2017/11/16 Thu

「じゃらん」のWebプロモーションにおける、世界初の取り組み事例から禁じ手への挑戦と成功

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~リクルートライフスタイル社とのWebプロモーションにおける数々の取り組みと考え方~

石井 智之氏

株式会社リクルートホールディングス
ネットマーケティング推進室 ネットマーケティング部
シニアマネージャー

山口 大輔

株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 営業局
局長

取引開始の背景

石井氏:私はいま、リクルートホールディングスのグループ横断組織であるネットマーケティング推進室にて、ライフスタイル事業部の責任者を担当しています。ライフスタイル領域では、「じゃらん」「ホットペッパービューティー」「ホットペッパーグルメ」などのサービスを提供しています。
サイバーエージェントさんとのお取引自体は、10年以上くらいですが、私自身は5,6年ほどのお付き合いになるかと思います。
CA山口:その頃ちょうど、「じゃらん」のWebプロモーションをお手伝いする機会があり、そこから石井さんとお話させて頂く機会が増えていきましたね。
 
石井氏:当時は、アプリインストールを目的とした広告やディスプレイ広告を主に行っていましたが、我々にはある課題感があったんです。その時のサイバーエージェントさんからのご提案内容が、弊社の課題感にフィットしていると感じ、そこから山口さんとのお取引がスタートしたと思います。

リクルートが広告プロモーションで重要視しているポイント

石井氏:『チャレンジ』と『知見蓄積のスピード』をとにかく重視しています。我々の業界って環境変化が目まぐるしいので、正解は常に変わっていくものだと思っています。環境変化に起きている正解をいち早く解いて、正解の近くに常に居続ける、ということは、大前提としてまず大事なことだと思っています。そして、みんなが解いている問題の正解の先にいかに着手するか、ということが最も大事なことだと思います。
自分たちしか持っていない課題や自分たちだけのチャンスをいかに創り出すか、チャレンジするか、ということがとても大事です。
 
CA山口:御社とお取引していると新しいナレッジがどんどん生まれてきますが、まさにそういうところが起源になっていますね。効果を出す上で必要な汎用的な施策って同質化されやすくて、競争優位を失いがちですが、御社は、その先を見据えた『打ち手』というものを常に思考され続けて、チャレンジし続けています。だから僕らも「一歩先のマーケティングをどうしたら実現できるか」「どうしたら事業成果にお返しできる大きな打ち手をひねり出せるか」と、同じ目線で向き合い続けることができているんだと思います。

印象的なプロモーション事例

● その1: 世界初!宿の在庫連動配信

石井氏:大きく2つあります。
1つは、じゃらんのディスプレイ広告の施策で、Criteoを活用し、じゃらん独自の課題やサービス特性、状況に応じて最適化を図った事例です。

じゃらんの予約サービスの特性上、在庫という概念が必ず存在し、そして在庫各々によって予約率が違うという大前提の特性があります。例えば、ユーザーがある特定日を検索した時の在庫と、別の日の在庫は当然違います。
それを踏まえて、この特定日にユーザーが検索しているのであれば、そのユーザーには在庫がちゃんとある宿で、かつ予約確率が高い宿を出そう、という取り組みをしました。
 
これは、世界初(※)の取り組みでしたね。サービスの課題を解決するために、予約確率とそこから期待される収益率みたいなもののロジックやアルゴリズムを作っていて、それをうまく活用できないかなと考えていたときに、ちょうどサイバーエージェントさんからCriteoを活用した企画を提案いただきました。
 
ベースは我々で用意していて、企画自体を仕立てたのはサイバーエージェントさんです。ソフトウェア側はうちが用意し、ハードウェア側の調査や用意はサイバーエージェントさんがやる、というかたちで分担し、実行、そして見事に成功しましたね。
(※)Criteo社調べ
CA山口:結果としてCVRが130%ほどリフトアップしました。
リクルートライフスタイルさんは内部のアセットが豊富にあります。それを外にうまく活用できた画期的な取り組みでした。段階を踏みながら進めていきました。まず、在庫を連動するだけのファーストステップ、そしてセカンドステップとしてCRMで活用されている期待収益値を混ぜ込み、配信する在庫をよりユーザーにカスタマイズしていきました。そもそも、最初の在庫連動配信が成立しなかったらこのステップは成立しませんでした。工夫を重ねていったことによって、マーケティングがステップを踏みながら進化できた。

結果も満足いくものでしたが、個人的には媒体のフォーマットを通して次に繋がる先進的な一手を生み出せたのが大きかったです。
 
僕らは媒体が提供しているフォーマットの中で、一歩先のマーケティングを工夫する必要があります。これを上手くやれたのは、すごく大きな意義がありました。他の媒体でも既成概念を超えて様々な取り組みが図れるのではないかという思考のきっかけになった一件でした。
 
石井氏:「媒体フォーマットの中で上手くやった」と山口さんいまライトに言いましたが、これを実現するのってもの凄いことなんです。
実際に、媒体フォーマットの中でやりたいことをちゃんと実現するには、当然細部にわたる調査が必要ですし、言い方を変えると、媒体の仕組みをハックして考えないと実現し得えないことでもあります。そういった意味で、ハードウェアの側の部分はサイバーエージェントさんにすごくご協力頂いたと思っています。
 
CA山口:有難いお言葉をいただきました、ありがとうございます。
 
石井氏:本当に実現するかは、やってみないと分からなかったですね。
 
CA山口:「やってみないと分からない」というものはリスクが伴いますが、御社には「筋がいいものはリスクがあっても先を見越してチャレンジする」というスタンスが根底にあるので、憶することなくスピーディにチャレンジできました。代理店としてはとても有難く、広告主として尊敬するスタンスだと感じています。
● その2: 禁じ手への挑戦! 自動入札×自動入札

石井氏:もう1つ、印象深いプロモーションがあります。リスティング広告において、『自動入札×自動入札』ということにトライしたというプロモーションです。
 
ツールベンダーが提供している自動入札のためのツールがあります。もう一方で媒体社が提供している自動入札の機能というのがあります。どちらも同じ『自動入札』という言葉ですが、それぞれ長所と短所が全く異なり性質は真逆なんです。
一般的には、難易度が高く避けられがちという意味で、この2つを同時に使ってはいけないとタブー視されていました。理屈で考えるとそうなのですが、しかしこの2つを同時に使ったらそれぞれの長所が生かせるのではないか?ということを議論していたんです。
 
世間的にはタブー視されていて、うまく動くかどうか未知な状態のなか、リクルートで企画し、その時の事業パフォーマンスに影響を出さずにどう実験をするのか、設計および実際に運用していく中でどのようにして異常を検出するのか、といった運用精度を保つための準備をサイバーエージェントさんにやってもらい、実行に至りました。
結果、成功し、グーグルが発表しているブログ「Google AdWords 公式ブログ」にも、事例として取り上げられました。
 
CA山口:こちらも新しい施策に取り組んで、結果を残せたプロモーションでしたね。
 
 
そもそも業界でタブー視されていたものに、チャレンジしてみようと思ったのはなぜ?
 
石井氏:タブー視されていたものの、理屈上ではそんなにおかしなことは起きないのではないかなと思っていました。

CA山口:そうですね、そういう感覚はありました。一方でベンダーから規制がかけられていた事にも、それなりの理由があったわけです。頭ではどちらの考えも理解できる中で、「チャレンジしてみないと分からないじゃん」というところに辿り着かせてくれたのは、石井さんでした。
 
石井氏:ベンダー側の意見、確かに懸念があるのは分かります。ただ、その懸念が高確率で起こるということを、ベンダー側も僕らも証明できるわけではないですよね、やるまでは。だったら、「じゃあやってみればいいじゃん」って思うんです。
 
CA山口:設定自体はすごくシンプルでしたが、下準備は入念に行いました。なんせ成功事例がありませんからね。『事業成果の悪化につながらない範囲』という線引きが大事だったので、その明確なラインを石井さんに引いて頂き、僕らとしては結果を残すことに集中しました。

より付加価値のある提案をするために意識していること

CA山口:マーケティングの目標達成ができていればOKではなく、もっと大きい事業成果を跳ね返していくために、今チャレンジすべきことは何なのか?を考え続けることです。広告効果を上げる活動に終わりは無いので、付加価値の度合いを意識して、既成概念に囚われず、日々施策を考え続けることが、大切だと思っています。

幸いにも石井さんをはじめ、リクルートライフスタイルの皆さんがそういう意識でマーケティングに取り組まれていらっしゃるので、そこに我々も思いっきり打ち返せるように思考し続けています。とてもいい循環が生まれているのではないかと思います。

代理店に求めること

石井氏:一言で言うと、ライバル的存在を求めています。
いま挙げた印象的なプロモーションの2件って、共に全く違うパターンで施策が成り立っているんです。
課題を発見した人、機会を発見した人、企画を仕掛けた人、運用まで持っていった人など施策によって両社が入り乱れていて、企画を出すのは弊社、貴社どちらの場合もあります。これはどちらが、『より、本質的な課題を見つけるか』『より、いい企画を作るか』という競争をしていると僕は思っていて。これからも引き続きそういう存在を求めています。
 
そういった刺激を与えてもらうことによって僕らも成長できると思うので、単純にライバルとして競走した結果、より良い結果が出たら嬉しいな、という気持ちでやっています。
なので僕らは、誰が何をするかという役割を決めるつもりも全くないんです。最初から、分掌を決める理由が分からないので。
 
CA山口:そういうセクショナリズムは不毛ですよね。広告主と代理店という立場が違うだけで、お互い事業成果を最大化していくというゴールは一緒ですし。どんどんはみ出て合流地点で最後に一緒に勝っていたい、そんな意識はすごくありますね。
汎用的な施策は徹底的にルール化・仕組化しています。その先のインパクトが生める施策を考えていくことにもっともっと時間を投資していきたいと思っています。
やっぱり僕らも負けたくないんで。
 
石井氏:嫌な話、事業側なのに課題感をサイバーエージェントさんが先に見つけちゃったなんて、屈辱ですから。
 
CA山口:逆もしかりです。広告の新しい手法を御社が見つけるというのも、こちらとしては苦痛ですよ。お互い苦言し合っていますね(笑)。
 
石井氏:そんな間柄です(笑)。

サイバーエージェントの印象

石井氏:お取引前は、営業の勢いが強みの会社だな、というイメージが勝手にありました。今、お取引させてもらっていて、どんな会社かと問われると、ディテールの研ぎ澄ましスピードが半端なく速い会社だなと思います。当初抱いていたイメージと、真逆ですね。
サイバーエージェントさんは、運用はもちろんのこと、施策の1つ1つのディテールの理解度や設計度合いが非常に高く、かつ早期に仕上げてくる、今はそんな印象です。
そのスピードに僕らが負けられない、というのがライバル心につながるんですけどね。
 
僕の持論なのですが、やっぱりディテールを熟知していて、それを描ける人間って強いと思うんです。そこが強い御社は、それはそのまま強みかなと感じます。

今後のWebマーケティングの展望

石井氏:マーケティングにおけるユーザーとの接点は、昔と比べると遥かに増えてきていて、今後も増えていくだろう中で、全てを俯瞰して僕らが管理できているかというと、それはまだ足りないと感じています。抽象的な言い方になってしまうのですが、施策の性質上、どうしても、これとこれは分けて考えようと行っている部分もあるのですが、そもそもそいったことをなくしたいと思っています。全てを俯瞰して一本の軸で全体を描く、全体を管理する、ということをしていきたいです。
 
先ほどの印象的なプロモーション事例にもあったのですが、全体をちゃんと描いて、管理して、最後に動かす時に、自分たちの固有のアセットがその中でどのくらい変数として効いているのか、ということが大事だと思っています。かつ、それを自分たちがコントロールする。それが次に行きつくべきマーケティングのかたちかなと考えます。
 
CA山口:俯瞰しようとすればするほど、因子が複雑に混ざり合っていくので、影響度を正しく把握する新しい検証の在り方などを追求していかないといけなくなりそうですね。
 
石井氏:はい。そして、俯瞰しつつ、正しく影響を把握する、を実現するのをためには我々が変えられる部分は変えていかなければならないと思っています。技術レイヤーの観点もあれば、運用や組織レイヤーの観点でも変化のチャレンジがありそうなので、できることから早めに進めていこうと思います。
今後サイバーエージェントに期待すること、共に成し遂げたいこと

石井氏:サイバーエージェントさんに期待することは、やっぱり、今まで通りライバルでいてくださいということ。山口さんに期待することは、やっぱり、僕のライバルでい続けてください(笑)。
 
CA山口:光栄です、努力します(笑)。
 
石井氏:ライバルとして競争しながら、一緒に成し遂げていきたいことは、これまでやってきたことの延長だと思っているのですが。まだ誰もやっていないチャレンジを、たくさん一緒にやりたいと思っています。そのチャレンジの結果、成功した事例もたくさん残したいと思っています。もう、それに尽きますね。
 
CA山口:仰っていただいた通りですね。僕らとしてもそこに価値が見い出せると思っているので。ライバルでい続けられるように、努力し続けたいと思っています。

石井 智之氏

株式会社リクルートホールディングス
ネットマーケティング推進室 ネットマーケティング部
シニアマネージャー

 

山口 大輔

株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 営業局
局長

 


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取材・執筆: 加藤 貴子  (株式会社サイバーエージェント 全社広報室 インターネット広告事業本部  広報)

撮影: 杉 麻子   (株式会社サイバーエージェント Design Factory)

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