2019/9/20 Fri
ファンを増やすためのライブモニタリング ~これからのマーケティングにおける自社データの重要性~
柚山 慶介(Keisuke Yuyama)
株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 データ事業本部
マーケティングテクノロジー局 データマネジメントグループ
チーフコンサルタント
2018年、株式会社サイバーエージェントに中途入社。インターネット広告事業本部にて、企業の保有するデータ(1stPartyData)活用をミッションとしたチームの立ち上げを行う。
実際にクライアント企業のDMPを預かり、SQL・BI・MA・RPA・AD・2nd/3rd PartyDataなどの関連ツールやスキルをかけ合わせ、データの収集設計・クレンジング・マーケティング活用までをワンストップで行っている。
ー なぜ企業にとって「自社データ」が重要なのか?
マーケティングに関連するデータは膨大ですが、大別すると
・自社で直接取得しているデータ (1st PartyDataと呼びます)
・外部から取得したデータ (2nd/3rd PartyData)
になります。
双方に役割がありますが、広告主様に最初に着目いただきたいのは前者です。
なぜならそこにはお客様のことを深く理解することができる、「購買ログやアクセスログなどユーザーと最も近い接点データ」や「売上や利益をはじめとした最終的な意思決定に必要なデータ」が含まれているからです。
上記はツールのトレンドからも読み解くことができます。
「CDP」(カスタマー・データ・プラットフォーム)
「BI」 (ビジネス・インテリジェンス)
「MA」(マーケティング・オートメーション)
などが注目されていますが、
これらは、「ユーザーデータを中心に統合管理し」「意思決定できるよう可視化し」「施策の自動化や最適化を行う」といった場面で力を発揮します。
そして今後、今まで以上に企業が直接取得したユーザーデータが重要になってきます。
本コラムではその理由を踏まえ、これからのマーケティングにおける1st Party Dataの重要性についてお伝えしていきます。
ー なぜ自社で取得したユーザーデータが重要なのか?
様々なサービスや商品が目まぐるしく登場し、他社との差別化が難しくなってきている今、既存ユーザーの離脱防止は非常に難しくなってきています。しかしながら大抵の場合、企業の売上の大半は上位2-3割の既存ユーザーが生み出しています。
つまり、新規ユーザー獲得をしつつ、獲得後に「熱量の高いユーザー=ファン」をいかに増やしていくか、という双方が、今まで以上に重要になってくるのです。
ファンを増やすためには、ユーザーを理解し、企業・サービス・商品を好きになってもらうようなコミュニケーションを行うことが必要です。これらをオンライン・オフラインの多種多様なチャネルで実施するために、自社で直接取得し、情報取得・発信の許諾が取れたユーザーのデータが不可欠なのです。
ー マーケティングデータを統合し、現状のユーザーを可視化するために
データ統合と一言でいっても、手当り次第データを入れてもあまり意味はありません。マーケティングに必要なデータを、規模・粒度・鮮度に注意しつつ入れ、積極的に外部ツールと連携して活用する必要があります。
何よりも重要なのはマーケティング部門が主導となり、目的を明確に持った状態で進めることです。
先述のCDPはマーケターが使うことを前提に設計されており、データ統合・外部ツール連携を行う「箱」の役割を担います。
企業が保有するデータによりユーザー可視化の内容は異なりますが、基本的にはまず、売上上位顧客をファンとみなし、全体に対する割合や購入頻度を分析することから始めることが多いです。
そこから、サイト内行動や自社アンケートログを紐付け、他のユーザーとの差異を仮説ベースで検証し、施策とKPIに落としていきます。
当然、自社保有のデータだけではうまく発見できないこともあり、KPI自体を仮説で立て施策と並行しながら検証を行うことや、ソーシャルボイスなどの外部データをヒントにすることもあります。
ユーザーが何を求めているかを手探りで考えるのは至難の業ですが、データ統合が進めば進むほど「逆引き」的に考えることができるようになります。例えば既存ファンが、今までどういったサイト情報に触れていたかなどは大きなヒントになります。
ー ライブモニタリングでファン施策を「運用」する
ユーザーの熱量を上げるには中長期でのコミュニケーションが必要であり、各施策への評価も同時に行う必要があります。
これらのデータを自動的に更新し、意思決定を行うために必要なのがライブモニタリング環境の構築です。
モニタリングを行う内容は大きく分けて以下の3つです。
【1】施策に対する投資状況
【2】施策に対してユーザーIDが紐づくデータを元に行うミクロ評価
(施策に対するレスポンス率や施策前後の購買状況推移など)
【3】施策に対してユーザーIDが紐付かないものも含めた全体データを元に行うマクロ評価
(NPS等のアンケート調査やソーシャルボイスや売上推移など)
これにより各個別施策のPDCAと全体を通しての適切な投資が行われているかを、日次や週次で判断していき、施策そのものを運用してきます。
特に流動的な市場においては、意思決定の速さ自体が競合優位性に直結し、実際のプロジェクトにおいてもライブモニタリング環境によってPDCAの速度が大きく変わってきています。
ー データドリブンがこれからもたらすもの
ここまでは企業からユーザーへの情報発信がメインでしたが、IoTや5Gの普及をきっかけに、ユーザーと企業間の情報発信は双方向性の高いものになっていきます。
例えば、ユーザーデータを元にその場で調合されるサプリメントやスキンケアなどが登場してきており、企業からの情報に加え、直接的なユーザー体験(=UI/UX)がブランドイメージを強く形成していくサービスが増えていくことが予想されます。
いずれにしても、自社で保有するユーザーデータは、企業にとってもユーザーにとっても心地よいサービスを実現する上でますます重要なものになってきます。
最後に
マーケティングが複雑化していくなかで、意思決定と実行のスピードを上げるための手段としてデータの重要性は増していきます。
一方で進化のスピードも早いため、パートナー企業や外部ツールの力をうまく組み合わせないと、変化に対応することが難しい領域です。
サイバーエージェントは、データの分析からマーケティング施策の実行までを、ユーザーデータ保護の観点を含めて、真摯に取り組んでおります。マーケティングデータの活用にお悩みの方、新しい取り組みにチャレンジしたい方、是非ご相談ください。
お問い合わせ先
株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部
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