SBI証券では投資初心者を中心とした潜在層の獲得を目的に、2021年にYouTube公式チャンネル「【SBI証券】ビジネスドライブ!」を開設しました。2025年1月には証券会社が運営する公式YouTubeチャンネルで登録者数No.1(※)となるまで成長した、YouTubeチャンネルの運用設計やコンテンツ制作の過程、そして肝となる効果測定などの取り組み内容について、株式会社SBI証券から村上様、徐家様をお招きし、サイバーエージェントの100%子会社である株式会社Cyber AI Productionsより藤本、近藤、高橋と対談を行いました。
※YouTubeチャンネルを運営する証券会社のうち、チャンネル登録者数上位10社 (SMBC日興証券、SBI証券、大和証券、東海東京証券、野村證券、松井証券、マネックス証券、みずほ証券、三菱UFJ eスマート証券、楽天証券(五十音順))のYouTubeチャンネルを対象に比較。(2025年1月30日現在、SBI証券調べ)
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村上 恭介
株式会社SBI証券
デジタル営業部 専任次長 -
徐家 博貴
株式会社SBI証券
デジタル営業部 課長 -
藤本 健治
株式会社Cyber AI Productions
プロデューサー -
近藤 良和
株式会社Cyber AI Productions
プロデューサー -
高橋 尭
株式会社Cyber AI Productions
ディレクター
需要の掘り起こしを行うために、投資初心者向けのYouTubeチャンネルを開設
村上氏 :私はSBI証券のデジタル営業部門にて、証券口座獲得やNISA口座の戦略プロモーションなどを統括する部署にいます。口座開設を最終的なKGIとした今回のプロモーションにおいて、課題は新たな需要の創出でした。
これまで広告によって、ある程度コンバージョンしやすいユーザー獲得はできていたので、そこからさらに獲得数の拡大を目指すとどうしてもCPAが上がり費用対効果が悪くなってしまいます。
そこで、需要の掘り起こしをする必要性があると考え、当社のYouTubeチャンネル「【SBI証券】ビジネスドライブ!」を通じて、認知拡大とナーチャリングを行いながら、最終的に口座開設までつなげていくことができればと考えました。
徐家氏:金融や投資はとっつきにくいイメージがあり、お金のことを考える機会も少ないため、その障壁を下げるために、親しみやすいコンテンツを展開し、最初の一歩を踏み出しやすくすることを狙いました。
私はデジタル営業部の中でもYouTubeなどのSNSを担当しており、今回サイバーエージェントさんとの担当窓口でもありました。部としての最終KGIは口座開設になりますが、私の担当領域では社名の認知度向上が重要なKPIになっています。
村上氏 :もともと弊社では別のYouTubeチャンネルを持っていたのですが、既存のお客様向けに投資情報をご案内するコンテンツがメインだったため、初心者の方には難しすぎてなかなか見ていただけない状態でした。そこでコンテンツの中身や根本のチャンネル設計から初心者向けに考え直す必要があるということになり、今回の取り組みが始まったんです。
今回のYouTubeチャンネルの施策では、「広告」として需要を掘り起こすこと、そして「SNSの運用」としてそのチャンネル自体を盛り上げることの2つの難しさがありました。
「広告」としては、先ほども話した通り、既存の刈り取りでは上限があるので、そこをどうスケールさせていくのかということ。また「SNSの運用」については、社内でこれまで実績がなかったため、そもそもKPIを何に設定すべきかから議論を始めました。

フェーズごとに効果定義を綿密に擦り合わせた全体プロモーション設計
CA藤本:私はCyber AI Productionsにて、企業のオウンドとしてのYouTubeチャンネルの企画運営、またそれに伴うプロモーション全体を見させていただいています。SBI証券様のYouTubeチャンネルの施策内容としては、まず親しみやすいコンテンツを制作し、投資へのハードルを下げることから始めました。
その後、SBI証券様の認知向上や、そもそもの証券や投資に対する理解を促すことなど、フェーズごとに目的を設定して全体設計を行いました。各フェーズでモニタリングする数値を変えながら、運用・分析を徹底してきました。
CA近藤:私はCyber AI Productionsでプロデューサー兼プランナーとして、企業YouTubeチャンネルの企画設計と運用をしています。実行する中でまず課題となったのは、ナーチャリングの手法とその過程における効果定義でした。
潜在層の認知向上や利用意向の向上はアンケート調査で効果測定をするのが一般的です。しかし、本案件のようにメディアを作るとなった場合、そのアンケート調査は有効ではないと考えたんです。
そこで、「どのような状態になったら成功と言えるのか」という定義を、フェーズごとに細かく提案させていただき、すり合わせを行ったのは大きなポイントだったと思います。例えば、最初はチャンネル自体を見つけてもらわないといけないので、第1フェーズでは弊社のアセットである「ABEMA」とのタイアップでYouTubeチャンネルへの集客を行い、その運営元がSBI証券様であるという形で認知を取ることを目指しました。
それだけでは単なるマスコミュニケーションになってしまい、SBI証券様の独自性が伝わりません。そこで、次のフェーズでは別の効果指標を設けて、SBI証券様について知っていただくことを目指します。
今回の次の新たな効果指標は、動画を見たユーザーが能動的に検索行動アクションを起こすのか効果測定をするために「サーチリフト」を新たなKPIとして設定しました。
こうした細かな効果指標の設定が、『ビジネスドライブ!』のチャンネルとして伸張していく転換点になったと思います。

フェーズごとの目標資料
CA藤本:キャスティングについても、マスコミュニケーションとは異なる考え方をしています。視聴者ターゲットに合わせた情報を、専門性や共感性、説得力を持って語れる方を提案いたしました。影響力のある芸能人ではなく、視聴者にとって身近に感じられる方を重視しています。
村上氏:弊社でも、証券会社が発信する情報が消費者に届きにくいという課題を感じていました。そのため、身近な存在から情報を発信するというご提案は、弊社の課題感に合致していると感じました。
CA近藤:動画制作にあたっては、弊社からテーマを提案させていただきながら、議論を重ねて動画コンテンツを作り上げていきました。その中でも、新NISAは両者共通して重要だと認識していたテーマでしたし、視聴者が自分ごと化しやすいテーマでもあります。
それまでのチャンネル運用期間で、初心者向けの「資産形成をするための考え方」というような内容から、中・上級者向けの「金融商品の解説」まで網羅した幅広いコンテンツをリリースしてきました。その中で、初速の視聴回数の伸びが良いのは前者の初心者向けやNISA関連の動画であるという成功体験がありました。またYouTube上での検索ボリュームや類似視聴者の増加が向上しているというデータもあり、YouTubeを含めた社会的な需要が高まっていることが分かっていました。
CA藤本:更に媒体のアルゴリズムを理解した上で、企画運用を行う必要があります。NISAというワードで検索流入が増えることを想定し、キーワードや動画全体の演出も投資初心者が見たいと思えるものを意識しました。そういった部分が企画設計および演出の肝になっていったと思います。

双方向の柔軟なアイデア出しにより、ターゲットに即したコンテンツを制作
村上氏 :これは本案件の運営をする中で日頃感じていることなのですが、弊社では情報を正しく正確に伝えることがとても重要視されており、そこにおいては私たちはプロフェッショナルだと思っています。一方で、その情報をどのようしたらお客様に面白く届けられるかという点に関しては知見がありません。サイバーエージェントさんからはその点について、いつも様々なご提案やご助言をいただいており、とても感謝しております。
徐家氏:本当にそうですね。サイバーエージェントの皆さんは、とても柔軟性がある方々だなと思います。我々はまさに面白く伝えることに関しては素人なんですけど、サイバーエージェント様は私の無邪気な意見にもいろいろと的確なフィードバックをくださるんですよね。「それは面白そうですけど、この部分については確認が必要です」と。
近藤さんとは1日に何回電話でお話ししているか分からないくらいですが、いつも我々のオーダーに対して柔軟にご対応いただいています。
村上氏 :あと、毎回サイバーエージェントさんからご提案をいただいた後には社内でも「ここをこう変えたらもっと面白くなるんじゃないか」と1時間も2時間も議論が進むんです。それはご提案いただく企画の斬新さのおかげだと思います。
CA近藤:ありがとうございます。制作チーム内で演出について議論を重ねる中で、あるメンバーから「いま自分自身が月1万円も投資できていない、貯金もできていない」という会話が出ました。SBI証券様との打ち合わせを重ねる中で、投資の重要性を日々実感する我々でも、“なかなか行動できない理由がある”ことがわかりました。
そこで、「じゃあその悩みを直接スタジオで相談する企画にしよう」という発想でSBI証券様に提案し、制作した動画の効果がよかったんです。
このように視聴者の感じている正直な悩みや課題をSBI証券様と共に向き合うことで登録者数最大化につながったのだと思っております。

極AIお台場スタジオの登場で動画企画の幅が格段に広がった
CA高橋:ここ最近の大きな変化でいうと、AIやバーチャルプロダクションの活用で動画撮影の現場も大きく変わってきましたね。3年前はハウススタジオを実際に借りて撮影をしていましたが、今は弊社の制作スタジオ「極AIお台場スタジオ」で様々な背景をLEDウォールに投影して撮影しています。
天候やセットチェンジといった時間を削減でき、1日に複数のシチュエーションを制作・撮影できる点が強みです。
探偵事務所でも病院でもクイズ番組風の背景も、生成AIなどを活用して効率的に作れるので、企画の幅がぐっと広がりました。今後も継続してチャンネルを運用していく上で、さらに効果の良い表現をスピーディーに実現していきたいと思います。



認知・想起だけに留まらない!長尺動画による接触時間の長さがサーチリフト検索数や口座開設CVまでつながる!?
徐家氏:効果測定に関しては、チャンネル登録者数、動画のトータル総再生数、間接コンバージョンの3つの指標を中心に見ています。
最近では、視聴者の方からのコメントも確認しています。例えば、くらまさんとふゆこさんの対談動画に「この相談者、まんま自分や」というコメントが寄せられた時には、視聴者の方が自分ごと化できるコンテンツを作れているという手応えを感じました。
CA高橋:そうですね。立ち上げ当初を振り返ってみると、SBI証券様の名前の認知・検索数を上げることを目指しており、結果的に認知に関して定めたKPIより高い数字を出すことができました。しかし、せっかく新しく投資に特化したチャンネルを立ち上げたのだから、できれば最終的な口座開設の数値まで追いたいと考えていました。
ただ、それは既存のYouTubeの仕組みの中では難しい。そこで、サイバーエージェントのインターネット広告部門の知見を活用しながら、検索広告とYouTubeを連携することで、検索への寄与度を測れるようにしたんです。
動画視聴者と非視聴者に分けて数字を見ており、それによりYouTubeのアナリティクス以外の数値で効果を可視化できるようになりました。これは本施策の事業インパクトを証明するにあたり、大きなポイントとなりました。
現状ではサブKPIとして「検索数の伸び」と、さらに「動画を視聴した人が検索経由でどのくらい口座開設したか」という数値も追っており、かなり深いコンバージョンでYouTubeの動画コンテンツの寄与度を追えるようになっています。
その計測数値を見て、動画コンテンツの評価を行い、その後の企画・提案につなげています。
加えて、定期的な定性調査などで、ターゲット層のユーザーの態度変容を定性・定量で測っています。結果的に、運用初期から比較して1年後には「検索リフト」が300%増に。
さらに間接効果の計測になりますが、口座開設にも寄与し、ピーク時は運用初期と比較して900%増を実現することができました。
このようにして、実際に口座開設を行うユーザーの反応を見ながら、YouTubeを制作し運用をすることができています。

CA藤本:ここまで徹底的に効果検証に向き合っている案件って、恐らく多くはないですよね。
徐家氏:そうですね。ブランドリフトをKPIにする施策はこれまでもありましたが、ここまで深いコンバージョンの数値を追う提案をいただいたのは初めてでした。さすがサイバーエージェント様だなと感じました。
CA高橋:ありがとうございます。ゼロの段階から信頼いただいて、YouTubeチャンネルを運営し続けていく中で、一緒に作り上げていった効果計測のやり方だなと感じます。一緒に様々な検証をさせていただいたおかげで今があり、非常にありがたい経験をさせていただきました。
今後の展望
村上氏 :YouTubeチャンネルを立ち上げた当初に掲げた、「お客様に金融のことを深く理解していただくことで、金融の取引を活性化させる」という目標を達成できていると感じています。
そして嬉しいことに、証券会社が運営する公式YouTubeチャンネル登録者数No.1を獲得でき、チャンネルは順調に成長しています。
更に、詳細な運用計測のおかげで事業指標への紐づけができており、非常に良いサイクルができ上がっています。
これからもコンテンツを作り続けていく中で、「SBI証券ってこんなことをやっていたんだ!」というサプライズを起こせるようなコンテンツを、お客様に身近な形で届けていきたいです。
徐家氏:そうですね。個人的には、日本で投資を始める人の中で、「とりあえずSBI証券のビジネスドライブを見て始めた」という人が増えることが、このチャンネルの目指す形なのかなと思います。投資=ビジネスドライブというところまで、チャンネルを成長させていきたいです。

CA藤本:コンテンツの自由度が高いことがYouTubeチャンネルの特徴でもあると思うので、そこにバーチャルプロダクションの撮影手法なども掛け合わせた上で、コンテンツの幅を広げて更なるファン作りをしていきたいと考えています。
CA近藤:今後はコンテンツのファン作りをしていきたいですね。今の視聴者をファンに育てて、行動を起こしてもらえる状態を目指していきたいです。
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記事制作・撮影:
株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 広報
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