2018/6/26 Tue
AIを活用し、獲得件数を最大化し続ける「スタディサプリENGLISH」のWebマーケティング
笹部 和幸 氏
株式会社リクルートマーケティングパートナーズ
オンラインラーニング事業推進室 事業開発2部 部長
三好 恵美 氏
株式会社リクルートマーケティングパートナーズ
オンラインラーニング事業推進室 事業開発2部 マーケティング担当
赤羽 雅也
株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 営業局
エグゼクティブアカウントプランナー
井上 貴裕
株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 営業局
局長
毛利 真崇
株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 セントラルアカウントデザイン室
室長
「スタディサプリENGLISH」を運営する、株式会社リクルートマーケティングパートナーズより、オンラインラーニング事業推進室 事業開発2部 部長の笹部氏、三好氏を迎え、AIによって予算配分を自動算出するAIシミュレーションシステム「CAAI」を活用し、全体アロケーションを加味して獲得件数の最大化を図るWebマーケティングについて、当社の「CAAI」事業責任者と営業担当とともに、インタビュー対談を行いました。
-「スタディサプリENGLISH」の立ち上がった背景
笹部氏:2014年に、資格取得のためのオンライン学習サービス「資格サプリ」を立ち上げました。簿記、TOEIC®、介護などのケアマネジャー等のラインナップです。やってみてすぐに分かったのは、特にTOEIC®のユーザーの伸びが最も高く評判も良かったということです。
「資格サプリ」をどのように成長させるのかを考えることが私の役割でした。2つの選択肢があって、ひとつは資格の種類を増やしていくという道。もうひとつは、大きな規模感のある英語学習マーケットに絞ってみるという道。そうして後者を選択し、立ち上がったのが「英語サプリ」です。
「英語サプリ」は、中学生から社会人向けの英語学習サービスですが、ユーザーの8割~9割が社会人という構成比であり、英語学習をしたい社会人のマーケットが大きいことが、現在の「スタディサプリ」小学講座・中学講座・高校講座・大学受験講座と異なる点でした。そのため、いかに社会人ユーザーを増やしていくかが、非常に重要なプロダクトとなってきました。
この「英語サプリ」が、「スタディサプリENGLISH」の前身として2015年10月末にローンチし、そのタイミングから御社とのお取引が徐々に拡大していきました。
CA毛利:今回初めて、「スタディサプリENGLISH」を使わせていただいたのですが、UIが非常に作り込まれていると感じました。動画が綺麗なうえに、表示も速く、高い技術力に感動いたしました。
笹部氏:ありがとうございます。特徴的なのは、動画の制作自体も、テレビやCMの仕事も担当されているスタッフが制作に関わっています。技術面では、UI制作も含めて、全て社内で内包する形態をとっていることで、良さをしっかり出せていると思っています。
CA毛利:全て自社開発なのですね、素晴らしいですね。
-当時の課題感
笹部氏:いわゆるビズサイドで言うと、月額980円という、英語学習マーケットの中では安価なプロダクトのためLTVを上げづらいのです。なので当然ながら、「CPAを抑えながらどのようにスケールさせるのか」というところが一番の課題でした。
リリース直後の時期はCPAがもの凄く高かったですよね。今は当時の1/20くらいにCPAを抑えつつも、獲得件数のボリュームは増えているので、そこが凄いですね。
三好氏:私がジョインした当初は、プロモーション予算が限られていた中で、非連続成長に向けての高い計画目標がありました。更に「スタディサプリ」というメジャーな本体サービスがあるため、集客施策がかなり限られやすい現実がありました。
オンライン集客では検索連動型広告の指名検索で狙いにいくのが王道ですが、まずそこの上位に本体の「スタディサプリ」がある。また、戦いに行きたい「英会話」「英語学習」のキーワードはCPCがとても高いため、他の経路も含め、コスト効率を最大化しながら会員獲得をするにはどのようなポートフォリオを組んでいけばいいのか。加えて、サービス認知も得るにはどうしたらいいのか、と、難易度の高い課題にひとつひとつ向き合っていく必要がありました。
まずは、御社の前任のご担当者に、膨大な回数のABテスト実施に注力いただきました。そうして、「スタディサプリENGLISH」としての勝ちパターンの経路や広告クリエイティブ、LPなど光が見えてきて、会員獲得増とともに順調に事業も成長していき、勝ち筋を見つけることに注力するフェーズから、次の拡大フェーズへのタイミングで赤羽さんと井上さんに加わっていただきました。
CA赤羽:私は、「スタディサプリ」小学講座・中学講座・高校講座・大学受験講座を担当させてもらっていて、そのタイミングで「スタディサプリENGLISH」にもジョインさせていただいています。私が入ったタイミングでは、効果を可視化するためのレポートが不十分な状態だったため、まずゼロベースからレポート整備を行い、全て可視化できるように着手しました。
効率化だけであれば合わせにいけるのですが、「どう拡大させていくか?」が肝になってきたため、運用、クリエイティブ、管理するレポートまわり全ての見直しを行い、洗い出す作業をしていきました。
-拡大フェーズにおける現状の課題と、導入したCAAI
笹部氏:社内の会議で、全体のCPAが下がるということをレポートすると、「どこまで件数を最大化できるのか?」という問いが出てくるのです。
CA井上: その頃、「CPAを改善していく中で、どこまで獲得件数を拡大できるか?」という課題をいただき、AIによって予算配分を自動算出するAIシミュレーションシステム「CAAI」を使って、全体アロケーションを加味して獲得件数の最大化を図るメディアプランのご提案を始めました。
CAAIを元に「このCPAだったらいくらまで予算投下できます、勝率は何%です」ということをお伝えし、実行させていただく。そうして拡大して、クリアし、「さらに、追加予算をどのくらい投下できるのか?」と拡張して、広告出稿量も御社のサービス売上げも今はどんどん伸びていっていますね。
CA毛利:私はいまCAAIの事業責任者を務めており、CAAIはまさに、サービスの拡大フェーズに導入してほしいなという思いから開発したサービスです。私の属する部署では、FacebookやGoogleなど様々な広告媒体の仕組みがどうなっているかを研究し、一番広告効果がでる仕組みを設計する、ということに挑戦しています。
今では主要な広告媒体の売り上げは国内最大規模になりました。ただ、媒体毎の個別最適は進みましたが、結局、営業がお客様と会話をしているのは、インターネット広告全体の会話をしているため、同様に媒体を横断した効果最大化も仕組化できたら、日本で一番広告効果をお客様に還元できる代理店になれるのではないか、という思いから開発に至ったものがCAAIです。
CAAIの活用方法は、「CPAが合わないから使う」というよりは、「スタディサプリENGLISH」さんのように、「これから更に拡大し、ユーザーを獲得していきたい」というタイミングに導入してもらうことをイメージして作っています。
-CAAIをどのように活用し効果を拡大していったのか
CA井上:ありがちな発想は、「全てのメディアで同じCPAで獲得しよう」となること。本来は、増分CPAが違うので、「増分CPAをそろえて次の一手をとるために最適なコストの投下ポイントはどこなのか?」を見つけに行くべきだと思います。
CAAIを活用すると、全ての広告媒体で同じCPAを目標にするのではなく、AIが過去の配信実績を元に学習し、全広告予算内で獲得件数が最大化するプランニングを算出することが可能になります。
三好氏:例えば、FacebookのCPAが6万円で高いと感じたら、「ではFacebookは抑制してリスティングに注力してください」と予算シフトの判断をしてしまうことは集客担当者によくあると思います。しかし、この場合CPAは確かに抑制できますが、獲得数も縮小均衡に陥ってしまいます。
ですが最初に、増分CPAを加味したシミュレーションを提示いただくことで、仮にひとつの広告媒体のCPAが高いとしても、「全体で見た時にLTVのバランスが取れ、かつ、事業成長を狙える獲得が実現できるね」ということがお互い認識共有できていました。CAAIはその点でも、今後の拡張策を考える上でかなり助かりましたね。
CA毛利:そのように仰っていただけることはとても励みになります。
私はスタッフの立場として、様々なお客様のお声を頂戴いたしますが、「リスティングの社名カテゴリや、ディスプレイ広告のリターゲティング広告のCPAが良いので、そこに予算を投下し続ける」と仰るご担当者様が多く、増分CPAの概念をご理解いただけるお客様はまだ少ないなという感覚があります。それは我々からお客様へ啓蒙していかなければと思っています。
CA赤羽:今までは、プロダクトごとの増分CPAを全て手動で出さなければならず相当な時間がかかっていましたが、CAAIのツールを導入したことで、自動的に吐き出され、その通りにアロケーションしていけばしっかり効果が出せます。この導入によって、今までそこに割いていた時間を、もっと違う施策に時間を費やせるようになってきています。
CA毛利:私ども代理店としては、お客様から言われたままのことを実現するのではなく、『パートナー』としてどう在るべきか、を考えるのが重要だと思っています。
お客様から求められるご予算や獲得件数はありますが、「こういうことをするともっと効果がでる可能性があります」ということを、私たち代理店はしっかりとお客様の立場に立って提案していく必要があると思っていますし、それがパートナーとして一番の在るべき姿なのかなと感じています。
私たちが受け身にならないように努めていく必要があると思っていますし、またお客様とともに高め合っていける組織をしっかりと作っていくにあたっても、CAAIを有効活用してもらいたいです。
笹部氏:特に我々のようなB to C商材は、投資対効果が重要です。なので、目線さえ合っていれば、いい投資対象があればお勧めしてくれたほうが有難いです。
CA赤羽:お客様によっては、複数の代理店を使っているケースもあるかと思いますが、御社の場合はほぼ任せていただいているので、予算をトータルで「もっと件数が獲れます」「今月は時期的に厳しいです」ということを、瞬時にお伝えすることができているのは、より高い効果を出すうえでとても大きなポイントかなと思います。現在は、月3回くらいはシミュレーションをご提案し、さらに踏めるかどうかは、常に考えてお出し出来るようにしています。
CA井上:提案時には、「お客様の事業成長に我々がどれだけ寄与できるか」ということを意識しています。
状況によっては「予算をこれだけ使いましょう」と提案しづらいケースもあるかと思うのですが、予算を掛けるその先に何があるのか?をきちんと意識して、「お客様の売上げが上がるために考えた結果がこれなんです」という事をきちんと伝える事も担当営業の責務だと思います。
それが予算を投下することであればそうだし、使わないことであれば、今月は使えないと正直に言います。お客様の売上げ目線で常に向き合うということが最も重要なのではないでしょうか。
-CAAI導入によってもたらした効果
CA井上:月初に提案した数値と仕上がりの結果数値がほぼ同じケースが多く、よく冗談で「件数の帳尻を最後合わせました?」みたいなお話を頂くのですが、それだけCAAIの精度が高いということ。
精度が高いということは、お客様の事業目標を立てる時に、我々が共有している計画通りにもいく、ということです。お客様の事業計画通りに進む事が出来ているというのは、大きなポイントだと思っています。お客様にとっては、計画の修正も発生しないので、逆に踏めるなら、「もっと使いましょう」という提案も月初にしていきます。
笹部氏:信頼度の高い計画を立て、しっかりと日々達成できているというのは、周りを巻き込んで仕事をする上でものすごく大事です。
CA赤羽:未達はほぼないですね。予算規模も大きく投下されているので、過去データがかなり溜まっておりCPAカーブを描きやすいようになっています。CAAIは機械学習を使っているので、データが溜まるほどに精度が高まってきます。
-今後の展望
笹部氏:もともとすごく高いCPAが、ものすごく安くなったという実績があるものの、これからの進化もまだまだ期待し続けたいですね。
また、新プロダクトをどんどんリリース予定なので、そうするとターゲットも変わるし、応えるニーズも変わってきます。新プロダクトにおいても、今までもしくはそれ以上のパフォーマンスを期待したい。結局、パフォーマンスに尽きますね。(笑)
クライアント目線で、「このように予算を使ったほうがいいのではないか」と御社のように言っていただけることは我々にとってはウェルカムです。
三好氏:「スタディサプリENGLISH」は今後もカスタマーのニーズに合わせて進化させていきます。現在もあらゆる英語学習のニーズに対応するために、月額980円~の日常英会話コースから、3カ月68,000円~のTOEIC®L&R TEST対策コースパーソナルコーチプランまでありますが、今後出していくプロダクトには、「検討期間」という変数が深く関わってくるものも出てくるかと思います。これまでの施策では、リスティング広告とディスプレイ広告を出して、いかに露出を図れるか?という世界でしたが、今後はさらにシミュレーションの中での精緻化をお互いにブラッシュアップしていきたいですね。
例えばネイティブ広告を出した時、リーチしたカスタマーにはどの程度の検討期間が必要で、そのリーチと検討期間はコンバージョンにどれくらい寄与できるか?というような複雑なロジックでの配信も、お互いに磨きこんでいきつつ、最後にはパフォーマンスにつなげていきたいです。やっぱり、パフォーマンスですね。(笑)
CA毛利:今後の CAAIの進化としては、構想していることは様々ありますが、今よりもより複雑な効果指標に対応し精度をあげていきたいと考えています。
また、よりお客様にCAAIを活用した効果をダイレクトに感じていただけるような環境を整備したいと思っており、お客様用の閲覧画面のようなものもリリース予定です。
社内だけではなく、お客様にもCAAIが自立して提案をすることで、その提案内容を見て、弊社の営業とお客様が相談しご判断していくという、『AI』と『営業』と『お客様』の三位一体の未来を想定して作っています。時間はもう少しかかるかもしれませんが、ご期待いただければと思います。
笹部 和幸 氏
株式会社リクルートマーケティングパートナーズ
オンラインラーニング事業推進室 事業開発2部 部長
三好 恵美 氏
株式会社リクルートマーケティングパートナーズ
オンラインラーニング事業推進室 事業開発2部 マーケティング担当
赤羽 雅也
株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 営業局
エグゼクティブアカウントプランナー
井上 貴裕
株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 営業局
局長
毛利 真崇
株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 セントラルアカウントデザイン室
室長
_____________________________________________
取材・執筆: 加藤 貴子 (株式会社サイバーエージェント 全社広報室 インターネット広告事業本部 広報)
撮影: 杉 麻子 (株式会社サイバーエージェント Design Factory)
_____________________________________________
※「CAAI」の詳細については、こちら
※ 本件におけるお問合せは、こちら
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
の最新情報をお届けします