2015/11/27 Fri
YouTube 「ブランド効果測定」を活用した、動画広告の要素分析(前編)
箸尾 拓哉
株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 クリエイティブテクノロジー局 シニアプランナー 兼 オンラインビデオ総研 主任研究員
2004年、サイバーエージェントへ入社。
動画広告の企画制作から大規模なサイト構築のプロデュースまでオンライン上のクリエイティブ領域全般の実績多数。
2015年10月より動画広告の研究組織、オンラインビデオ総研で主任研究員を兼務。
YouTube 「ブランド効果測定」を活用した、動画広告の要素分析(前編)
当社では先日、動画広告市場の発展に寄与することを目的に、その関連する調査を行う専門組織、オンラインビデオ総研を設立しました。
市場調査やユーザー調査に加え、商品開発や産学連携の取り組みなども積極的に行い、情報発信を強化しています。
今回のコラムでは、オンラインビデオ総研にて調査を推進してきました、昨年末より無償聴取可能となったYouTube TrueView広告の「ブランドリフト調査」についてお伝えします。
このたび、100を越える実績データを蓄積したデータベースが完成したこともあり、『効果が上がっているクリエイティブ素材の特徴と傾向の分析結果』を、前編・後編に分けて、みなさまに報告します。
※YouTube TrueView「ブランドリフト調査」について
YouTube TrueView広告の配信時に無償で実施できるサービスのこと。
配信した広告に「接触したユーザー」と「接触していないユーザー」に対して、広告配信後にYouTube上でアンケートを実施することで、広告認知率、ブランド想起率の実質的な効果検証が可能。(無償ですが、一定の出稿規模が必要)
本コラムでは、個々の事例に触れる訳ではなくクリエイティブ企画の仮説づくりや汎用性の高いナレッジをお伝えしたいと思います。
「全ての動画に当てはまる必勝の公式」とは言えませんが、演出・編集プランのガイドラインになるようなナレッジのひとつに加えて頂ければ幸いです。
前編では、ナレッジ報告の前に、昨今の動画広告クリエイティブの傾向について整理し、次回公開の後編で具体的なノウハウについてご紹介します。
クリエイティブ素材のパターンと広告目的
当社、オンラインビデオ総研の広告主調査によると、動画広告の実施目的で最も多かったのは「認知獲得」、次いで「ブランド想起率UP」「顧客獲得(CV)」がほぼ同等でした。
従来、WEB広告のメインは「顧客獲得(CV)」目的がほとんどでしたが、「認知獲得」や「ブランド想起率UP」も多く利用されるようになったことに、まずは驚きです。
YouTube TrueView広告の実態に合わせるため、今コラムでは主に「認知獲得」目的の事例をまとめていきます。
まず、YouTubeで配信されている動画広告素材を下記の4つに分類しました。
1)テレビCMそのまま流用
2)テレビCM+ちょい足し
3)CMスピンオフ
4)WEBオリジナル
1)テレビCMそのまま流用
テレビCM素材をそのままWEBへ配信するケースも多いです。テレビではリーチできないターゲットにリーチ補完する目的で利用されているようです。(なお、本件とは関係ありませんが、サイバーエージェントでは「テレビCMが当たらない層」のWEBメディア接触行動を調査しており、YouTubeだけでなく、その他のメディアも組み合わせたプランニングが可能です。)
2)テレビCM+ちょい足し
テレビCMの前や後ろにWEB独自の要素を加える手法です。たとえば以下のような事例です。 ※下記商品は架空のものです。
テレビCM本編の後ろにキャンペーン情報を訴求する「テキストベースのスライド」を追加することで動画視聴後のアクションを狙っています。テレビCMの「ぶら下がり」と同じような手法です。一般のパソコンでも編集可能なテキストと画像を組み合わせた簡易構成のため、低コスト短納期で制作できることもメリットです。
3)CMスピンオフ
テレビCM内で起用されたキャストや世界観はそのままに、別ストーリーで作品を用意しWEB限定配信をしている動画事例です。
特にテレビCMが大量出稿されているような場合、既存のテレビCMとは違った動画を配信することで、限定感を与えることができます。
4)WEBオリジナル
広告主への調査によると、『WEB動画を配信している広告主のうち、過半数の広告主」がWEBオリジナルの動画を制作していることが分かりました。
(ただし、ここに含まれているのは上記で紹介した「CMスピンオフ」も含まれていると思います。)
WEBオリジナルの動画広告を制作するメリットは、秒数フォーマットにとらわれない自由なプランニングが可能なこと、そして、テレビCMよりも比較的低単価で制作が可能なことが挙げられます。
そして、WEB広告の配信テクノロジーを活用して、比較的狭いユーザー層だけに響く配信が可能なことも、追い風だと思います。
また、スマートフォンでの動画視聴が増えてきており、小さいディスプレイでは文字が見づらく、テレビCMそのままの素材では対応できない場合があります。
これらの背景から、WEBオリジナルの動画広告の制作をおすすめしています。
クリエイティブの新トレンド「長尺動画」と「短尺動画」
WEB動画広告はテレビCMと違い、尺(秒数)が自由なためプランニングの選択肢が豊富です。サイバーエージェントでよくご提案しているのは「長尺動画」「短尺動画」を使い分けたプランです。
ブランドの世界観やメッセージをテレビCM以上に伝えたい時は「長尺動画」で、1分〜4分程度のものを提案します。
長尺動画は最後まで見られにくい(離脱率が高い)イメージもありますが、当社実績によると、素材にもよりますが平均を上回る高い視聴率(20%以上)を得た事例もあります。
逆に、「短尺動画」は5秒から10秒以内の動画になります。15秒よりも短いので、YouTube上ではスキップされにくくなり(視聴率が高くなり)結果として、配信単価を低く抑えられるため、コスト効率よく予算内で多くのリーチを得ることが可能です。
ただ、訴求できる秒数が限られるため「ワンメッセージ+ロゴ+商品説明」程度にとどめ、インパクトのある演出を提案しています。
前編の今回は、WEB動画クリエイティブの最近のトレンドについて、よくある手法とフォーマットを中心にお伝えしてきました。
次回は「ブランドリフト調査」の実績数値を見ながら、どういった演出が動画広告の効果に影響するのかを考察していきます。
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