2016/1/8 Fri

YouTube 「ブランド効果測定」を活用した、動画広告の要素分析(後編)

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箸尾 拓哉

株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 クリエイティブテクノロジー局 シニアプランナー 兼 オンラインビデオ総研 主任研究員

2004年、サイバーエージェントへ入社。 動画広告の企画制作から大規模なサイト構築のプロデュースまでオンライン上のクリエイティブ領域全般の実績多数。 2015年10月より動画広告の研究組織、オンラインビデオ総研で主任研究員を兼務。

クリエイティブ要素と広告効果の関連性についての考察

『YouTube 「ブランド効果測定」を活用した、動画広告の要素分析』後編の今回は、クリエイティブの具体的要素が広告効果にどう影響するのか、汎用的なナレッジをまとめていきます。
(前編記事は【こちら】
弊社では、YouTubeの広告出稿時に実施可能なブランドリフト調査の実績をまとめ、下記のようにクリエイティブ要素と広告効果の相関関係を整理しています。
平均値と比較して「赤の矢印」に関連性があり、「空欄」には関連性が弱いといった見方をします。

※ロゴの掲出タイミングによる広告効果への相関関係をまとめた表です。

ブランドロゴはいつ登場するのが良いのか?

動画広告制作時に、ブランドロゴの配置について議論されることは多いと思います。今回の実績では大きく下記3つのパターンがありました。

1)冒頭5秒以内に登場
2)随時画面スミに配置
3)動画の最後に登場


YouTube TrueView広告は「スキップ」の関係もあるので「動画の冒頭にブランドロゴを出すべきだ」と考えた方は多いと思います。また逆に、いきなりブランド ロゴがでてくると、ユーザーが「広告だ」と強く思い、離脱リスクが高くなるのでは?といった反対の仮説もあります。

当社実績では(WEB オリジナルの動画広告に限りますが)、冒頭5秒以内にブランドロゴが登場した素材の方が、広告想起率が高くなるという傾向がみられました。5秒でスキップ してしまうユーザーも検証の対象となり、ブランドロゴを見せることができている為、効果が良いのではと想定しています。
しかし、ブランド認知率との関連性は見出すことはできませんでした。また、視聴完了率も平均数値と変わりはなく、動画冒頭でブランドロゴを強調することによる離脱リスクは意識しなくても良さそうです。

動画広告の素材は、WEBオリジナル素材のほうが効果良い?

次に、動画広告の素材の種類によって広告効果に影響があるのかを見ていきます。前編の記事でもご説明しましたが、現在配信されている広告素材の種類は下記4つに分類されます。

1)テレビCMそのまま流用
2)CMスピンオフ
3)テレビCM+ちょい足し
4)WEBオリジナル


このうち、テレビCMをそのまま流用せずWEB用にカスタマイズされている場合(2~4)の効果比較をしたいと思います。
CMスピンオフとCMちょい足しは広告想起率アップしていますが、ブランド認知率とは関連性が弱い結果となりました。またCMスピンオフについては視聴完了率も平均値より高い数値となりました。
反 対にWEBオリジナル素材は、ブランド認知率の上昇に関連しています。テレビCMと関連性の高い素材を配信した場合、お馴染みのタレントやその世界観に触 れることにより、広告想起率の向上につながっていると考えられます。WEBオリジナル素材の場合、そもそもテレビCMを出稿していない企業がWEBオリジ ナル素材を配信しているケースも多く、ブランド認知率の向上に貢献しているのではと考えられます。

「音声ミュート」の視聴環境を想定すべき

モバイル視聴においては、音声がオフにされた状況での視聴を想定した方が良いでしょう。たとえ「音声ミュート」とされていても、動画の内容が理解できるよう、字幕をつけることを強く推奨します。
今回の調査結果を見ても、「字幕付き素材」のほうがブランドリフト値も良い傾向にありました。
個人的見解ですが、スマホ向けに配信する場合は、「字幕大きめ」で「視認性の良いフォント」にすると、更に効果的です。

はじめの「10秒ルール」

YouTube TrueView広告は、再生開始5秒後以降の、30秒での課金発生がポイントです。
ターゲットにきちんと最後まで動画をみてもらうために、視聴者にとって有益である(もしくはなんだか面白そうだと)思ってもらう必要があります。

配信実績を精査していると、やはり、「つかみ」にインパクトがあるクリエイティブは視聴完了率も高い傾向にあります。
それでは、配信実績で効果の高かった「はじめの10秒」の3つのパターンを紹介します。


1.ターゲットを限定するコピーライティング
強制視聴の5秒前後で「ターゲットを限定する」手法です。ニーズ喚起など特定のユーザーにメリットがある場合に有効な手法で、広告配信もターゲティングで絞ると更に効果的です。

※イメージ
2.ファンの多いキャラクターorアイコン
こちらも特定のユーザーには興味深い、思わず見てしまうキャラクター、アイコンを「はじめの10秒」で登場させるパターン。弊社の制作事例では、某海外ドラマとのコラボ動画で、ロゴを早い時間で登場させることにより高い視聴率を獲得できました。


3.アニマル系(犬猫)
WEBで人気の犬猫。動画広告でも安定した効果が期待できます。
ブランドやメッセージと全く関連性が無いと起用は難しいですが、比較的コストを抑えながら、「はじめの10秒」のインパクトも高く効果が期待できます。
予算を抑えるために「タレント起用」はなかなか難しいWEBオリジナル動画でも、初動のインパクトを意識して制作することで、ある程度の効果は期待できます。

※イメージ

まとめ

本コラムでは、YouTube TrueView広告サーベイから効果のでるクリエイティブの要素分析についてまとめました。ブランドの状況等により上記の分析が当てはまらない場合もあ るかとは思いますが、動画制作時の仮説立ての一つの引き出しとして活用頂けますと幸いです。今後さらに実績を重ねることで新しい発見があると思いますの で、定期的に皆様にご報告させて頂きます。


▼本コラムの前編記事はこちら
『YouTube「ブランド効果測定」を活用した、動画広告の要素分析(前編)』



イラスト作成
サイバーエージェント インターネット広告事業本部 
オンラインビデオ・ソリューション局 ディレクター
原田美郷
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