COLUMN

なぜ韓国人は日本を「何度も訪れる」のか
韓国人観光客に選ばれ続ける理由と消費トレンド
【インバウンド・アウトバウンドマーケティングトレンド連載 Vol.1】

~個人旅行化・コト消費・地方志向が進む韓国人観光客の最新動向~

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当社は、インバウンド・アウトバウンド領域におけるマーケティング支援に注力しており、調査・分析を担う「インバウンド消費行動研究室」と、広告主企業のマーケティング支援を担う「インバウンド事業本部」の2つの専門組織を有しています。

本連載では、両組織が蓄積してきた調査研究・マーケティングの知見をもとに、各国の旅行者の行動や価値観、最新のマーケティングトレンドを読み解きます。

第1回は韓国市場を取り上げます。訪日客数・消費額ともに高い存在感を示す韓国は、日本にとって非常に重要な国の一つです。一方で、旅行スタイルや消費行動は大きく変化しています。本記事では、韓国人観光客の最新トレンドをもとに、2026年に向けたインバウンド戦略のヒントを解説します。

■話者

三木 ひなた

株式会社サイバーエージェント インバウンド消費行動研究室

三木 ひなた

2024年、株式会社サイバーエージェントに新卒入社。2025年よりインバウンド消費行動研究室に所属。インバウンドの消費行動を起点に、訪日市場の嗜好および情報接触行動を分析し、訪日旅行者向けプロモーションの戦略立案を推進。

韓国市場がインバウンド戦略の鍵となる理由

ー2026年のインバウンド戦略を考えるうえで、「韓国人観光客へのマーケティングが鍵になる」という声をよく聞きます。改めて、なぜ今ここまで注目されているのでしょうか?

三木:2025年の訪日韓国人観光客数は約946万人で、国別では第1位でした。消費額も約9,864億円と過去最高を更新しています。(※1)日本のインバウンド市場において非常に大きな存在感を持っています。

韓国人にとって、日本は「誰もが一度は訪れたことがある」というイメージがつくほど身近な旅行先となっています。距離的なハードルが低いことが大きく、飛行機で2時間前後なので、週末プラス1日でも旅行ができます。
そのため、一度行って終わりではなく、何度も訪れる国となっています。

ー日本人が韓国に行く感覚に近いですね。

三木:まさにその通りです。さらに韓国は国土が日本の約4分の1とコンパクトで、日本のように地域ごとの自然や気候の違いがあまりありません。そのため、日本の四季や地方によって景色が変わる点も魅力に映っています。

ーそれがリピートにつながっているということでしょうか?

三木:はい。実際に初めての訪日では東京・大阪・福岡などの都市に行き、2回目以降は地方へ行くという流れが定着しつつあります。

ー2026年の訪日韓国人観光客の動きとしてはどうなりそうでしょうか?

三木:2026年は韓国の連休が多く、旅行がしやすい年です。特に9月の秋夕(チュソク)と10月の大型連休は大きな山場になります。
秋夕は日本のお正月やお盆にあたる祝日で、家族で過ごすことが基本です。今年は週末を含めて4連休になります。そのため、中高年から高齢者を含めたグループで日本を訪れることが多く、温泉地など比較的ゆったりとした旅行スタイルが好まれます。

一方、10月の大型連休は2つの祝日が週末と繋がっており、有給休暇を活用することで最大9連休となります。家族旅行にとどまらず、友人同士やカップルで旅行に行く方が増えます。9連休ということから、1都市にとどまらず、複数の県をまたいで旅行プランが増えると予想されます。元々韓国人訪日客に人気の福岡を起点とした九州エリアの旅行は、今年さらに注目が高まると見ています。

また、韓国人観光客はこのような大型連休だけでなく「3連休でも来日する」という点がポイントです。需要が年間に分散しているので、継続的な施策が必要だと考えています。

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個人旅行化・コト消費へと変化する韓国人観光客の旅行スタイル

ー旅行スタイル自体にも変化はありますか?

三木:ここ数年で大きく変わっています。以前は団体旅行、いわゆるツアー形式が主流でしたが、今は個人旅行が中心に変わってきています。
個人旅行とは、航空券・ホテル・移動・体験まで、すべて自分で選んで組み立てる旅行です。スマートフォンやSNSの普及で、情報収集や予約が簡単になったことが背景にあります。

ーそれによって旅行の中身も変わってきているのでしょうか?

三木:はい。旅行中の消費の考え方も大きく変わっており、昔のように大量に買い物をするのではなく、「どう過ごすか」に価値を感じる人が増えています。

ー旅行客はどんな体験を求めていますか?

三木:温泉旅館でゆっくり過ごす、日本文化を体験する、ローカルな飲食店に行くなどですね。特に最近は観光客向けのお店ではなく、日本人が普段行くような店を探す傾向が強く、「自分だけの体験」を重視する流れが強いです。
その背景には、SNSで共有したときに「人と違うことに価値を感じる」韓国の文化があります。そのため、定番の観光地よりもまだ知られていない場所に価値を見出す傾向があります。

ーその流れで、日本の地方観光の関心も高まっているのでしょうか?

三木:そうですね。特にリピーターは地方志向が強いです。
理由の1つとして「癒しニーズ」があります。韓国の若年層は競争社会の中で生活していることから、日本の地方ののどかな風景や温泉でリラックスしたいという需要があります。

ー確かに、旅館や自然は日本ならではの魅力ですね。

三木:もう1つの理由は「目的型旅行」が増えていることです。
韓国ではゴルフ人口が増えています。一方で、国内ではプレー環境が限られているため、旅行プランに日本でのゴルフ場でのプレーを組み込むことが定番化しつつあります。「どこに行くか」ではなく「何をするか」で旅行先が決まる傾向があります。その結果、地方にも人が流れています。

ー観光地の選定だけでなく、消費行動にも特徴はありますか?

三木:最近の韓国人の消費行動は、「スマート消費」と「羨望消費」の2つに分かれています。
スマート消費とは、時間もお金も無駄なく使うことを重視するスタイルです。主要空港から近い地方を選んだり、直行便がある都市を優先したり、お土産も「皆に喜ばれる実用的な日本の医薬品」を厳選するなど、必要な分だけを効率よく選ぶという発想が根付いています。
羨望消費とは、周りから羨ましがられる体験を求めるスタイルです。気軽に行ける日本だからこそ、ローカルなお店やアニメの世界観が広がるスポットなど、観光客が少ない「ちょっと特別な場所」を訪れることに価値を置く傾向があります。

この背景には、韓国の文化的な特性も関係していると思います。韓国人留学生調査員によると、韓国は他国と比べて「他者への関心が高い社会」で、旅行に行った人がいると「どこに行ったの?何をしたの?」と周囲が積極的に聞く文化があります。
SNSで自分の私生活を公開して称賛を得ることが承認欲求につながりやすく、特に若い世代ほどその傾向が強いです。だからこそ、旅行中も「人に話せる・自慢できる体験かどうか」を重視する方が多いです。

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ー情報収集にはどのような特徴がありますか?

三木:韓国では、旅行プランなどを決める際に複数の情報源でダブルチェックする特徴があります。
SNSなどで情報を見た後、NAVERブログで実体験のレビューを確認する流れが一般的です。韓国ではブログ文化が根付いており、2025年のNAVERブログのユニーク訪問者は4500万人、ブログの投稿数は3億3千万(※2)で、韓国国内で広く利用されており、主要な情報収集手段の1つとなっています。
また、ブログ以外では在日韓国人や留学生のSNS、YouTubeなど、「日本の現地をよく知っている人」の情報を重視する傾向があります。

ーどんな年齢層が日本を訪れていますか?

三木:20〜30代の若年層が中心です。そのため消費も「自分らしさ」を重視する傾向が強くなっています。
例えば、日本のキャラクターグッズをファッションとして楽しむなど、体験や自己表現の一部とするケースが増えています。一方で、無駄な出費は避ける効率的な消費も主流になりつつあり、高単価な商品を衝動的に買うよりは、自分が本当に欲しいものを厳選して買うスタイルが増えています。かつての爆買い時代とは異なり、「皆が同じものを買う」から「自分が好きなもの、癒されるものにお金を使う」へと消費の形が変わったというのが正確な表現かもしれません。

ー最後に、韓国向けマーケティングを検討する企業様へ、取り組みを進めるうえで重要なポイントを教えてください。

三木:韓国からの訪日客は、初めての訪問だけでなく、2回目・3回目と繰り返し来日するリピーターが多い点が大きな特徴です。
そのため、単発の集客ではなく、リピーターを前提とした戦略設計が重要になります。具体的には、「次に訪れたくなる理由」をどう設計するか、そして地域や体験の幅を広げながら継続的に接点を持ち続けられるかが鍵になります。

また、個人旅行化やコト消費の進展により、「どこに行くか」だけでなく「何を体験するか」が選ばれる時代になっています。観光地や商品単体ではなく、体験価値としてどう魅力を伝えるかが、これまで以上に重要です。

韓国人観光客のインサイトを正しく捉え、リピーター化と体験価値の設計を両輪で進めていくことが、2026年のインバウンド戦略の成果を大きく左右する重要なポイントです。



※1 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2025年12月推計値)」
https://www.jnto.go.jp/news/press/20260121_monthly.html
※2 2025 네이버 블로그 리포트」(2025 ネイバーブログレポート)
https://event.blog.naver.com/2025-blogreport


 

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