2019/3/14 Thu

想定流入数425%、オーガニックPV数 約1500万PV増加!料理人の顔が見えるグルメメディア「ヒトサラ」の成長を実現したSEO施策

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SEOの取り組みにおける理想的な広告主とエージェンシーの関係とは

料理人の顔が見えるグルメメディア「ヒトサラ」のSEOマーケティングの効果事例について、株式会社 USEN Mediaより、長﨑氏、藤原氏を迎え、当社のSEO担当者および営業担当者と共に、対談を行いました。

長﨑 卓史

株式会社 USEN Media(USEN-NEXT GROUP)
プロダクト・マーケティング課
課長

藤原 祐司

株式会社 USEN Media(USEN-NEXT GROUP)
プロダクト・マーケティング課

山本 純

株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 第1営業本部
マネージャー

坂本 惇

株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 WEBコンサルティング局
シニアマネージャー

長﨑氏:運営する「ヒトサラ」は、前身の「グルメGyaO」から、2012年にサービス名称を変更、料理人をはじめとするお店の「ヒト」と「サラ」をプロカメラマンとプロライターによる取材で、お店の魅力を最大限に引き出し質の高い情報を伝える新しいコンセプトのグルメメディアです。
サイトの特徴は、料理人の方をクローズアップして掲載しているという点で、料理人の掲載数は1万2千人を超えており、国内最大級の料理人を掲載するメディア(※)となっています。
※2018年9月 東京商工リサーチ調べ
「ヒトサラ」の当時の課題感と、SEOの取組に至った経緯
 
藤原氏:当時の課題は、そもそもですが、SEOという分野が社内であまり重要視されていなかったというのがあり、また担当者もいませんでした。
 
CA坂本:当時はSEOの施策面も過渡期で、施策の方向性にも迷われていましたよね。2015年秋ごろにヒアリングに伺い、そしてご提案をさせていただきました。
 
CA山本:現在ではSEO対策から、SEM・ディスプレイ広告といったダイレクトレスポンス広告、ブランディング施策まで全領域でお手伝いさせていただいておりますが、課題の大きかったSEO対策については、半年ほど先んじてお取り組みが始まりました。

CA坂本:最初はDB系のサイトにもかかわらず、モニタリングしているキーワードが限定的だったりしていました。要は「どこに肝があるのか」ということが明確にされておらず、ぼんやりしていた印象でした。提案させていただいた内容は、SEOに関わるほぼ全領域です。
キーワードマッチという、検索されたワードに応じて自動でページを生成する施策も始めるなど、本当に全てを信じて任せていただいた、ということがまず出だしとしてはかなり大きかったです。
 

なぜ全部任せていただけたのですか?手探りの中で全てを任せることはなかなか難しいご判断かなと思うのですが。
 
藤原氏:数ある提案の中でも提案内容自体が明確で、なおかつヒトサラの質を落とさない施策展開が想定できたので、これはいけるだろうという感覚がありお任せすることに至りました。
 
CA坂本:やはりメディアを運営している以上、「オーガニックを疎かにするということは半端でない機会損失である」ということは営業とも話していて。
ただ、当時、グルメサイト業界のトレンドとして、「記事のおもしろさ」よりも「SEOをメインに置いた」記事の量産という風潮が有り、ヒトサラとしてはどこまでその流れに追随するかの判断が非常に難しいところでした。そのような難しさがある中であっても「広告をどのように回していくか?」という問題の前に、最も優先度が高いのがSEOである、とお伝えさせて頂きました。メディアの品質を落とさない施策を展開する用意はあったので。 現社長の成内さんに当時その点をご理解いただき、「一気に踏んでやっていこう」と加速して進めていくことができました。
 
長﨑氏:やはりメディアなので、SEOでオーガニックでの地力を上げていかないと、広告で補おうとすると継続的に費用が必要になってしまいます。そこの地力を上げていったことで、有料集客も含めたいろいろなレバーがワークするようになっていきましたね。
SEOの効果は、やり始めてどのぐらいから感じられましたか?
 
CA坂本:やはり半年後ぐらいですよね。
 
藤原氏:3か月ぐらいで、「あ、効いてるかな」という感じにはなってきましたね。
 
CA坂本:SEOが6か月契約なのは、まさにそこで、3か月目から効果が出る施策はコンテンツ施策ぐらいしかないので、DB系のサイトだと地力を上げるしかないんです。
 
CA山本:ただ、SEO の取り組みが始まって半年ほど経った頃、競合グルメサイトのSEO評価がすごく高まったタイミングがあり、どんどん競合に流入を取られてしまい、だいぶ苦しかったですね。
 
CA坂本:そのころに、「店舗のまとめ記事を作りましょう」とご提案し、思いっきり踏み込んでいただいたのが、今の成果に繋がる大きなきっかけでした。
 
CA山本:まずは記事の量産で流入を大きく伸ばしていたキュレーション系の競合グルメサイトに、まとめ記事の量における同質化を目指しました。
また、ただ量を増やすのではなく、オリジナリティのあるヒトサラのコンテンツを活かして、質を担保することも意識しました。
 
最初のフェーズとして、地ならしと言うかベースの底上げを行い、そこでじわじわと目に見える効果が出てきて、次の第2フェーズとしてまとめ記事の施策を行っていたという流れでしょうか。
 
CA坂本:まさにそのような流れです。
 

- まとめ記事作成時にこだわったポイントとは?
 
CA坂本:当時はまず、量が必要とされる中で質の担保が課題でした。
まず「量」においては、インプレッションの多いエリアを優先的に並べて、そのエリアのランチの記事をひと月に約80本、USEN Media様40本、弊社40本と分担して作成していました。
「リンク施策などよりも、コンテンツ施策のほうが絶対に効果が出るのが早いはずだから、コンテンツ施策を優先的にやってください。」とお伝えしていました。USEN Media様としては、当時、まとめ記事に抵抗があったと思いますが。
 
長﨑氏:はい、うちには編集部があり、記事の1つ1つの質にはとてもこだわっていたので、このように流入を目的とするページを作っていくことに対しては抵抗がありましたね。
 
CA坂本:そうですね。「質」に関しては、当時の多くの関係者の方から、記事の質を落とさないためにはどうすればいいかというご質問も多くいただき、かなり頭を悩ませました。機械的にライティングを起こすのではなく、ヒトサラユーザーが持つニーズをメッセージとして伝えられるコンテンツを意識しました。

CA山本:あと驚いたのは「スピード」ですね。提案を決定頂いてからのスピードはものすごく早かったです。月80本の記事を作成し入稿するってかなり早いスピード感です。12月80本、1月60本、2月60本、と続けていきましたね。
当時の取り組みは現在も継続しており、記事数も数百以上の規模になっていて、それがヒトサラの大きな流入源となり、ドメインを強くしてきています。
今後においても重要な施策であり、当時のそのタイミングに大きく舵を切り動いて頂けたことが、とても効いていますね。


第3のフェーズとして、次はどんな施策を行っているのですか?
 
長﨑氏:「流入の努力」のところは一通り出来てきたかなと感じているので、第3のフェーズにちょうど入るところです。
 
CA坂本:まとめ記事を始めたのが2年前くらいで、これからは「まとめ記事プラスアルファをやりましょう」と話を進めています。高品質なオリジナル記事です。まとめ記事って結局まとめなので、例えばヒトサラのアンケートをとって、そのアンケートの内容を分析する記事など、様々な切り口やアイデアを元に、記事内容を考えているところです。
そのあたりの要素に加えて、内的修正や構造化マークアップ、またグーグルのアルゴリズムはどんどん新しいものが出てくるので、その変化にも随時対応して頂いている状況です。
 
藤原氏:“今後グーグルのアルゴリズムがどのように評価していくか?” ということと、“今のまとめ記事をどのように変えていくか?” ということが課題かなと思っています。
 
CA坂本:ずっとまとめ記事が上位表示されるわけではないですよね。
 
藤原氏:やはり変動に弱いのです。
 
長﨑氏:加えて、ヒトサラは加盟店様から店舗掲載料金を頂きそれでコンテンツが増えるという仕組みなので、加盟店様にしっかりと送客できるように、いかにコンバージョンに繋がるか?という施策も今後しっかりやっていきたいですね。

SEOの効果

CA坂本:2016年から始めて、当時比でいうとオーガニックの全体的な想定流入で425.5%伸びています。通常この規模感のメディアだったら110~120%伸びたらすごいな、という世界観です。それが、425.5%伸長ということはちょっと見たことがないですね。
 
想定流入は、「imp×獲得順位」の一般的なCTRで、大体これくらい流入しているはずだという値が出るので、それをモニタリングしているキーワードが6万ぐらいありますがその想定流入を全部足しあげるのです。そうするとグラフができるので、順位がどれくらい上がっているか?ということが可視化できます。これはSEOでよくやるやり方です。メディアで1年間SEO対策をやって120%伸長したら、結構効果が出ましたね、という感じです。
 
CA山本:この120%の上積み20%分でも広告費に換算すると、とてもSEOの月額料金では収まらない金額になるので、自然流入の地力上げにより、広告費を適切なところにアロケーションする選択肢が生まれます。2年半ほどで425.5%伸長している事例はなかなかないです。
藤原氏:SEOにおいては私がいま他業務と兼任でやっていますが、専任でSEOの担当を置ければ、サイバーエージェントさんには俯瞰的に全体を見ていただいて、うちは基礎的なところを見て、という形で施策を組んでいくということもできると思っています。
 
CA坂本:インハウスである程度できるということが、最終的な理想だと僕たちも思っています。ただ、情報収集力やモニタリング、レポーティングにおいても自社で全てやるというのはあまりにも大変なので、そのあたりの業務を我々でアシストをして、議論する、という形態になるといいのかなと思います。
SEO専任の方が入って、藤原さんにもサポートいただければ、1年後くらいにはそのような理想的な体制ができるのではと。

要は、実装指示書を出すのではなく、思想をお伝えし、お客様のビジネスの拡大につなげる戦略に落としていくということ。上流からお話ができるので、そのような体制が組めるのであれば、ぜひやっていきたいところですね。
 
長﨑氏:そうですね。藤原もできるからやってもらっている状態で、SEO専任というわけではないので、そういう体制が組めたらと思います。でも兼任でこのスピード感で進めていけているのはすごいのですが。
 
CA坂本:本当にすごいと思います。スピード感的に専任かとずっと思っていました。
ここまでのヒトサラの成果においても、もともとあったヒトサラのオリジナルなコンテンツにSEOのエッセンスを加えるための藤原様の細かな対応があってこそ、それぞれが噛み合ったのだと思います。
 
藤原氏:最新のSEO情報を提供してくださるのは有難いですね。アメリカまで行って情報収集もされていますもんね。
 
長﨑氏:そういった情報をかみ砕いて伝えてくれるので、そのあたりもパートナーさんに頼る部分かなと思っています。
 
CA坂本:はい、是非そういった点も活用いただければと思います。施策においては、そのうちに「それはもう分かっている。」となってくると思いますので。
チャレンジポイント

- SEOの施策を始めて3年くらい経ちますが、どのような工夫が成果に繋がっていると感じますか?
 
CA坂本: 通常、SEOの定例会というのは週次で行うパータンはなく、多くても隔週です。それは、実装にも分析にも時間を要するからです。
ですが、当時は競合グルメサイトに勝つためにチューニングを細かくやりたかったので、SEOの定例を週次で行っていました。とにかく藤原さんの動きが大変はやいので、こちらから藤原さんにどんどん課題を出していけば実装していただける、という状態にして頂けていました。基本的には週次で、たまにものすごく嫌そうな顔をする瞬間もありますけど(笑)。
 
その“チューニングを週次でやり続けている” ということが今の成果に繋がっているのですね。
 
CA坂本:間違いなくそうですね。
 
CA山本:はい、これは本当に重要なことだと思っています。いろいろなお客様を担当させてもらっていますが、SEOを導入した瞬間に、魔法の杖のように検索順位が上がるということはまずありません。弊社のコンサルティングと、お客様側での導入・実装が両輪でまわって初めて効果が出てきます。ご提案したことを信じて頂き、スピード感をもって実装を続けて下さり、このような結果が出ていることは、我々としても自信になっています。
 
CA坂本:投資して頂いているので、効果を出さなくてはという思いで、モニタリングの体制も充実させていますし、項目においてもここまで洗い出しているところはない、というくらいやりきっています。効果を出すための体制と座組の整備は自信をもっていますし、また安定的に回っていると思います。
 
分かりやすい例をあげると、こういうことがありました。
タイトルを修正しましょう、ということがSEOの施策でよくあります。例えば「銀座ランチ」というキーワードの場合、タイトルにそのキーワードを入れてください、という施策なのですが、その提案って、まったく面白くないじゃないですか。誰でも思いつくし、そのようなことにコンサルティング料をお支払い頂いているわけではないので。
1位が「銀座のランチ一覧」というタイトル、でも3位に「迷ったらここに行け銀座のランチ20選」があった場合、どちらのサイトが面白そうかと思うと、3位のほうをクリックするユーザーも当然いるわけです。
 
これはSEOというよりもクリエイティブの話です。
CTRのモニタリングを見てみると、明らかにタイトル修正後のほうがクリック率が上がっている。また面白いことに、クリック率が上がって直帰率が低くなると、順位も上がります。
 
”キラーワードを1つ入れる”
それはSEOの今までの概念ではなかった話なので、この走りを一緒に作れて、しっかりハマった施策だと思います。
 
CA山本:SEO領域のみを得意とするベンダーさんと、我々で最も異なるところの1つは、総合領域で考えて実施することができるというところだと考えています。SEOの視点からちょっと外れたところもやってみた結果、SEOにも効果が戻ってきているという。
- 提案内容や施策についてはいかがでしたか?
 
長﨑氏:単純に、”代理店さん”というお付き合いというよりも、“ビジネスパートナー”としてお付き合いさせていただいています。1つ1つの細かいチューニングや施策についてはもちろんですが、“一緒に同じ方向を見て進んでいる”ということをとても思います。互いの思いをしっかりと汲み合っていて、とくに最近は上手く回ってきているなと感じています。
 
CA坂本:ありがとうございます。施策の内容1つ1つにおいて、「なぜ、今これをやるのか?」というところまで理解いただけています。
SEOは専門的なので、1つの施策に対しても実装側からするとさまざまな方法があるのですが、藤原さんは、「でもこれが最適解ですよね。」「そのように実装しておきました。」と対応して下さっているので、僕たちもすごく有難いです。
 
どのようなところに信頼をおけると感じて頂けているのでしょうか。
 
藤原氏:基本、全般的に御社を信頼しています。不足部分や、最近気づいたところはこちらで実装していたりするので、相乗効果で良くなっているのかな、という気がします。
SEOの提案内容は、大体同じようなメニューが出てくるケースが多いのですが、サイバーエージェントさんの場合、いい意味で毛色の違う提案をしてくれるのです。しっかりと腹落ちする提案内容で、とてもやりやすいですね。
 
今後の展望

藤原氏:今まで通りまとめ記事も進めていくべきだと思っていますが、ただあまりにも偏ってしまうと、本来のメディアとして在り方が崩れていってしまうので、そこはしっかりと担保しつつ進めていきたいですね。
あとは、「グーグルがこう言っているから」という情報にすぐに飛びつくのではなく、よく考えた上でやっていかなくてはなりませんね。グーグルも、「やっていません」と言いながら数か月後に「実はやっています」と言ったりするので、見極めはこちら側でしっかりとしていけるようにして、今後とも一緒にやっていければと思っています。普段からなんでも言い合える関係だからこそうまく回っているので、今後も一緒にやっていきたいと思います。
 
長﨑氏:定量的なメディアのスペックに跳ね返ってくるようなところはもちろんなのですが、やはりもっと上流でお互いビジネスパートナーとして先を見据え、きちんと計画を立ててやっていきたいですね。まだまだもっとできるな、と思っているので、SEOも含めて全体としてもしっかりやっていきたいと思っています。これまでも堅実な成長を目指してメディアのKPIとブランディングの両立を目指した判断をしてきましたが、今後もその部分にはこだわってやっていきたいと思います。
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取材・執筆: 加藤 貴子  (株式会社サイバーエージェント 全社広報室 インターネット広告事業本部  広報)

撮影: 杉 麻子   (株式会社サイバーエージェント Design Factory)

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