情報番組で、その映像を見ていたコメンテーターが番組中に泣いてたんです。その時、改めて人の心に響く企画になっていたんだと改めて感動しました。
ゲストの方は、広島からお越しで2回目の東京なんです。お孫さんがメディアのインタビュー時に、ちょっと涙ぐんでいたり、おばあちゃんが、「何も言葉が出ない」と言いながら涙ぐんでいたり、そういった場面を何度か目にすることができたのが非常に嬉しかったです。
お泊まり頂いた当日におじいちゃんが「明日、白い富士山を見れたらいいなぁ」と言っていたのですが、翌朝、雲一つない空の下、白い富士山にオレンジ色の朝日が照らされた美しい富士山の絶景をみることが出来たんです。
東京タワーの方も、この日の富士山は、今シーズンで一番きれいだと仰っていました。僕もその景色を覚えていますが本当に感動しました。
お二人が朝日を一緒に見ているシーンを動画に収めているのですが、この動画は何度観ても本当に泣ける仕上がりです。
こだわった動画制作
CA有賀:本キャンペーンにおいて動画を2本制作しました。1つ目が、東京タワーのこんな部屋に泊まりますということを伝える事前告知の動画です。もう1つは、小田さんが仰った朝日のシーンを収めている、当日の様子をゲストに寄り添いドキュメンタリータッチで撮影し編集した動画になります。当日の動画では、ゲストの方々が楽しんでいる様子や表情が伝わるよう撮影させてもらいました。ゲストの方が非常に協力的で和気あいあいと撮影させていただけたので、雰囲気の伝わる動画に仕上がっていると思います。
小田氏:動画制作において、事前にいくつかお願いしたことがありました。例えば、主役はあくまで東京タワーでなくてゲストの方々であるということこと。企画段階からそこに基軸を置いていましたし、動画に関してもそれは同じでしたので。
そして、有賀さんから仕上がった最初の映像を見た時、想像以上の出来栄えでしたので、これは良いものができるな!と確信しました。
あと、一番嬉しかったのは音楽です。動画内の音楽についてはあまりリクエストしていないのですが、御社が最初に入れてくれた音楽が良かったので、そのまま最後までいくことができました。
社内の話ですが、動画の制作の際に、リージョナルやグローバルチームと議論をしている中で、チームの全員が「あの音楽はすごく良いね」と賛同していたんです。音楽に関して、うちのチーム全員が共感できるほど、御社の方々は我々のことを理解していただいているんだなぁと、とても嬉しくなりました。
動画制作もすごく大変だったとは思うのですが、この動画は何度観ても本当に泣ける動画に仕上がっていて大変満足しています。
グローバルから見た本企画
CA岡田:本企画において、リージョナルやグローバルチームからは、どういうフィードバックがあったのですか?
小田氏: PR企画としては成功しただろう、と。ただ、PRというのはプロセスに過ぎないので、それによってどう変化させられるかが大事になってきます。
実際に、Airbnbのブランド認知度を計っているのですが、昨年末に計ったところ、昨年夏ごろの数値から半年以内でAirbnbの日本国内での認知度が上がっていたんです。
CA岡田:認知度が半年以内で上がったっていうのはすごいですね。
小田氏:すごいですよ。もちろん、他のキャンペーンも実施していたので本企画だけが要因ではないですが、一番大きくブーストさせたのは本企画だと思っています。
リージョンやグローバルチームからは、本企画を実施して良かったね、というフィードバックをもらっています。
今回、我々が伝えたいメッセージはある程度は伝えられたのかなと思っています。そして、本企画に関わってくれたみんなが「実施して本当に良かった」と思えた企画だったと思います。
こういう企画をこれからもやっていきたいですね。ただ、東京タワーの本企画が良かったので、社内でのハードルがものすごい上がってるんです。(笑)
これを超える企画を実施していかないといけないので、そこはぜひ御社にまた提案を頂きたいです。
日本展開における今後の展望
小田氏:日本に来て間もないサービスなので、日本の方にもっと知ってもらい、利用してもらいたいです。
Airbnbに掲載されている宿泊先に「ゲスト」として宿泊して頂き、ユニークで思い出に残る、泊まって良かったなと思う体験をして頂きたい。ゲスト側、つまり宿泊者としての体験を、もっともっと多くの人に味わってもらいたいと思っています。
もう一つは、いま日本には多くの外国人が訪れて来ていますが、そこで、「日本をもっと体験したい」「もっとローカルな体験や、ユニークな体験をしたい」とい外国人はすごく多いと思うんです。
そういった外国人に向けても、おもてなしができる方を日本でもっと増やしていきたいと考えています。Airbnbという、世界に発信できるプラットフォームを活用していただき、「日本のおもてなし」という気持ちや文化を、世界中に発信していってほしいです。
宿泊者の「ゲスト」を受け入れる「ホスト」を日本でももっと増やし、おもてなしの体験を海外の人にもより多く知ってもらいたいと考えています。
それによって、日本の観光地はもちろん、あまり観光では訪れないような場所にも泊まっていただき、ユニークで、ローカルな体験をしてもらうことによって、日本の魅力をもっと知ってもらいたいですね。
今後は、そういった体験ができる「リスティング」(宿泊場所)を提供していただけるホストを、より増やしていきたいです。
ですので、今後、Airbnbを利用してくださる「ゲスト」と「ホスト」の両方が増えてくれるといいなと考えています。
CA岡田:海外発のサービスを日本で成功させるということは、日本人にとってはユニークだったり、ハードルが高いことだったりするので、企業の皆さんはどう成功させていくのが良いのか、すごく悩まれていると思います。
企業の良いサービスと、日本の良さや文化が、相互に理解し組み合わさることでより良い効果を生み出せますし、また、元々良いサービスであれば、ターゲットに刺さるストーリーをきちんと展開することで、サービスはより広がっていくと思っています。
我々としては、サービス理解をしながら、海外発だからというものを抜きに、日本でサービスを成功させるためのサポートを今後も注力していきたく思っています。
カントリー・ブランド・マーケティング・マネージャー
インターネット広告事業本部 グローバル戦略局
局長
インターネット広告事業本部 オンラインビデオソリューション局
プランナー
インターネット広告事業本部 クリエイティブ・テクノロジー局
ディレクター
_____________________________________________
取材・執筆: 加藤 貴子 (株式会社サイバーエージェント 全社広報室 インターネット広告事業本部 広報)
_____________________________________________
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
の最新情報をお届けします