

株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 メディア局 マネージャー
堤 雄一郎
新卒で入社した某化粧品メーカー勤務を経て、美容・コスメクライアントのWebプロモーションを専門で扱う、サイバーエージェントグループの広告代理店に入社し、営業職として従事。 その後、サイバーエージェント インターネット広告事業本部に移り、現在に至る。
「最近 “キテる”メディアって何?」
当社インターネット広告事業本部で、いわゆる予約型広告を中心に、各メディアの広告仕入れを担当している私のところには、社内外の方から、タイトルのようなざっくりとした質問をいただく場面が少なからずあります。
効果の良い広告メニューを探していたり、市場の動向についてリサーチをしていたり、はたまた単なる業界的な挨拶の一環であったりと、質問者の方の意図は様々ですが、この質問そのものは、インターネット広告が本格的に立ち上がってからというもの、普遍的に存在していると言えるでしょう。
ただ、その答え、つまり“メディアのトレンド”については、以前と比較してここ数年で根本的な変化が起こっています。その変化は、みなさんもご存じのとおり、スマートフォン(=スマホ)の急速な普及によってもたらされたものです。
▼PCからスマホにシフトするインターネット利用デバイス

この図は、マス4媒体からインターネットまでを合わせた、1日のメディア接触時間の推移(週平均、時系列、東京地区)です。
まずは、一人あたりの総メディア接触時間が350分前後であまり変わらない中、インターネットに消費される時間の割合がどんどん増えてきていることが見てとれます。
上記に連動して、我々が主戦場としているインターネット広告も、全広告メディアの中で最も高い成長率で近年伸び続けているわけですが、更にこの図において注目すべきなのが、インターネット接続をしているデバイスの内訳がここ数年で大きく変化してきているという点です。
2009年時点ではインターネット接続デバイスの20%程度だった携帯電話(フィーチャーフォン+スマホ)からの接続時間の割合が、わずか4年後の2013年には約2倍の約40%まで引き上がっています。
これは、その期間中における急速なスマホシフトに伴う変化であり、フィーチャーフォン時代には一般に習慣化していなかった携帯端末からの長時間のインターネット接続がスマホではごく当たり前になっていることに起因していると言えます。
以降もその割合は伸び続けており、別の調査では特に10代など若年層を中心に、徐々にスマホからのインターネット接続時間がPCを上回り出している状況です。
外出先でのモバイル通信環境も着実に整備改善されていることも相まって、この流れはより加速する一方と言えます。
「ブラウザサイト」から「スマホアプリ」へ
そういったスマホの浸透の流れを受け、随時新しく立ち上がる「メディア」にも大きな変化が生まれました。それは、かつては「PCのブラウザサイト」だったものが、やがて「スマホ(中心)のブラウザサイト」となり、最近では主に「スマホのネイティブアプリ」になっている、という変化です。
当然今でも多数のユーザーを抱えた有力なPCメディアも複数存在しますし、利用機会も多いのですが、そういったメディアも「スマホシフト」、もっと言えば「スマホアプリシフト」を最重要課題として推進している状況です。
それでは早速ここからは、「最近“キテる”メディア(=アプリ)」をジャンル毎にいくつかご紹介します。
①ニュース・キュレーション系
■代表的なアプリ
・Yahoo!ニュース
・Gunosy
・SmartNews
・LINE NEWS
・Antenna
・MERY など
各アプリ、テレビCM大量露出などもあり、幅広い世代や職業のユーザーに馴染みのあるジャンルと言えます。
広告メディアとしてこれらを捉えた場合、「硬軟幅広いオールジャンルでのニュースアプリ」においては、様々な業種の広告主を集めるためにも、MAUやDAUといったアクティブユーザー数の拡大によって広告在庫の最大化を図ることが、まずは重要視されます。
一方で「ビジネスマン向けのニュースアプリ」や「女性向けのおしゃれなトピックスアプリ」といった、ターゲットを明確に設定しているアプリの場合は、ターゲットに刺さるコンテンツやUIによってユーザーをファン化させることで、ある程度の規模感を出しつつも、特にユーザーの質を高めることがポイントになっていきます。
②バーティカル(=ジャンル特化型)系
■代表的なアプリ
・iQON(ファッション)
・Money Forward(資産管理)
・Studyplus(勉強)
・Wantedly(転職) など
このジャンルには、大多数の人にはあまり馴染みが無いものの、ある特定の層(受験生やファッション感度の高いF1女性、など)では、実は多くの人が使っているor知っている、といった「隠れ定番」的なアプリが存在します。
このジャンルの代表的なアプリに共通するポイントとしては、特定の層に合わせた情報を集めたり、機能を充実したりといった基本的な部分に加え、ソーシャル要素をうまく絡めてユーザーの参加感を高め、利用頻度を上げられるような作りにしているかどうか、という点が挙げられます。
一方で広告メディアとして捉えた場合、ジャンル特化しているが故に、特定の業種からの出稿は集めやすいものの、逆に他業種を取り込みづらく、また規模感が出しづらい、という側面があるため、一部アプリを除いてまだまだ広告収益化はこれからというケースも多いように見受けられます。
③動画系
■代表的なアプリ
・ツイキャス
・Vine
・MixChannel
・C CHANNEL(本稿執筆時点ではまだWEB版のみ。アプリ提供は今夏予定とのこと) など
女子高生や若者など、スマホに特に親和性の高いユーザーを中心に、今爆発的に広まっているのがこのジャンルです。
PCブラウザ中心の時代から、一般ユーザーが動画を自分で撮って流したり、中継したりといったことはされていましたが、発信者にはそれなりの機材や知識が必要とされることもあり、どうしてもコアな層の楽しみに留まっていました。
それが今では、スマホのカメラで撮った素材を、そのままスマホでアップロードしたり、そのまま中継したりすることが容易にできるようになったため、ライト層も取り込み加速度的に流行するに至っています。
実際にこれらアプリに上がっている動画を見ると、一般の若者による芸人顔負けの面白動画や、高校生カップルがキスしたりハグしたりといったイチャイチャ動画が普通にバンバン公開されており、団塊ジュニア層である筆者からすると色んな意味で時代の流れを感じ、ただただ衝撃を受けるばかりです。
それは余談として、このジャンルはまだまだ伸びそうな一方、代表的なアプリがまだ広告販売をしていない、もしくは販売開始したばかりという段階ですが、感度の高い企業ではすでに、若者向けのマーケティングのために一部のアプリに動画を作成、公開するといった動きが出てきており、その動きは今後も加速していきそうです。
④コミュニケーション(メッセンジャー)系
■代表的なアプリ
・LINE
・Facebook Messenger
・WhatsApp
・WeChat
・Viber など
かつての「後でメールちょうだい」が、今は「後でLINEして」といった具合に、このところ、日常的なユーザー感のやり取りにおいて、このジャンルのアプリが従来のブラウザメールやキャリアメールにどんどん置き換わっている感があります。
LINEやViberのような電話帳派生のものと、Facebook Messengerに代表されるSNS派生のものに大きく分けられますが、どちらも携帯キャリアに縛られないという共通の点において、コミュニケーションにおけるユーザーの利便性を飛躍的に高めたことが、その成功の要因だったと思われます。
またこのジャンルは国や地域毎にシェアに大きな違いがあるのが特徴的ですが、日本においてはLINEが圧倒的なシェアを獲得しており、広告メディアとしても急速にその規模と影響力を拡大しています。
独断ではありますが、代表的な「最近“キテる”メディア」を紹介させて頂きました。
「ほとんど知ってるよ」という方もいれば、「知らないものもいくつかあった」という方もいらっしゃるかと思いますが、どのアプリもそれぞれ個性があり、多くのユーザーの心を掴んでいるだけに、その使い勝手や機能などに関心する点が多々あります。
もしまだダウンロードしたことのないアプリがあれば、是非一度実際に触ってみて、純粋にいちユーザーとして楽しんでみてはいかがでしょうか。
また、マーケターの方は、まずはそういったユーザー視点で各アプリを利用してみながら、自社のマーケティング活動にどのように活用できそうか想像を膨らますのもまた楽しいかと思います。
そして、もし近日中に、「最近“キテる”メディアって何?」と質問されるようことがあった際に、本コラムの情報が少しでもお役に立つようであれば幸いです。