2015/12/9 Wed
カンタンにわかる! データマーケティングの現在と未来 (2)
羽片 一人
インターネット広告事業本部 セントラル運用設計本部データマネジメント局 局長
2009年 株式会社サイバーエージェントへ入社。インターネット広告事業本部にて営業に従事。
2010年 株式会社CA Beatを設立、代表取締役社長に就任。メディア事業、ゲームコミュニティ事業の立ち上げを行う。
2013年 SAPゲームネットワーク事業を立ち上げ、SAP特化型DSP/DMP「GameLogic」「GameAudience」のプロダクト責任者に就任。
現在は、株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 データマネジメント局 局長として従事。
【第2回】この3ヶ月で本格化!? ネイティブアプリのデータマーケティング
「アプリの閲覧データ/プレイデータを元にユーザーを呼び戻したい」、「アプリをすでに持っている人に広告を出したくない」など、アプリのデータを活用したマーケティングに取り組みたいというご相談をいただく機会が増えてきました。
ゲームで成功を収めている企業においては、先んじてアプリデータを活用した呼び戻しの事例が出てきていますが、ここ3ヶ月~半年の間に、多くの企業が本格的にアプリデータの活用に取り組んできそうです。
元々ウェブサイトをメインにビジネスを展開してきている企業も、アプリという入り口を新たに設け、活発に投資をしているので、これから非常に盛り上がるドメインだと思います。
なぜこのドメインが盛り上がりそうなのか?これには理由があります。
それは、約80%~90%のアプリユーザーがインストールから1週間後にそのアプリを起動していないというデータがあるからです。
この図はインストールから1週間後の継続率を出しているものですが、全カテゴリで約80%~90%のユーザーが離脱しているという事実が見て取れます。
その中でも高い継続率を見せているのはソーシャルメディアやソーシャルゲーム(13%~17%)です。FacebookやTwitterなど、スキマ時間についつい見てしまうメディアや、一度ハマったら何度もプレイしてしまうゲームの継続率が高い傾向があります。
「Publication(出版)」の割合が異常に高いのは、最近流行っている1日1話読める漫画アプリなどでしょうか。逆に「Food」や「Travel」など、アプリを利用したいシチュエーションが限られるものは10%未満の継続率になっています。
継続率は起動シチュエーションやアプリのコンテンツ力にも比例するのですが、無料でアプリをインストールできるという環境も影響していると考えています。
もし有料だった場合はユーザーも比較検討し、ダウンロードして「ちゃんと使う」のですが、無料の場合は欲しい時にとりあえずインストールして使ってみるというユーザー行動になります。
このような市況も踏まえて、折角アプリをインストールしたのにほとんどのユーザーに使ってもらえない、これを解決する策としてアプリのデータマーケティングが今、注目されています。
なので今回は、「この3ヶ月で本格化!? ネイティブアプリのデータマーケティング」というタイトルで、基礎的な部分を抑えた後に配信面の分断、配信で効果を出すポイントをお伝えしていきたいと思います。
データマーケティングに必要な準備
アプリのデータマーケティングを行う際に必要なものということで、①ターゲティングキーと、②ディープリンクについて書きます。
①ターゲティングキーについて
ウェブにおいては、Cookieをターゲティング配信に活用していますが、アプリにおいては、以下をキーにターゲティングを行います。
iOS:AdvertisingIdentifier(IDFA)
Android:Google AdvertisingID(AdID)
Cookieとは全く別物で、AppleとGoogleから正式に提供されている端末IDです。
IDFAとAdIDをキーにし、アプリ内の行動データと紐付けてアプリへの呼び戻しを行います。このキーは企業側が取得するか、計測ツールなど外部SDKを活用して取得する方法があります。
アプリの運営に使うということはあまりありませんが、広告においては活用できるキーになりますので自社で取得しておくことをお勧めします。
②ディープリンクについて
モバイルアプリ内の特定ページに直接遷移するためのリンクを指します。
ディープリンクを設定すると、アプリの特定ページへ直接遷移させることができるようになります。
例えばECサイトであれば、Aの商品詳細ページまで行ったユーザーを、直接商品Aのページへ戻す。ゲームであればガチャを回せるユーザーをガチャページへ直接戻すというようなことが可能になり、ユーザーが求めていた情報に対してよりダイレクトにアクセスできるようになります。
ウェブでの検索結果からアプリを開くケースも増えてきています。Amazonアプリを落としている場合、Googleの検索結果からの飛び先が、Amazonアプリの特定ページへのディープリンクになるなど各社活用が進んでいます。
ディープリンクの設定は、ディープリンク生成ツールなどを活用して、自社で全て実装する方法があります。最近のツールは安価で提供されているケースが多いので、自社で開発するより工数もかからずお勧めです。
ご紹介したこの2つは、実施前の準備が必要です。
ターゲティングキーは何で取得するのか?ディープリンクはどのように実装するのか?ということを決めてからデータマーケティングに取り組むのが良いかと思います。
配信面の分断について
次は配信面の分断についてです。
前述の、アプリとウェブでターゲティングキーが違う(IDFA/AdIDとCookie)という話に紐づくのですが、アプリデータを活用し広告を配信する場合、アプリ面在庫にはIDFA/AdIDを使ってターゲティングできるのですが、ウェブ面在庫にはIDFA/AdIDのキーは活用できない(キーはCookie)のでターゲティングができないという事象が発生します。
わかりやすく例えると、あるユーザーがAmebaアプリを使っていてコンテンツAを閲覧し、離脱しました。そのデータを使ってアプリ内コンテンツAに戻したい場合、ニュースアプリの配信面にはターゲティングできるのですが、ファッションのウェブサイトを見ている際にはそのユーザーに対してターゲティングができません。
現状の市場のスマホ在庫状況はウェブ面:アプリ面=7:3ほどだと言われています。
アプリ面が急成長していますが、ウェブ面の在庫の方がまだ大きい状況です。
ターゲティングキーが違うが故に配信面の分断という大きな問題が起きてしまっているので、業界的には様々な企業からここを統合する動きが出ています。
配信で効果を出すポイント
最後にクリエイティブについて書きたいと思います。
効果を出すポイントは「ダイナミッククリエイティブ」であるかどうか、です。
アプリをインストールするクリエイティブとユーザーを呼び戻すクリエイティブは、コミュニケーションが違うので違うものを用意すべきです。
通常のインストール訴求はそのサービスの魅力などを打ち出して興味を持ってもらい、ユーザーにインストールしてもらうというのがゴールですが、アプリの呼び戻しに関してはアプリに戻ってきてもらいアプリの中で成果になる行動をしてもらうのがゴールです。ECであればアプリ内購入、ゲームであれば課金などです。
ユーザーを呼び戻すには、そのユーザーに最適なクリエイティブを出す必要があります。
弊社では通常のインストール訴求とは別のクリエイティブを用意し、アプリデータを使って動的にクリエイティブを生成し訴求することによって、平均1.5倍~最大3倍ほどCTVRが向上したという実績が出ています。
スタティックなクリエイティブではなくダイナミッククリエイティブで訴求することは、広告配信の効果を向上させる上で非常に重要なポイントです。
まとめ
アプリのデータマーケティングにおいて抑えておくべきポイントは、以下3点です。
①ターゲティングキー・ディープリンクの準備が出来ているか
②配信の分断をどのテクノロジーで回避するか
④ダイナミッククリエイティブで配信出来ているか
この3か月で本格化するアプリのデータマーケティングに乗り遅れないように、各社の皆様がこれから準備をする際の参考になりましたら幸いです。
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