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【サイバーエージェントクリエイティブDAY】千原 徹也、関根 江里子|「ハラカド」から広がるカルチャーの交差点

~原宿カルチャーを未来へ、銭湯を100年先まで。クリエイティブで紡ぐ未来~

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「サイバーエージェントクリエイティブDAY」

当社インターネット広告事業本部 クリエイティブ部門にて、様々な領域の第一線で活躍をされている豪華なゲストの方々をお招きしお話をお伺いする社内クリエイター向けイベント「サイバーエージェントクリエイティブDAY」を2025年3月11日(火)に当社 極AIお台場スタジオにて開催いたしました。

第3回目となる今回も、様々な分野から特別なゲストの方々にご登壇いただき、クリエイティブ部門メンバーをはじめ、一部の営業職社員も含めて200名超のメンバーが参加しました。
今後も、テクノロジー、クリエイティブ、エンターテインメントなど幅広い領域で様々なパートナーのみなさまとの取り組みを通して、インターネット広告の新しい価値を生み出す挑戦を続けてまいります。

今回ご登壇いただいた5名のゲストの講演内容を全4編にてお届けします。
 

ご登壇者様 ※ご登壇順

第1編
石川涼 様(株式会社せーの 代表 「#FR2」創設者)
熱狂こそが、ブランドの価値を決める 〜どこでも買える時代に選ばれるブランド戦略〜
http://www.cyberagent-adagency.com/event/874/

第2編
松村宗亮 様(茶道家  SHUHALLY代表)
茶道から読み解くクリエイティブの本質 〜伝統と革新から生まれる創造力〜
http://www.cyberagent-adagency.com/event/875/

第3編
千原徹也 様(株式会社れもんらいふ代表)、関根江里子 様(株式会社小杉湯 副社長 / 株式会社ゆあそび 代表取締役)
http://www.cyberagent-adagency.com/event/938/
「ハラカド」から広がるカルチャーの交差点 ~原宿カルチャーを未来へ、銭湯を100年先まで。クリエイティブで紡ぐ未来~

千原 徹也(ちはら てつや)

アートディレクター/株式会社れもんらいふ代表

千原 徹也(ちはら てつや)

1975年京都府生まれ。2011年に、デザイン会社れもんらいふを設立。広告、ブランディング、CDジャケット、ドラマ制作、MV、CM制作など、さまざまなジャンルのデザインを手掛ける。映画監督としての作品「アイスクリームフィーバー」が2023年7月に公開。 2024年には、東急プラザ原宿「ハラカド」に、事務所を移転させ、オープンな場所でのコミュニティ、ショップ、スクールなどが融合した新しい形のデザイン会社に取り組んでいる。

関根 江里子(せきね えりこ)

株式会社小杉湯 副社長 / 株式会社ゆあそび 代表取締役

関根 江里子(せきね えりこ)

1995年生まれ。上海生まれ東京育ち。2020年に株式会社ペイミーに入社し、同年末、取締役COOに就任。2022年に銭湯経営を目指し独立、小杉湯2号店目である「小杉湯原宿」のプロジェクトに参画したことを機に、株式会社小杉湯に入社。2024年4月に小杉湯原宿が開業、銭湯と合わせてフロア一帯のプロデュース・運営を担う。Forbes NEXT100選出。

千原徹也さんのれもんらいふでの活動

千原さん:現在、AIがどんどん発達しています。ここから先、AIがほとんどの仕事を奪ってしまうと思いますが、AIはある種、今までのアルゴリズムや蓄積したデータをベースにして今を解決する答えを出しますよね。でも、AIには10年、20年後のブランディングはまだできません。これからは、ロジックやアルゴリズムでは到達できないような領域でブランディングや価値を生み出すことができるクリエイターになる必要があるなと感じています。

そんな思いや、これからの自分のあり方への迷いを抱きながら、2023年に「アイスクリームフィーバー」という映画を作りました。グラフィックデザイナーとして映画作りに挑戦するんだという意気込みもこめて「映画制作をデザインする」というキャッチコピーを作り、映画を軸に、アーティストやアパレルブランド、商業施設、雑誌、広告など多くの企業や人を巻き込みながら、様々な領域とのコラボレーションを展開しました。映画のパンフレットを雑誌として本屋に置いたり、アパレルとコラボした商品を全国で販売して映画のPRに繋げるなど、映画作りと共に、新たな座組作りも実現することができました。

また、カンヌ映画祭にも参加をしたことで、海外での上映や評価の機会も得られるようになり、また、この海外での経験を通じて、日本の映画産業の課題を感じることになりました。人口が多い日本では、国内市場に特化しがちで、世界を意識したマーケティングが不足しており、世界への発信力が弱いと痛感させられる経験でした。

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千原さんの作品

ハラカドで生まれる偶然の創造

千原さん:2024年4月、原宿の中心に開業した「ハラカド」は、多様な人々の感性を刺激する、新たな原宿カルチャーの創造・体験の場をコンセプトとする商業施設で、コンセプト策定や運営方針の設計から関わらせていただいています。

先ほどお話した映画「アイスクリームフィーバー」をきっかけにカンヌ映画祭に参加したことで、日本のデザイン・文化が世界に繋がるようになるにはどうしたらいいかを考えるようになりました。もっと世界に広げていくことを考えたとき、原宿という場所が世界に繋がるのではないかと思い、ハラカドでは「クリエイティブ」をコンセプトとし、その中に自分のデザイン事務所を、誰でも訪れることができるオープンな状態で作ることを考えたのです。

デザインは絵作りではなく、コミュニケーションだと思っています。一般的には事務所を借りて、パソコンでデザインができて、メールや電話で仕事の依頼を受け、打ち合わせをする、という固まったフローがあれば成立しますが、そのフローの時点で何が起きるかがもう決まっている状態ですよね。そうではなく、その場にたまたま居合わせた人と話をしていたら仕事の話になった、デザイン案が膨らんでいった、新しいアイディアが生まれた。そういった偶然のコミュニケーションから生まれ、広がっていくデザインやクリエイティブがありますし、僕はそれこそが面白いと思っています。

なので、ぜひハラカドに気軽に遊びに来てください。僕は3階のれもんらいふの事務所に普通に座って仕事をしています。ハラカドで偶然僕と会って、コミュニケーションをして、そこから生まれる面白いものがあるかもしれません。そんなことが起きるのを楽しみにしています。

銭湯というインフラを永く残したい

関根さん:私はハラカドの地下1階にて小杉湯原宿という銭湯とチカイチという銭湯に入らない方にもご利用いただけるフロアを運営しています。前職では金融スタートアップの経営を経て、小杉湯に入社をして4年目になりました。

小杉湯は本店が高円寺にある銭湯で、今年で創業92年になります。今ではほとんど見られなくなってしまいましたが、建物は神社仏閣のような宮造りになっており、登録有形文化財にもなっています。小杉湯の名物は44度の熱いお湯と16度の地下水の水風呂に交互に入る温冷交互欲です。お湯と水に交互に入ると体の力がゆっくり抜けていって緩まり、一日の疲れがスッと抜けるような感覚を感じていただけます。

銭湯というとご高齢の方や男性が多く行く印象があると思うのですが、小杉湯本店の客層は20代から80代まで幅広く、30代以下の方が半分を占めています。来客数は平日600人、土日が1,100人、年間で24万人に訪れていただいています。特徴的なのが年齢構成で、男女比率は6:4の割合です。多くの銭湯では男性用の設備に偏りがちですが、男女で全く同じ大きさの脱衣所と浴室をつくっていて、結果として他の銭湯よりも多くの女性に来店いただけるようになりました。

人々のあたたかい繋がりと街の循環、そしてインフラであった銭湯ですが、ピーク時に都内で2,700件あった銭湯は最近では420件ほどまで減っています。私たちはその銭湯を永く営み続けることを目標としています。どの時間に行っても若い方からお年寄りまでいる、性別や何かの基準で線を引かない、そんな誰にも閉じない開かれた銭湯であり続けることで、皆さまの思い出の中に残していきたいと考えています。

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小杉湯外観

小杉湯原宿とは

関根さん:銭湯という業態は、唯一残っている物価統制令で入湯料が550円と決められており、事業としては厳しいビジネスです。さらに20年に一度、約2億から3億円かかる大規模修繕が必要になります。今、多くの銭湯はこの資金繰りのために土地を売却するか、閉業を選択せざるを得ない状況になっています。

そこで、私たちは小杉湯を歴史あるこの建物のまま続けていくために、新しいビジネスモデルとして小杉湯原宿をオープンしました。小杉湯原宿も入湯料は550円です。人通りが多い原宿でも入湯料だけでは事業として成立しません。そのため地下1階には、銭湯だけではなく、誰でも思い思いに過ごせる畳スペースを作り、この銭湯を含めた151坪のフロア「チカイチ」全体をプロデュースしています。
「チカイチ」では、銭湯でしかできないプロモーションの形を提案しています。ただ広告をするのではなく、銭湯の中で実際に商品を使ってみていただくような体験型のPRを実施しています。企業とのコラボレーションにおいても考え方は銭湯と同じで、ターゲットを絞って何かをするのではなく、誰にでも楽しんでもらえるように、「広告」ではなく「体験」が前にくるように、あくまで銭湯として、そこから大きく温度感を離したPRは行わないと決めています。

銭湯はただのインフラで、それ以上でも以下でもありません。銭湯からは何も発さない、真っ白な存在であることで、誰かにとっては人生の居場所になっていたり、特別な価値のある場所になり得るのだと思っているんです。私はよく「洒落臭い」という言葉で表現するのですが、私たち自身についても必要以上にお洒落に、高尚に見せようとしないように心がけています。「洒落臭いことはしない!」を合言葉に、銭湯的な考え方や価値をこれからも大切にしていきたいと思っています。

ハラカドでの2年目に向けて

千原さん:ハラカド開業から1年が経ち、もっと原宿に残していきたいものや引き継いでいかないといけないものが見えてきました。原宿という街を、もっとカルチャーの街として継承していきたいですね。これは何年もかけてやっていくことだと思っていて、そのベースを1年かけてようやく作ることができたと思っています。そして、ハラカドの中だけで留めるのではなく、この原宿という街からクリエイティブやそれに関わる人たちが面白いアーティストになっていくような、そんな場づくりを広げていきたいです。

関根さん:私たちの目標は、100年続く銭湯を作ることです。最初の10年間で本当の価値が見えてくると考えているので、売上を無理に上げたり、SNSで過度に注目を集めるのではなく、「上質な横ばい」を目指し、焦らずに丁寧に事業を育てていきたいと思っています。

ハラカド2年目は、銭湯的な考え方やその価値を地下1階以外のフロアにも展開しながら、よりハラカドに関わっていきたいですし、原宿の街へも表現を広げていきたいですね。

今年の冬に向けて新たな企画構想をすでに進めていますので、ぜひ小杉湯原宿に実際に足を運んでいただき、それを感じていただけると嬉しいです。

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