ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)の取引所を運営する株式会社bitFlyerでは、2025年4月よりサービスを開始した運用型地上波テレビCMサービス「スグリー」を用いて、国内初となる運用型によるテレビCMの広告枠入札・放送を実現しました。リーチ力の高い地上波テレビ網を通じてマス層の認知拡大を実現した取り組みについて、bitFlyerの萩原氏をお迎えし、当社のスグリー担当の濱口、動画広告領域の担当 井手とともに対談を行いました。
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萩原 正基
株式会社bitFlyer
事業戦略本部 マーケティング部 部長 -
濱口 健太
株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 動画本部 AdRMセールス局 マネージャー -
井手 美緒
株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 動画本部 Video戦略2局 マネージャー
マーケットの熱量に即応できる「運用型テレビCM」の可能性に着目
萩原氏:私はbitFlyerでマーケティング全般を担当しております。デジタル広告の運用については、以前よりサイバーエージェントさんにお願いしており、今回の運用型テレビCM施策も、その連携の流れの中で生まれたものです。
これまでの認知施策では、YouTubeやTVer、ABEMAなどの動画広告を中心に展開してきました。単に出稿するのではなく、各チャネルのリーチ効率やブランドリフト効果を定量的に検証し、費用対効果の面で最適な打ち手を模索することを重視してきました。
その中で、YouTubeは非常に高いコストパフォーマンスを発揮しており、bitFlyerの広告戦略においては一定の成果をあげてきたと認識しています。ただ、複数のチャネルで継続的に検証を進める中で、テレビCMはリーチの広さに加え、態度変容などの効果面や費用対効果の観点から見ても、極めて高いパフォーマンスを発揮できると判断しました。
そうした中で、サイバーエージェントさんが運用型テレビCMサービス「スグリー」の取り扱いを開始されたという記事を目にし、「この仕組みなら、さらにタイミングと効果を最適化できる」と強く感じ、すぐにご相談させていただきました。
CA濱口:私はサイバーエージェントで「スグリー」のセールスを担っています。スグリーは今春4月から始まったサービスで、テレビCMをデジタル広告と同じように運用することを可能にしました。入札や入稿などの操作が全てオンラインで完結すること、インプレッション単位で取引ができることが特徴です。
今回、bitFlyer様と取り組んだ本案件が日本初のスグリーでのテレビCM放映となりました。
CA井手:私はサイバーエージェントで動画領域の担当をしています。スグリーは、放送の前日まで発注が可能なことに加え、放送の20分前までクリエイティブの変更ができたり、放送後最短15分でレポートを確認できたりと、これまでのテレビCMでは考えられないスピードでPDCAを回すことが可能になっています。
萩原氏:従来型のテレビCMでは、広告枠の多くが放送の約1カ月前などに事前購入する「予約型」が主流であり、出稿の柔軟性に乏しいという課題がありました。当社のように、市況の動きに応じて即時性が求められるビジネスにおいては、情報を届けるタイミングが鍵になります。
スグリーは、その点で理にかなった仕組みだと感じました。最短で翌日放送の枠を買い付けてテレビCMを出稿できるため、市場の熱量が高まった瞬間を逃さずに、お客様へのリーチを最大化できる点、柔軟性と投資効率を両立できる点が、スグリーの大きな魅力だと考えています。新しい仕組みであるスグリーに、他社に先駆けて取り組むことは、当社としても挑戦的ではありましたが、運用面・効果面ともに高い可能性を感じたことが決め手でした。
CA濱口:スグリー販売に向けて様々な企業様にご案内させていただいておりましたが、前例がない中で、一番最初にやりたいと仰ってくださったことに感謝しています。
テレビCMの運用がシンプルになり、効果も分かりやすくなった
萩原氏:正直なところ、これまでのテレビCMにおける効果指標は不透明な部分が多く、広告主であれば誰しもが「デジタル広告のように数値を可視化しながら運用したい」と感じていたのではないかと思います。そうした中で、今回の施策では、テレビCMであってもデジタル広告と同じ発想で買い付け・運用ができるという点が非常に画期的でした。
また、テレビCMの素材入稿に関しても、これまでは各テレビ局に対して個別に送付する手間や工数がかかっていました。しかし、スグリーでは、一度素材入稿すればそれが各局に展開される仕組みになっており、オペレーションの面でも大きな効率化が図れたと感じています。
CA濱口:デジタルのメディアプランと横並びで、テレビCMもプランニングできるようになったことの価値は大きいですよね。そこに評価の透明性もついてくるので、私たちが元々デジタルで行っていたことにテレビメディアが寄り添ってきてくれているような、新たなデジタルメディアが我々のプランニングの中に入ってきたような感覚があります。
CA井手:運用を開始したばかりの4月は、日々入札状況の確認や、翌日の入札準備をしていました。日本テレビ様にご協力いただきながら、朝の時間帯では何回見せるのがいいのか、ゴールデンの時間帯でいかにインパクトをつくりにいくのかなどを、予算の消化状況と照らし合わせて調整していました。
インプレッションリーチの数値が毎日、毎時間ごとに出てくるので、その数値を可視化した上で、デジタル広告のように運用方針を日々変えていくことができました。これは今までのテレビCMの運用ではできなかったことです。
萩原氏:本来、テレビもデジタル広告と同じように、数値に基づいた運用ができるはずだと考えています。とはいえ、これまでは業界全体としてそうした仕組みが十分に整っておらず、広告主から見ると効果の見えづらさが課題のひとつでした。
しかし、スグリーのような画期的な仕組みが登場したことで、テレビCMにおいても数値をベースにした透明性ある運用が現実のものとなりつつあります。こうした仕組みの普及が進めば、広告主としてもより納得感を持ってテレビCMを活用できる時代が訪れると期待しています。

注視率と効果を紐づけることで、より効果的な広告出稿を可能にしていく
萩原氏:一方で、現時点ではスグリーで扱える広告枠が限られていたり、入札がマニュアル操作であったりと、まだ改善の余地があると感じています。出稿の自由度という点では、たとえばデジタル広告のように、あらかじめ予算とターゲットを設定するだけで自動的に配信が最適化される、といった仕組みはまだ整っていません。こうした運用の柔軟性については、今後さらに改善が進み、将来的にはテレビCMもデジタル広告の世界観に近づいていくことを期待しています。
これまでのテレビCMは、テレビ局が提示する視聴率予測に基づいて事前に枠を予約するという形式が主流で、柔軟な運用は難しいものでした。しかし、実際には出稿したいタイミングは情勢によって日々変わるものですし、視聴者によってはCMをスキップしている可能性もあります。
そのため、「そのCMが実際にどれだけ見られたのか」を把握する手段がなく、出稿金額に対しての効果を正確に測定することが難しいという課題がありました。
また、全体の認知率が上昇したという結果をテレビCMの効果と見なすケースもありますが、出稿単価や配信内容が、どのように認知向上に結びついたのかが可視化されない限り、広告主として納得しにくいというのが実情です。
現在は、注視率のような新たな視点から効果を捉える取り組みも始まりつつあり、一定の前進を感じていますが、今後さらにその精度が高まり、出稿の根拠としてより強い説得力を持つ仕組みが広がっていくことを期待しています。
CA井手:運用型テレビCMの効果を高めていくという観点では、今後素材の出し分けなどもデジタルの動画広告と同じようにやっていきたいですね。ただ、テレビCMでは必ず考査がかかるので、デジタルの動画広告のスピード感にはまだ少し追いつきません。
また、萩原様のお話の通り、ターゲティング配信ができないので、番組の視聴者層を想定して出稿を検討してく必要もあります。今後は、競合の広告出稿も増えてくると思うので、単価があがっていくことも想定しながら、しっかりと手を打っていきたいと考えています。
CA濱口:当社としても、効果測定をよりシャープにしていくことを目指しています。例えば現在、注視率計測を行うREVISIO様と協働しながら、テレビの前に居る人たちが、テレビを注視していたのかという検証を始めています。
そして、注視率が第一想起や態度変容という広告効果に紐づいているのかを、広告枠ごとに評価しています。今後、広告枠ごとに注視率の違いがあれば、注視率の高い枠に入札を寄せていくという運用も可能になります。
こういったテクノロジーを組み合わせて、テレビCMの効果測定を、より分かりやすく、より効果的にする取り組みを今後も続けていきたいと思います。

REVISIOを用いた注視率調査のイメージ
テレビCMのデジタル運用化の先に、重要となるのは広告運用の「実行力」
CA井手:これまで話してきた通り、今後のテレビCMは、効果と紐づいていることが必須になってきますよね。現状追っているインプレッションリーチの数は、その先のブランドリフトやファネルの展開につながる一歩手前の指標です。本来は、ブランドリフトにつながる番組は何なのか、時間帯がいつなのかということを、より細かく分析していくべきだと考えています。
スグリーの管理画面上でそれができなかったとしても、弊社が介在する価値として、その分析をしっかり行っていきたいです。それにより、テレビCMがより開けた世界になっていくのではないかと思います。
CA濱口:現在スグリーで入札できるテレビCM枠は日本テレビ様のみですが、来年以降は東名阪の日本テレビ系列、その翌年は福岡や札幌の日本テレビ系列へも広がり、更に他のキー局が加わる可能性も見えてきています。エリアと入札可能枠が広がっていくと、運用における施策の幅も増えていきます。
態度変容に関して言えば、番組のジャンルごとに効果の高いクリエイティブを見極めることもできるようになります。さらには、番組に出演するタレントさんごとに、態度変容の効果が高そうな商材やクリエイティブの出し分けを考えることができるかもしれません。
また、エリアに合わせて、CMを見た人が自分ゴト化できるクリエイティブを配信することもできるようになります。効果に直結していく運用手法を明らかにして、広告効果にコミットしていきたいと考えています。
CA井手:今後、さらに効果を可視化できる範囲が広がっていくことで、お客様にとってより良いマーケット環境を提供できるようになっていくと思います。このスグリーの仕組みは、マーケットにおける大きなゲームチェンジャーになると感じてますし、だからこそ、代理店としての技量がよりシビアに試されるとも思います。
定量データの読み解き方や、そこから導き出せる施策の質が重要になってきます。当社は、デジタル広告でそのデータの可視化や読み解きをしっかりとやってきたという自負があります。だからこそ、お客様から運用型テレビCMのご相談が増えていくのではないかと予測しています。大きな責任感を感じていますし、精一杯取り組んでいきたいと思います。
CA濱口:テレビCMが運用型になっていくということを考えた時に、デジタル広告の運用を長年してきた経験からすると、最終的には「実行力」が重要になると考えています。
検索広告やディスプレイ広告ほどではありませんが、テレビCMでも動かせるレバー(運用において調整可能な要素)が増える中で、その運用をどう実行しきるかが重要になります。長年培ってきた当社のオペレーション体制や、裏側での細かな調整力が強みになり、効果をお返しできる下支えになると考えています。

今後の展望
萩原氏: これまでのテレビCMにおける最大のネックは、やはり「予約型であること」だったと感じています。広告を出したいと思ったタイミングですぐに出稿できる――その柔軟性が担保された世界観は、非常に理想的だと思います。
こうしたニーズは、金融業界に限らず、市況の変化が激しい業種に共通していると思います。さらに、リアルタイムかつフェアな競争が行われる入札方式が採用されている点も、広告主として非常に納得感が高く、透明性のある仕組みだと感じています。
だからこそ、先ほど濱口さんからお話があった、今後の「入札可能枠の拡大」には大きな期待を寄せています。より多くの枠が柔軟に運用可能になることで、この新しい広告手法の価値はさらに高まるはずです。
そして、サイバーエージェントさんは、デジタル広告専業の代理店として確かな実績を築かれてきたと認識しています。これまで培ってこられた運用ノウハウやスピード感が、今後はテレビCMという従来型メディアの世界にも波及していくことを心から期待しています。そして、その中で、デジタル広告で築かれてきたイニシアチブが、テレビCMの領域でも存分に発揮されていくことを楽しみにしています。
CA井手:ありがとうございます。サイバーエージェントとしては、プランニングの幅が広がっていくことへの期待感と、同時に緊張感もあります。潜在層から健在層までのマーケティングファネルをどう攻略していくのかという議論の中で、これまでなかなか取り扱えなかったテレビCMのようなマス広告が選択肢に入るようになりました。
まさに技量が試されるところだと思うので、新しい戦略や戦術を生み出した上で、マーケットの成長に合わせて、私たちもレベルアップしていきたいと考えています。
特に、トータル施策の可視化がキーだと思っています。これまで誰も可視化できなかった部分や、可視化したがらなかったことを開いていくことがサイバーエージェントの価値なのではないかと。
たとえ、可視化したことが必ずしも弊社に有利に働かなかったとしても、可視化の手法を明確にご提案して、きちんとオープンにしていく。これまでやってきた、運用に向き合う、効果でお返しするというスタンスは変えずに、公平性を担保するような働きをすることで、それを弊社の強みにしていきたいと思っています。
CA濱口:まさにそうですね。これまでテレビCMの話をしてきましたが、デジタル広告も含めて、多々ある生活者との接点の1つなのだと思います。だからこそ、全体を俯瞰した上で効果が出るタッチポイントがどこなのかを見極め、個別最適で効果を創出することが重要です。
クリエイティブや、広告配信の運用、そしてレポートの可視化など、総合的に貢献していかなければなりません。その精度を上げていくことで、お客様の事業に貢献できるような運用をしていきたいと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
萩原氏:ぜひ、今後もこうした取り組みを通じて、当社としてもより良い広告出稿の形を模索し続けていければと思っています。引き続き、どうぞよろしくお願いします。

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記事制作・撮影:
株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 広報
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