2020/11/4 Wed
出光興産、CGをフル活用したSDGs認知促進を目的としたWeb動画で、”事業理解”の向上を実現!
~6秒の短尺動画で、若年層をターゲットとしたブランドリフトに成功~
今回のキーワードである、"再生可能エネルギー開発" や "SDGs" に取り組む企業姿勢を若年層に伝え、理解・認知向上を図ることを目的とし、CGを活用したクリエイティブのWebプロモーションを行いました。
本取り組みについて、出光興産株式会社より、飯沼氏と久保田氏を迎え、当社担当者と共にインタビュー取材を行っております。
撮影場所は、当社のクリエイティブスタジオ(※)にて行い、今回のCGプロモーションで使用したクリエイティブでCG画像を作成しております。
※クリエイティブコンテンツ制作に最適化した撮影・編集スタジオ「カムロ坂スタジオ」を保有。
白ホリスタジオ・ハウススタジオ・リアルタイムバーチャル撮影も可能なグリーンバックスタジオ・3Dスキャンスタジオなど、4つの撮影スタジオと編集・録音ルームを併設し、さまざまな用途に対応可能な複合型のスタジオです。
撮影・音声収録・編集・3Dスキャンを一つのスタジオで完結させることで、スピーディーなクリエイティブ制作が可能です。
飯沼 牧子
出光興産株式会社
広報部
ブランド・コミュニケーション課長
久保田 裕詠
出光興産株式会社
広報部
ブランド・コミュニケーション課
中橋 敦
株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 ブランドクリエイティブ部門
局長/クリエイティブディレクター
ミショー 樹梨亜
株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 ブランドクリエイティブ部門
クリエイティブプランナー
阪本 陽太
株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 営業局
チーフアカウントプランナー
アミール 安田
株式会社CyberHumanProducts
CGプロデューサー
今回プロモーションに至った背景と、当時抱えていた課題感とは?
久保田氏:当社はこれまでマス広告を中心に展開しており、Web広告の経験はほぼない状態でしたが、世の中どんどんWebの活用が中心になってきている中で、やっぱり何かやらなくては、というところがまず一つのきっかけです。当社のWeb広告の事例をきちんと蓄積していきたい、というところが発端でした。
一つ目の課題は、当社の認知度です。全年齢層での認知度は一定の値をキープしていますが、年々、若年層の認知度は減少傾向にあることを課題として感じており、その層に向けて認知度向上を図っていきたいと思っていました。
さらに二つ目の課題は、当社がサービスステーション(ガソリンスタンド)を全国に展開していることから、「石油企業」というイメージが非常に強いことです。そのイメージを変えていきたい、というのが大きな目的でした。
もちろん基盤事業として石油事業は取り組んでいますが、そのほかに高機能材事業や、次世代の技術開発なども行っていますので、そうした取り組みを知っていただき、新しい「出光興産」のイメージを持っていただきたい、という思いから、今回Web広告に取り組むことにしました。
ーこのような課題を受けて、サイバーエージェントとしてどのような提案を?
CAミショー:私は今回のコンセプト作りから、動画の構成、コピーライティング、アートディレクションまで携わらせていただきました。
まず若年層に向けて、というお話をいただいたときに、今の若者たちが
“広告、広告”しているものを受け付けない傾向にあるので、「キャッチーさ」「分かりやすさ」は必要だと感じていた反面、その方向に振り切ってしまうと、出光興産さんがこれまで培ってこられた誠実なイメージが失われてしまう懸念もありました。
出光興産さんが真摯に取り組まれているさまざまな事業や、今回のテーマである再生可能エネルギー開発、そして「SDGs」に対しての企業姿勢への誠実さを伝えながら、若者の理解・認知を促せるようなクリエイティブを作れないか?といろんな表現方法を考えました。そのバランスを意識して提案させていただいたのが、今回のCG編とアニメ編です。
CA中橋:今回、SDGsをキーワードにプロジェクトに携わらせて頂きましたが、2016年に、
『出光興産120年の歴史を描く』という出光興産さんの別のプロモーションに携わらせて頂きました。そのときは、『120年の歴史をペーパークラフトで表現する』という“今までの歴史”、そして今回は、SDGsをキーワードに、“これからの未来を描く”というもの。文脈が続いた中でお仕事をさせていただき、非常に嬉しく思っています。
僕個人が感じている出光興産さんの好きなところが、
“事業の裏の意思”の強さ。出光興産さんが誕生した当時は、「戦後日本の復興」を掲げ、なにか特別な責任感や意志の強さが伴わないと成し遂げられないようなすごいことをされていました。だけどそんなすごい事を声高に言わないですし、知っている人も限られている。
そんな
出光興産さんが、一体どんな意思を持ってSDGsに取り組んでいるのか?未来に向けてどのような活動をしているのか?」。ここはしっかりと伝えなくてはいけないですし、また伝えたら響いてくれる人がいるだろう、と思っていました。
今回のプロジェクトだけで、伝えきれたとは全く思ってはいないのですが、若年層に向けた「SDGs」に対する気付きや、出光興産さんに対するイメージの変化に関しては、手応えがあったのかなと思っています。
プロモーション概要
CAミショー: 1つ目はフルCGで、自然の中から生まれたエネルギーが電気になる様子をクレイアニメーションで簡潔に表現しました。CG編の狙いとしては、「出光興産はこういうことをやっていますよ」というメッセージが、視覚的に伝わるようなものにしたいと考えていました。
また、今回視聴されるのは日本の方ですけれど、今後動画がグローバルに発信されたときに、言葉による説明がなくても、海外の方に出光興産さんの取り組みを理解していただけるようなものを作れたらいいなと思っていました。
2つ目は、ニワトリのキャラクターが出てくるアニメーションです。CG編に対してアニメーション編は、ローカライズすることを念頭に置きました。日本はキャラクターによるプロモーションが好まれやすい傾向にあるので、動画を観た方に愛されるようなキャラクターデザインにこだわりました。
ゆるい歌詞の中に、「普段自然の中で何気なくふれている風や太陽の光を、出光興産は電気に変えて届けています」というメッセージをきちんと含めながら、皆さんに覚えていただけるような声とメロディラインで仕上げました。
▼YouTube動画
CHPアミール:クレイアニメーションのCG部分はきちんと面白く、分かりやすく、そして一番大事なのは「メッセージがきちんと伝わっているか?」ということを意識し制作しています。
▼YouTube動画
CA中橋:今回の課題の一つに「出光興産といえばガソリンスタンドの会社」という固定概念がある事があげられました。
そのイメージから脱却し、「未来のエネルギー事業を行う会社」だという認知・理解を得るためにどうすればよいか。まずはわかりやすい情報量に削ぎ落とすところが試行錯誤した点の一つです。
CA阪本:KPIにおいていたのは、WEB動画で事業理解のリフトアップ、という指標でした。
一事業ごとに、事業理解を促す6秒動画をまず作り、さらにそれらをくっ付けた30秒の尺の動画を作っています。
「6秒で事業理解が本当にできるものなのか?」という疑問があったかと思うのですが、結果として、6秒のバンパー広告などで事業理解のリフトアップが見られました。
このような短尺でもきちんとクリエイティブによるメッセージ性があれば、届けたい情報をきちんと届けることができる、ということがしっかりと分かりました。
―提案を受けた印象はいかがでしたか?
久保田氏:当社としては、まず「再生可能エネルギーをテーマとしてやっていきたい」というところから、「では再生可能エネルギーで何を扱いますか?」というところで当社の再生可能エネルギーについて説明し、様々なディスカッションをさせていただきました。
ディスカッションの中で、当社が取り組む、『太陽光』『地熱』『風力』『バイオマス発電』『エネルギーの地産地消』『グローバル展開』この6本の軸でいくことにしました。。
訴求軸は決まったけれど、6秒の動画で本当に訴求できるものなのか?と。
商品の広告であれば、商品認知は図れるだろう、でも、事業理解を6秒で本当に分かるの?と思っていました。実際に動画を見てみると、非常にこだわりがあって、「ああ、すごくいいものができそうだな」という印象を持ちました。
今回のチャレンジポイント・新しい取り組みとは?
CAミショー:自然の中で生まれたエネルギーが電気になるまで…例えば『風力』であれば、風が吹いて風車の羽がまわり、中のタービンが回転して、そこから電気が生まれて…という過程があります。それを6秒という短尺の動画で表現するとき、風力発電だから風車が出てくれば分かりやすいのか、伝わるのかと言うと、そうではないなと思いました。そこに何かひねりを加え、若者に興味を持ってもらうフックにしたいと考えました。
そこでアウトプットとして描いたのが、シャボン玉です。唇がフーッと吹きかけた風の力で、シャボン玉が電球になっていく、というような表現に。そのちょっとしたひねりを加えて、置き換える、という描き方を“発想”するところが大変でした。
どうやったら分かりやすく、かつ、ユーモアを交えながら表現することができるのか?と。
CA中橋:まさに構造としては、「このエネルギーがこうなるのです」というビフォーアフターのような。その表現に適したものを、例えば『風力』軸であれば、風力から、最終的には唇が出てくるアウトプットになりましたが、かなり試行錯誤しながらそこに至っています。
一方、その表現がCGとしてきちんと表現できるか?という点も合わせながら調整を行っていったのはチャレンジングでした。
CAミショー:たとえば、『地産地消』。『太陽光』であれば、「太陽」という分かりやすいモチーフがあるのですが、「エネルギーを地産地消する』という表現はすごく悩みました。
最終的には、畑に電球が育っていて、その畑がある街の暮らし(家)を照らす、というアウトプットになりました。
もう一つのポイントは、すべての動画に、4秒目でフックを入れています。4秒のところで、電気がついたり、電球の姿に変わったり。
これは動画が実際に配信され、6本バラバラに観たとしても、「あ、出光興産だ」と気づいてもらう狙いがあります。フックのタイミングや絵作りは何回も何回も検証を重ねて、今に至ります。
CA中橋:今回、短尺6秒版を6本と、その後にそれららまとめた30秒版の長尺、合わせて7本を2セット(CG版・アニメ版)作っています。
コーポレートブランディングを目的とした動画は、まず長尺から作るというパターンが多いと思いますが、6秒という短尺から企画し、表現するアプローチはチャレンジングな取り組みでした。
言いたい事がこんなにたくさんあるのに、いったい6秒で何を伝えられるのか?
当然そのような不安がある中でしたが、しっかりとたくさんの情報を説明するというやり方から離れ、「気付き」を促すやり方に切り替えました。
受け手側がどう感じるか?何を思うか?その刺激になるような機会を増やし、ヒントとなる視点を与えていく。正解を広告にのせて届けるというよりは、見た人の感じ方の集合体でコーポレートブランディングをしていくというやりかたです。
予測不能な未来に立ち向かっている出光興産さんらしいブランディングのあり方かなと考えています。
▼YouTube動画
―どのような効果が?
久保田氏:動画をしっかり見ていただきたいというコンセプトのもと、動画の最後まで視聴してもらえる媒体に出稿し、その効果について、きちんと理解と認知に繋がったか?という効果検証もさせていただきました。
CA阪本:出稿媒体ごとに効果を検証し、なかでも、YouTubeのバンパー広告による「事業理解」のブランドリフトの効果が最も伸びました。
効果の良い要因として、視聴態度がいいということが大前提にありますが、当てたいターゲット層とのマッチが良かったことと、そのターゲット層におけるクリエイティブのマッチ性などが良かったのではと思います。
久保田氏:今回Web広告自体が初めてだったので、得られた結果全てが新しい発見ではありました。短尺であるYouTubeのバンパー広告でも、高い認知を獲得することができる、ということが大きな発見でした。
6秒という動画でも、非常にこだわっていただいたクリエイティブの結果だと思いますが、きちんと理解につながっているということは、今後、特にコーポレートブランディングを行っていく上では、非常にいい結果が得られたと思っています。
また、社内で協力いただいた、今回のターゲット層でもある若手の他事業部の社員からは「風力ってこういうふうに表現するんだ」「このように表現をしてくれるのは面白いし、皆見てくれるのではないでしょうか」などというコメントも受けました。
今後チャレンジしたいこと
久保田氏:今回一番検証したかった、Web広告って有効な手段なのか?ということを検証できたので、引き続き今後も取り組んでいきたいと思います。
一方、マスメディアにもそれぞれの良さがあるので、メディアをミックスしながら適切なタイミングに、当てたいターゲットに対して、適切な方法で、当社の経営姿勢や経営ビジョンを届けていきたいと思っています。それが、認知や理解につながり、企業イメージを変えていければと思います。
飯沼氏:ちょうどこの7月からコーポレートロゴを刷新しました。もとのアポロマークを少しリニューアルしたかたちです。今回リニューアルにあたって、我々も意思を持って変えている部分があるので、今後何かの表現ができればいいな、とは思っています。
「どれだけ人の心に残るか」ということは尺の長さに全く比例しないな、ということを今回6秒動画を見て感じました。
最初は、「6秒で何が伝えられるの?」と思ったのですが、長ければ伝わる、ということでもなく、6秒でも伝えられることもある、というのは、Web広告の良さかなと思いました。
CA阪本:以前にもお話させていただいておりましたが、限られたご予算の中で、事業理解を向上するための、テレビ広告とWeb広告の最適なアロケーションを見つけに行くことをテーマに今後は進めていきたいと思っています。また今回、初めてのWeb広告によって、得られた結果がありますので、これを元に、さらなる横の広がりもご提案させて頂きたいです。
CHPアミール:CGは何でも作ることが可能で、とても自由な表現方法です。だからこそ、どのようにしてメッセージを伝え、どのような表現で伝えるか?ということがすごく重要です。
そこをみんなと一緒に話しながら、CGの力を使ってどういう表現で作るか?を突き詰めていくことができたので、今後もこのようなチャレンジをしていきたいです。
CA中橋:とても歴史のある大きな出光興産さんですが、新しい手法で一緒にチャレンジさせて頂きました。エネルギー問題や再生可能エネルギー、SDGsなどは、今後間違いなくど真ん中にくるテーマ。出光興産さんの次のチャレンジは、世の中に対してのインパクトが大きいだろうし、影響度も高いと思います。
そういった社会的に本当に必要なチャレンジを、次の世代に伝えていけるようご一緒できたらとても嬉しいです。
飯沼氏:はい、若い方たちに考えていただきたいですね。私たちの世代になると、伝えるって、「こういうことを皆に知ってもらわなきゃいけない」と型にはまってしまっているのです。きちんとストーリーを持って知ってほしい、ということを思ってしまうのですが。
多分、今の若い方々って、認知の仕方とかが全然違っていて、どこがフックになって、どう心に響くかということは世代で全然違ってきているんですね。
若い方々にどうすればエネルギー問題や、先ほどのSDGsということを認識し、考えてもらえるのか、というところについては、是非ご協力いただきたいです。皆さんの柔らかい頭でどのように言い換えることができるのか、そんなところを、是非お力を貸していただきたいと思います。
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取材・執筆 : 加藤 貴子 (株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 広報)
撮影 : 杉 麻子 (株式会社サイバーエージェント Design Factory)
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