2025年7月、当社のクリエイティブ制作スタジオ「極AIお台場スタジオ」にて、日本を代表する企業のCMOを中心にマーケティングに携わるゲスト約70名をお招きしたイベント「Brand Leaders Collective」が初開催されました。本イベントは、Comexposium Japan(ad:tech tokyo事務局)が企画、当社とThe Breakthrough Company GOが参画サポートし、豪華ゲストスピーカーと10名のクリエイターの方々が登壇。トークセッションやクリエイターによるプレゼンテーションが行われました。
■キーノートセッション:広告とクリエイターの未来
キーノートセッションでは、キットカットのマーケティングなどで知られる、元ネスレ日本株式会社 代表取締役社長兼CEO・高岡浩三氏が登壇。「広告とクリエイターの未来」というテーマに対し、「企業のマーケターたちが、“新しい現実”を見つめる必要がある」とお話されました。
人口減少している国のなかで、ハッピーになる方法は……
高岡氏:
いろんな講演会で“マーケティングとは何だと思いますか?”と問いかけるようにしてるんです。でも、だいたい誰も尻込みして答えられない。
マーケティングとは何か? 僕の答えは、顧客の問題解決によりもたらされる付加価値を創造するプロセスとその活動。
たとえば、ウォシュレット。あの問題解決の価値は、実際に体感したことがないとなかなか伝えられないですよね。一説によると、世界で人気が急上昇したきっかけは、実はコロナウイルスによって衛生観念が高まったからとも言われています。それを広めたのも広告ではなく、インフルエンサーたちの口コミ投稿だと。
つまり、問題解決をすることができる商品はあるのだから、それを使って付加価値を創造していかなければならない。クリエイターの皆さんの時間のかけどころはたくさんあるのに、マーケティング側にその理解が浅いという課題を感じています。
そこを突破するためには、新しい現実を見なければいけない。人口が減っているという現実がある国のなかで、今までみたいに広告を出して売上至上主義ではいられない。利益を上げなければみんなの給料も上がらない。
こうやったらもっと稼げますよは、新しい現実を見つめ、皆さんのクリエイティビティを発揮していくことから生まれるはず。そうすれば、みんながハッピーになれるはずです。
■スペシャルセッション:マーケティングの使命を考える
さらに、スペシャルセッションでは、数々の広告を手掛けてきたクリエイティブ・ディレクターの古川 裕也氏、「コテンラジオ」を運営するCOTEN代表の深井 龍之介氏、モデレーターとしてThe Breakthrough Company GO代表の三浦 崇宏氏が登壇。「AI時代への転換点 新たなマーケティングとクリエイティブとは」という問いに対して、「世界の構造、倫理観の変化」という観点からトークが繰り広げられました。
広告が民主化され、マーケターやクリエイティブだけの仕事では無くなった。
古川氏:
この10年は広告の民主化、デモクラシーが進んだ10年だと言うことができますよね。
去年のカンヌライオンズの事例だけど、コカ・コーラが、世界各地で勝手にロゴをつくられていたことを利用したキャンペーンをやりました(Coca-Cola「Thanks For Coke-Creating」)。
世界中の商店で、勝手に手書きのロゴを書かれたり、POPをつくられたりしていた。これまでは、決して許容されなかった。けれど今は、これを面白がってむしろプロジェクトにしようと(※製品にプリントしたり、ブランドブックに掲載されたりしている)。
みんなでやったほうが楽しいねということ。消費者の視点が入って、新しいマーケティングができるということ。誰をどう参加させるかだと変わってきたんです。
深井氏:
少し違う角度でこれまでの50年を見ると、国民国家が強かった時代だと言えると思うんです。現代は、全世界的に先進国の政府の力が弱くなり、株式会社の力が強くなっている時代になってきている。
つまり、企業やビジネスパーソンが世の中に影響を与える最大のものになっている。資金力、技術力、採用力。そういったものが国家や政府に比べて圧倒的に強いですよね。イーロン・マスクが台頭しているのはその象徴的な出来事だと思います。
その結果、企業に対して起こると予想されるのが、こういうこと言ってましたよね?と後から
数年、数十年の時を経て、その企業姿勢や打ち出しを糾弾されるということ。今、モラルが10年に1回変わる時代になっているんです。
三浦氏:
古川さんは、広告業界において意識しなければいけない倫理ってどう定義してますか?
古川氏:
倫理とは、ものの見方、世界に対する態度のことだと思うんです。今年カンヌライオンズでよかったのが、フランスの住宅保険会社AXAの事例(「Three Words」)。これまで、保険の補償範囲が火災と洪水だったところに、「DV」という3つ目の項目を入れたんです。
このように、ふと「保険ってこれでいいんだっけ?」って思う感覚こそが倫理観だと思うんです。20年前だったら、DVって入ってこなかった。これをふと思えるかどうか。
深井氏:
この150年間ぐらい、世界では専門性を高めることが企業にとっても個人にとっても正解だった。ただ、これからは統合知じゃないと課題を解決できないという時代になると思っています。
一つの専門性では足りず、二つ三つ四つ。もしくは別の専門性を持っている人とタッグを組む。そうしないと、社会のことを正しく知ることができない。今、戦争がなぜ起きているかを知らずに、社会において価値を発揮するのは不可能じゃないですか。
要するに、横断的な知性じゃないと解決できない問題のみが、世界に残っているんです。たとえばCO2削減という問題一つとってみても、政治、化学、など、多くの専門性が組み合わさってはじめて取り組める問題でしょう。
マーケティングのプロフェッショナルです!と言っているだけではない、統合知あるマーケターが登場すべきでしょうね。
■セッション:AIクリエイティブ超最前線〜消費者とメディアが「多様性」を求める時代の新たなスタンダードとは〜
本セッションでは、当社 AI事業本部 AIクリエイティブDiv.統括の毛利 真崇が登壇。
デジタルプラットフォームにおける広告のアルゴリズムや構造についての解説をはじめ、広告効果を最大化することを目的に開発された「極(きわみ)予測AI」、さらに当日会場にもなった「極AIお台場スタジオ」の紹介、生成AI時代に企業担当者が向き合っていくべき課題や展望など、AIの登場により劇的に進化する広告クリエイティブの現場について事例を交えてお話をしました。
出演いただいたクリエイターのプレゼンテーション抜粋
また、本イベント後半では、一線で活躍する世代を越えた10名のクリエイターが登場し、それぞれの視点で見た社会や広告の考え方、クリエイティブに求められる役割の変化など、企業のマーケターに向けて、個性際立つプレゼンテーションが行われました。
一部内容をご紹介します。
「東京、大阪、名古屋……それぞれの都市によってモノの決め方も予算規模も全然違う。合議的にみんなの話し合いで決める東京もあれば、社長の『ワシが決めるんや!』という一言で決まる街も。そんなさまざまな現場で求められるのは、クリエイター好みの“いい表現やクリエイティブ”ではなく、“課題解決と目標達成”。」(中尾 孝年氏 KAZA2NA)
「特に意識するのは、ソーシャル上の文脈づくりを活かした話題設計。たとえば『ただOOHをやって終わり』ではなく、“入り口と出口の発話をどう設計するか”を考える必要がある」(藤木 良祐氏 サイバーエージェント)
「今必要とされている言葉は、日々複雑に変わっている。それは、社会課題にしても企業の課題にしても、“人間の課題”だからだと思います。コミュニケーションの仕事は、人間を考える仕事。そういった意味では、AIの時代になりつつあるが、今のところ人間が果たす役割は大きいはず。」(こやま 淳子氏 The Breakthrough Company GO・こやま淳子事務所)
「現代は、“よい商品をつくっている”だけでなく、“よりよい社会をつくっている”ことがブランドの価値につながる時代。あらゆる商品やサービスがコモディティ化するなかで、どう社会の役に立つのか? どんな世界にしたいのか? という構想こそがブランドを大きくする」(砥川 直大氏 The Breakthrough Company GO)
本イベントを通じて
全体でキーワードとなったのは「激動する世界情勢と社会の変化にどう向き合うのか」という社会課題への視点だったと言えます。マーケター、クリエイター共に、新たな社会とその現実との向き合い方がより一層重要になることを強く感じさせる内容となりました。
現在、サイバーエージェントでは、今回ご登壇をいただいたクリエイターのみなさまをはじめ、外部の様々なパートナーと共に、自社で開発するAIやテクノロジーを掛け合わせた新たな挑戦に積極的に取り組んでいます。AIの進化と共に大きく急速に変化していく社会の中でも、最適なコミュニケーションの実現を目指し、広告主企業のみなさまのマーケティング課題解決と広告効果最大化に尽力してまいります。
実施概要
イベント名:「Brand Leaders Collective」
日程 :2025年7月10日(木)
場所 :極AIお台場スタジオ
■キーノートセッション:広告とクリエイターの未来
高岡 浩三(ケイ アンド カンパニー 代表取締役)
■スペシャルセッション:マーケティングの使命を考える
古川 裕也(株式会社古川裕也事務所 founder/CEO クリエイティブ・ディレクター / クリエイティブ・コンサルタント)
深井 龍之介(COTEN 代表取締役 CEO)
三浦 崇宏(The Breakthrough Company GO 代表取締役 CEO)
■セッション:AIクリエイティブ超最前線
〜消費者とメディアが「多様性」を求める時代の新たなスタンダードとは〜
毛利 真崇(サイバーエージェント AI事業本部AIクリエイティブDiv.統括)
Creators' Presentation(登壇順)
砥川 直大(The Breakthrough Company GO Creative Director)
福里 真一(ワンスカイ クリエイティブディレクター/CMプランナー/コピーライター YouTubeチャンネル「広告ウヒョー!」MC)
見市 沖(株式会社本音 クリエイティブディレクター)
藤木 良祐(株式会社サイバーエージェント クリエイティブプランナー)
村松 亮太郎(NAKED, INC. CEO)
小林 大地(The Breakthrough Company GO Creative Director)
森本 泰平(株式会社意味と衝動 クリエイティブディレクター)
こやま 淳子(The Breakthrough Company GO・こやま淳子事務所 コピーライター/クリエイティブディレクター)
中尾 孝年(合同会社KAZA2NA クリエイティブディレクター/コンサルティングクリエイター/エンタメソリューター)
眞鍋 海里(株式会社新たな細胞 取締役 クリエイティブディレクター)
写真提供:ad:tech tokyo事務局