2019/12/17 Tue

連載:クリエイティブディレクター ”トオルに訊け!”

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ー vol.1:照れくさいけれど、マジメな話しましょうか?

田中 トオル Toru Tanaka

株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部
エグゼクティブクリエイティブディレクター

中橋 敦 Atsushi Nakahashi

株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部
ブランドクリエイティブ部門 局長 兼
クリエイティブディレクター

桑原 誠尚 Sena Kuwabara

株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 
ブランドクリエイティブ部門 
プランナー

田中トオルとは?

―改めて、トオルさんのキャリアを教えてください。
 
CAトオル:田中トオルです。大学卒業後に電通に入社し、クリエイティブ局でコピーライターとしてキャリアを始めました。
入社3年目に、電通でいう“CMプランナー”、要するに電波媒体担当のクリエイティブとして、まずラジオから始め、それから何人かの先輩につきました。杉山 恒太郎さんについたことが最大の転機で、厳しも優しく、様々なことを教わりましたね。
 
少しずつ競合プレゼンに勝ったり賞を獲ったりして、徐々に仕事を任され始め、そのうちCDになりました。電通でCDは部長と同じで管理職になります。
部長になってすぐに大きな賞を獲ったので、そのご褒美でカンヌ広告祭に岡 康道さんと一緒に見学に送り出してもらい、それから、数年後にカンヌの審査員を2年間勤めています。
(※カンヌ広告祭についてのコラム内容は次回Vol.2にてお伝えします!)
 
その後、電通を退職し、ワンスカイという電通の関係会社を設立。3年ほどやったのち、電通から離れて、GTという新会社を作りました。
 
GTは10年ほどやってましたが、そこからFacebook JAPANからお誘いを受けて、自分の会社も残しつつ、日本へのInstagram広告のローンチをやらせていただきました。そして2年くらい経って、サイバーエージェントからお誘いを受けて、今ちょうど1年経ったところです。
 
GTはすごく人に恵まれてましたね。GTを設立してすぐに、現PARTYの伊藤直樹くんがうちにきてくれて。彼はカンヌをいっぱい獲ってGT を有名にしてくれました(笑)。
僕が今思うのは、独立していろいろ経験できて良かったし、大変な時もありましたが、今はいい経験ができたと思っています。
―トオルさんの働き方や考え方が変わったタイミングとは?
 
CAトオル:簡単に言うと、電通にいたときは気付かなかったけど、“営業がいないとやはり僕たちの仕事は成立しない”ということを独立して身にしみて感じました。僕は電通にいたとき今と比べてわがままなクリエイティブだったと思います。
 
例えば、多田 琢くん(現TUGBOAT)は営業の経験があるから営業を大切にすることが大事だ、と知っているし、GTでは、伊藤 直樹くんが自分で仕事をとってくるプロセスを見ることができました。それは、すごいバイタリティだな、という印象です。彼は、すごく人に気を遣うし、とても勉強になりましたね。

サイバーエージェントに入社して
 
CAトオル:最初に二宮さん(当社子会社「6秒企画」代表)の横に座れたのがよかった。色々な人が二宮さんに相談しに来る様子をみて、いい会社だなぁと思いました。
 
で、誠尚君もそうでしたが、一緒に仕事したメンバー何人か、僕の元に、いきなり沢山のコピーを持ってきたのもびっくりしました。懐かしかった。僕も最初そうでしたから。
 
だけど、コピーをみてみると、何を言いたいのかが分からない。例えば、ビールならこういう感じのコピーだよね。と、あまり意識しないでバーッと書いてしまっている感じ。でも、「A社のBビールは何を言いたいの?」ということから考えないと、というか考えたほうが命中率は上がる、という話を何人かの方にしたのを覚えてます。
 
―それからコピーも沢山書いてる?
 
CA誠尚:書いていますね、引き続き。
 
CAトオル:書いているよね、それは本当に偉いです。僕が若かったときは業界が今と比べると乱暴だったから、「明日までに100本ね」みたいな世界です。多分そういうことを誠尚君は上の人に言われたことがないと思う、上の人も多分そういう経験がないから。
若いときはやはり数を多くやらないと。

僕が入社して、誠尚君はわりとすぐに声を掛けてくれたよね。誠尚君とは縁が深いというか。ありがたかったです。入社当時は、完全に転校生で、緊張していましたから。
どうしても通らなかったコピー作成を、3時間で仕上げクライアントに通るコピーに

―トオルさんのいまの業務とは?
 
CAトオル:やっている仕事は、いろいろです。企画も、プレゼンも、アドバイスも、トレーニングも、コピーライティングも。
 
先日、誠尚君が、「トオルさん、クライアントにコピーがどうしても通らないので書いてください」と来て。
「いいよ、いつまでに?」と聞いたら、「3時間後」と。
それで急いで、簡単にブリーフを受けて、久々にコピー脳を全開で、一生懸命書きましたね。
その後、「クライントにコピーが通りました!」と。よし、これで面目は保った、と。ほっとしました。(笑)
 
そのあとはその通ったコピーを基に、メンバーみんながすごくいい企画にして、最終的にはとてもいい動画も出来たよね。先方もそのコピーを気に入ってくれて、「今後もこのコピーで継続したい」と言ってくれて、安心した。
 
CA誠尚:今回トオルさんに書いてもらったコピー、僕ら序盤のディスカッションの中で出ていたワードにもあったんです。にも関わらず、そこにフォーカスを当てきれなかったのです。
この短時間で通っちゃうコピー作成ってすごいな、と思う一方で、あそこで見逃してしまっていたという悔しさがすごくありました。
 
先日、多田 琢さんに社内向けに講演してもらったとき、「6秒だろうが1分だろうが本質的には変わらない」という内容を多田さんが仰ってましたが、クリエイティブの力って、もちろん媒体などによって変わりますが、根本の部分は変わらないものなのかな、と最近個人的に考えています。

CDの最大の責務は、クリエイティブの着地点を示すこと

―クリエイティブディレクターとして大事なこと、プランナーとして大事なこととは?
 
CA中橋:トオルさんの印象に感じたことのひとつに、「ポイントがここだ」というところを見つけるのがとにかく、速い。ということ。それは、長らくCDとして様々なプロジェクトをやってこられた経験の積み重ねによって、その速さと正確さなんだとすごく感じるところです。
 
僕自身も役割として、クリエイティブディレクションという立場で入るプロジェクトも多いのですが、実はいろいろ自分の中でも葛藤している部分があって。
機会や発見を促すように後ろから支えていくほうがいいのか?それとも、前に立って引っ張っていく感じのほうがいいのか?と。
 
CAトオル:“クリエイティブディレクター”って、みんなやり方が違うと思うけれど、CDの最大の責務は、チームの、クリエイティブの着地点・目的地を示すこと”だと思っています。
 
僕はCDになってから気を付けているのは、まず目的地・着地点は決める。” ということ。「あそこに着地したいから、それに向けてそれぞれのポジションのクリエイターが考えてください。」というやり方が多いです。
 
先述の、3時間でつくったコピーの件もそうだけれど、コピーが決まることで、そのコピーに向けていろいろな企画ができるし、デザインができるようになりました。そういう意味で、進行がラクになるんです。そこの着地点が決まっていないと、毎回、一から着地点を作っていかなくてはいけないし、着地点が変わってしまうと、ブランド広告になりづらい。
 
クリエイティブディレクターであれば、目的地を示すことです。プランナーは、とにかく考え続けること、それが重要です。


―考え続けることによって、磨かれていく。ということですか?
 
CAトオル:そう。それを、繰り返すとだんだんと自分の作法が決まってきます
 
僕は随分長くやっているから、ブリーフが来たときに、「だいたい3日でできるな」「これはちょっと苦手だから1週間かかってしまうかな」などと感じます。
アイデアの出し方
 
CAトオル:それから僕が大切にしているのは、ルーティーンです。
イチローが例えばスパイクはいつも左足から履くみたいな。スムーズにいいアイデアが出たな、ということを思い返すと、ある共通項が出て来ると思います。僕は、自宅やファミレスとか机に向かって考えるのは苦手で、車を運転しながら音楽を聴いているときによくアイデアが出ます。
 
そして、もう1つ、誰と組むと上手くいくか。ということが重要だということに気付きました。
誰と組むかは、営業も、それからスタッフも。
例えば僕でいうと、多田琢君と組むとすごく上手くいったなとか、営業のBさんとの仕事はなんかいい感じで進められるなとか。もちろん多田君だけではなくて優秀な人はいっぱいいましたけれど、その中でも、あの人とは何か合わないな、という生理的な反応や直感、を僕は大事にしました。
 
それから、体調です。体調が整っていないといいアイデアが出てこない感じがあります。伊藤直樹君もすごくフィジカルで、体を鍛えている。もちろん、逆の人もいて社会人になってから走ったことがないというクリエイターもいます。
 
そういった、いくつかの条件が、5年10年やっているとだんだんルーティーンが決まってくる。それは多分、10人いたら10のスタイルがあるのではないかな。
 
そして、営業と一緒にブランド広告を作って、その成功体験を積み重ねることが必要です。
タフな案件であるほど、チームとして常に前を向き続ける
 
―サイバーエージェントで1年はたらいてみて、今どう感じてますか?
 
CAトオル:サイバーエージェントに来て、勢いがある会社ってこういうことなのだな、って思いました。中橋君のチームもそうだし、新人の人たちも、すごく熱心で、こちらが緊張するくらい。だから毎日会社に来るのが楽しみです。みんな親切だしね。
 
中橋くんや他のメンバーからすっかり影響を受けて、女房は「なんでそんなにナイキのスニーカーを買うの」って言う。そういうことも嬉しいです。
今でも覚えているけれど、最初に内藤さんの部屋で中橋君を紹介されて「僕ってやっぱり古いんだ」と思ったのは、高い腕時計をしていったら、みんなApple Watchなの。「すぐ買わなきゃ」と思って、今Apple Watchつけてる。
ROLEXだベンツだ、何だ、という世代ではない、というのがまず新鮮だった。
CAトオル:中橋チームはね、とても優秀。クライアントに対してすごく誠実で、悪いことを言わない。それは凄いなと思うし、さらにデジタルに展開する技術がさすがCAだなって感じました。
クライアントの悪口を言わない広告マンって意外と少ないんですよ。
 
CA中橋:愚痴に近いことを言わない、というのは個人的にも意識しています。
もともと僕はCAのキャリアスタートが営業だったので、経験上、ブツクサ言いながらやるよりもコミットしてやるほうが、結果としていい仕事に必ずなっているので、そう決めてやっています。
 
タフな案件になればなるほど、ネガティブな雰囲気に引っ張られやすくなる。そしてその芽が出ると、一気にチームが崩壊してしまう恐れが潜んでいる。それで何度か痛い思いをした経験もあったので、そういったタフな状況の中で頑張り続けるためには、常に前を向いておかなければいけないというところは、チーム作りとして意識しています。
CAトオル:若いから知らないかもしれないけど、「ひょっこりひょうたん島」というNHKの番組。あの歌詞が大好きで。「苦しいこともあるだろさ、悲しいこともあるだろさ。だけど僕らはくじけない。泣くのはいやだ 笑っちゃおう、進め〜 ひょっこりひょうたん島」そういう感じですよ、中橋チームを見ていると。


有志メンバーで始まった「トオル塾」

―定期的に開催されている「トオル塾」とは?
 
CAトオル:今朝もやってたけれど、新人の人たち向けに「トオル塾」を定期的にやっています。オフィシャルに始まったことではないけれど有志で。
そこで教えている新卒の人が、競合コンペに8戦8敗で、落ち込んでいたから、「何言ってるの。僕の記録は13戦12敗だよ、しかも3年目くらいの時に。まだ全然平気だよ。」と言ってたの。そして後日、報告がきて。「9戦目、最後に引き分けになった!」って。
 
よかった。8戦8敗、苦しい気持ちというのも分かるし。でも絶対、連敗が続くこともないといいましたから。それで引き分けになってよかったなって。
 
また違う新人の人に相談されたあるクライアントの案件があって。
クライアントからのオーダーが明確で、「これから販売するある商品を、売り切れにしてほしい」という注文。で、困ってしまって僕のところに来たんだけれど。
「まずこうやってこういうふうに提案してみたら」と二人で整理しました。
 
そうしたら、週が明けて会ったときに彼が「この週末で売り切れました!」って。これって、彼の勲章ではないですか。そうしたら多分、次にチャンスをくれますよね。素直にそうやって報告してくれるし。こういう場に立ち会えているのが、今、本当に、本当に、楽しいです。
クリエイティブも、営業やマーケと同じレベルでクライアントの広告効果に向き合うことが大事

今の課題とこれから挑戦したいこととは?

CA中橋:今、普通だな、って。もっともっと突き抜けていかないといけないのに。
突き抜けていくための大きな方向性は決めましたが、あとはどう実行していくか。その設計に向き合っています。
 
いい作品を作って終わり。というのは全然違うし、大事なのは、いかにクライアントの広告効果を出せるお手伝いができるか、ということ。クリエイティブも営業やマーケと同じレベル感で効果に向き合う事が必要だし、様々な手法が増えて複雑化している中、クリエイティブが何の役に立つのか?というところをきちんと突き詰めていく必要があると思っています。
 
広告の役割みたいなものが変わってきている中で、思考の範囲やチームとしての瞬発力、制作プロセス自体を根本から変えていかないと、進化しないまま、つまらないものになっていくのではないかという危機感を感じています。今はまだできていないので、この1年で一気に突き抜けたいと思っています。
 
―この1年、2020年内。
 
CA中橋:そうです。この1年での突き抜け方は、トオルさんと一緒につくっていきたいです。広告が元気だった時代の第一線を過ごしていらっしゃる方でもあるので、その知見やノウハウ、嗅覚というか、1番になるまでの距離間を冷静に判断できるのもトオルさんだと思ってます。
 
クリエイティブで突き抜ける、そこに対して現場で動くのは僕らが中心ではもちろんありますが、トオルさんと同じフロアにいてすぐに話す事ができるというこの環境に感謝しながら、トオルさんにどんどん絡んで、一緒につくっていきたいと思っています。
 
CAトオル:とにかく、いま、会社に来るのが毎日楽しい。
みんなのスピードがすごいなと思うし、チームと一緒になって考えることが、また、再び楽しい。「自分ラッキーだったね」と自分に対して言ってあげている感じですね。

「連載:クリエイティブディレクター ”トオルに訊け!”」
次回、 vol.2では、カンヌ広告祭を始めとする海外広告賞へのエントリーのキモや、
時代によって変わる広告クリエイターにとって大事なこと等をテーマにお伝えしていきます!



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取材・執筆: 加藤 貴子  (株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部  広報)

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