そう表現されているのをよくネット上で目にすることがあります。インターネットの集客手法において、ここまで「終わった」と言われるのはSEOくらいではないでしょうか。
SEOにおけるひとつのKPI、あるいはプロセスである「検索順位を上げる」という指標において、「すべての人に共通する順位」が意味をなさなくなった際の言葉であったり、特定の手法を指して語られている言葉であったりはするものの、「終わった」という表現は多くの誤解を含むように思います。
(実際にSEOに従事される方の多くがそう感じていないので、問題はないのですが。)
『検索(自然検索)』という行為は、ユーザーとのコミュニケーションを取るさまざまな手法の中で、「コミュニケーションの第一声をユーザーが発し、それに対して第三者(検索エンジン)によって推奨される」という点で、特異なコミュニケーション手法であるといえます。
つまり、SEOは「検索エンジン上で能動的に情報を求めているユーザーに対して、適切な情報を届けるための工夫」「ユーザーと検索エンジンに対して情報を最適化し、ニーズが明確なユーザーとコミュニケーションをとる手法」のことであり、ユーザー行動の変化、技術の進化にあわせてその手法に変化は訪れているものの、ユーザーの『検索』というニーズがなくならない限り、終わりが訪れるようなものではないと思うのです。
前置きが長くなりましたが、私、勝浦は、現在サイバーエージェントのSEO局にて、企業のSEOコンサルタントを行っております。
本コラムでは数回にわたり、SEOの現状(といっても常に変化はしていますが…)と、近い将来どのような変化が起こり得るか(といってもいつそうなるかはわかりませんが…)について、拙筆ながら筆をとらせていただきます。
また、本稿においては軸足をGoogleに置かせていただきます。
かつてYahoo!が独自の検索エンジンを積み、モバイルといえばガラケーだった時代に比べ、Yahoo!の検索エンジンがGoogleに変わったこと、そしてスマートフォンの普及に伴い、現在「検索エンジンとしての」Googleのシェアは、当社内の調査によると全検索の80%近くにまで到達しようとしています(もちろん業界等によって異なるとは思いますが)。そのため、本稿では話の焦点を絞るたにも、検索エンジン=Googleになる旨、事前にご了承ください。
※以下データ当社調べ(複数の業界のサイトの実績データを集計)
さて、私が各所でセミナーや勉強会をする機会をいただいた際、まず最初に、必ず触れることがあります。
皆さんは、Googleの会社概要のページをご覧になったことはあるでしょうか。
GoogleのTOPページに行っていただき、左下部にある「Googleについて」をクリックした先にあるページのことです。
その中の「Googleがしていること」というページの中に、以下のような言葉が記載されています。
「完璧な検索エンジンとは、ユーザーの意図を正確に把握し、ユーザーのニーズにぴったり一致するものを返すエンジンである」
(共同創設者で CEO のラリー ペイジの言葉)
Googleが行う検索アルゴリズムのあらゆるアップデートは、原則として上記の言葉が指す「完璧な検索エンジン」を目指して行われているものである、と理解することができるのではないでしょうか。
つまり、多種多様なアップデートが行われたとしても、基本的にはそれらは一本の線の上に乗っているもの、「完璧な検索エンジン」へと歩みを進める道の途中にあるものと考えられるのです。
そうした考えが何につながるのか?
それは予測へとつながります。
SEOは正解が明示されない手法です。Googleも決してすべてを説明してくれるわけではありません。「こういうときはどうすればいいのか」「こういうケースはどうなんだろうか」という疑問に対して、その答えのすべてをGoogleが答えてくれるわけではないのです。
そんな時に私がよく考えるのが、「自分がGoogleだったらどう判断するか」という視点です。
「完璧な検索エンジン」を目指そうと思ったら、どうするのか。そう考えて出てきた予測は、それほど外れないことが多いです(もちろん、その根拠となるデータ分析はたくさん行うのですが)。
あくまで私個人の意見ですから異論も多くあることでしょう。でもきっと、Googleの中でも同じような議論やテストが行われているのではないでしょうか。ですので、その議論に参加するということではないですが、自分の中でその議論を行い、自分なりの意見をもっておく。その上で、実際どうなったのかを検証していくことで、よりGoogleの考えに近づくことができ、未来予想の確度を上げていくことができるのだと思っています。
ただ、その予測をするにも、事前知識が必要です。事前に持ち得る情報は予測の精度に直結します。本コラムがそんな事前知識の蓄えの一助になれば幸いです。
初回である本稿では、まずは、最低限抑えておきたいSEOの知識の中でも最初の一歩となる部分、Googleの「言葉」の理解について、簡単にお話しできればと思います。
SEOを考えるうえで、Googleがその言葉(キーワード)をどう捉えているか、というのは非常に重要なポイントになります。ユーザーが検索時に入力するキーワード(以降、検索クエリ)は、情報としては断片的です。実際にユーザーが何を求めているのか、何を指しているのかを理解するためには、その検索クエリだけでは十分とはいえません。
そこでGoogleは、その直後に再検索された際に追加された言葉などを踏まえて、ユーザーの本当の検索ニーズを探っているものと思われます。ここではGoogleがユーザーの検索ニーズをどう理解しているかを考える上で大切になるポイントを2つご紹介します。
ひとつ目のポイントは、「言葉の解釈」です。
たとえば「ワンピース」と検索したユーザーは、洋服のワンピースを指しているのでしょうか、それともマンガのワンピースを指しているのでしょうか。あるいは「マック」と検索したユーザーは、マッキントッシュを指しているのかもしれませんし、マクドナルドを指しているのかもしれません。そうした「ユーザーが何を指してその言葉を入力したのか?」という解釈を、Googleは自身が保有している他ユーザーの検索行動等から判断していると思われます。
ここで大切になってくるのが、Googleが認識している解釈から外れたページについては、その検索クエリで上位に表示されるのは難しい、ということです。
例えば「ワンピース」と検索すると、2015年4月現在、1位から10位までがマンガのワンピースについてのページで占められています。これは「ワンピース」と検索したユーザーは洋服ではなくマンガの情報を求めている、とGoogleが解釈しているからです。その中で、例えば洋服のECサイトが「ワンピース」という言葉で上位表示を狙っても、その実現性は限りなく低いです。
一方で「ワンピース 通販」と検索すると、今度は1ページ目に表示されるのはすべて洋服のワンピースを指したサイトになります。マンガの通販サイトは上がってきません。これは「通販」を掛け合わせた場合のユーザーニーズが洋服の「ワンピース」に変化していることを指します。
つまり、マンガのワンピースについてのサイトであれば「ワンピース」を、洋服のECサイトであれば「ワンピース 通販」での上位表示を目指す、というのが正しい選択となります(上位表示の難易度は別として)。このように、コミュニケーションを取りたいユーザーの発した検索クエリをGoogleがどう解釈しているか、という点をGoogleの検索結果から読み取る必要があるのです。
もうひとつのポイントは、「ユーザーの検索意図」についてです。
その検索クエリを入力したユーザーがどのような情報を求めているかについては、以下のように大きく3種類に大別されます。
当社では、赤字部分をとって「Doクエリ」「Knowクエリ」「Goクエリ」と呼んでいます。
自身がもつコンテンツが、上記のどのニーズを満たせるものなのか、実際に検索してみた際、上位に表示されるサイト(コンテンツ)はどのようなニーズを満たすものが多いのか?これも「言葉の解釈」と同様に、ターゲットとする検索クエリを選定する際に重要な観点になります。
例えば、「一人暮らし」という検索クエリで検索した際、2015年4月現在5枠が「一人暮らしのコツやテクニック」について書かれたコンテンツで、3枠が「一人暮らしにあった物件の一覧」で、1枠が「一人暮らし向けの家具の一覧」、1枠が画像検索となっています。
自身が持つコンテンツがどういう類のものかによって、順位を争う相手が変わってくるのです。「一人暮らしにあった物件の一覧」というコンテンツを保有している場合、そのコンテンツが既に上位表示されている同様のコンテンツと比べて、さらに上位に表示される理由があるかどうか、というのが比較のポイントになります。
誤解してほしくないのが、上位にいるサイトと「同じ」コンテンツを用意できれば、上位表示されるわけではない、ということです。Googleからすれば、検索ニーズを「同じ」だけ満たすのであれば、新しいコンテンツをさらに上位表示させる必要はないのです。先の例でいう「一人暮らしのコツやテクニック」について書かれたコンテンツで「一人暮らし」の上位表示を狙うならば、信頼性や専門性などの観点において既に存在するコンテンツ以上の情報価値を持たなければ、なかなか上位表示を実現することは難しくなっています(もちろん、コンテンツ内容以外にも様々な要素が絡むので一概には言えませんが)。
このように、検索クエリをGoogleがどのように解釈しているか、検索者の意図を何と判断しているかを調べることが、SEOでターゲットとするキーワードを選ぶうえで大切なポイントになってきます。
少し前の話になるのですが、2013年10月にラスベガスで行われたPubConというカンファレンスで、GoogleサーチクオリティチームのMatt Cutts氏がKeynoteに登壇しました。
2013年に行われたさまざまなアルゴリズムを振り返る形のプレゼンテーションだったのですが、その際に「“moonshot”changes」という項目で挙げられた変化が5点あります。
1. Knowledge Graph
2. Voice Search
3. Conversational Search
4. Google Now
5. Deep Learning
Googleの中でも革新的な変化とされた5点の中で異色を放つのが、最後に挙げた「Deep Learning」です。冒頭4つがユーザーとして自身で体験できる機能なのに対し、「Deep Learning」はそれら機能を支える根幹を担っているようなイメージです。
「猫を認識できるようになった」
ことで話題になったDeep Learningは、動画、画像、音声など、検索のさまざまな分野で活用されている、あるいは今後いっそう活用されていくことになると思います。Deep Learningについての詳細な説明は割愛しますが、「キーワード検索」においてもその影響は出てきています。
それが2013年9月にリリースが発表された「Hummingbird」というアルゴリズムであると私は考えています。
「Hummingbird」とは簡単にいうと、ユーザーが入力した検索クエリを、ユーザーの意図を汲み取った上で、より最適な返答ができるクエリにGoogleが勝手に置き換えて検索結果を返すようなアルゴリズムです。
Deep Learningにより、言葉と言葉の関係性についてより深く学習できるようになった結果、入力されたキーワード群からユーザーの検索ニーズを理解し、よりニーズに近しい類義語に特定のワードを置き換える、といったことができるようになったのです。
こういった言葉で説明をすると、何やらSEOが難しく感じられるかもしれません。ですが、実態はむしろ逆で、対策自体はある意味でとてもシンプルなものになりました。
検索エンジンに評価される(特定のKWで上位表示できる)コンテンツを作るにはどうしたらいいのか。それはキーワードに最適化することではなく、ユーザーニーズに最適化するように変わった、ということです。
それまではキーワードをどれくらい含んでいるか、といった観点で議論されていたものが、ユーザーの検索ニーズは何で、それに応えられているのか、といった議論に変わるのです。
ここ数年で起きた大きな変化のひとつが、Google以上にユーザーニーズに向き合わなければ上位表示ができなくなった、ということ。それはとても健全な変化だと私自身は捉えています。
今回は初回ということもあり、基本的かつ概念的な話に終始してしまいましたが、次回以降はより具体的な事例等を交えながら、SEOの現在地、そして近未来の絵を妄想していければと思います。