「サイバーエージェントクリエイティブDAY」
当社インターネット広告事業本部 クリエイティブ部門にて、様々な領域の第一線で活躍をされている豪華なゲストの方々をお招きしお話をお伺いする社内クリエイター向けイベント「サイバーエージェントクリエイティブDAY」を2025年3月11日(火)に当社 極AIお台場スタジオにて開催いたしました。
第3回目となる今回も、様々な分野から特別なゲストの方々にご登壇いただき、クリエイティブ部門メンバーをはじめ、一部の営業職社員も含めて200名超のメンバーが参加しました。
今後も、テクノロジー、クリエイティブ、エンターテインメントなど幅広い領域で様々なパートナーのみなさまとの取り組みを通して、インターネット広告の新しい価値を生み出す挑戦を続けてまいります。
今回ご登壇いただいた5名のゲストの講演内容を全4編にてお届けします。
ご登壇者様 ※ご登壇順
第1編
石川涼 様(株式会社せーの 代表 「#FR2」創設者)
熱狂こそが、ブランドの価値を決める 〜どこでも買える時代に選ばれるブランド戦略〜
http://www.cyberagent-adagency.com/event/874/
第2編
松村宗亮 様(茶道家 SHUHALLY代表)
茶道から読み解くクリエイティブの本質 〜伝統と革新から生まれる創造力〜
http://www.cyberagent-adagency.com/event/875/
熱狂こそが、ブランドの価値を決める 〜どこでも買える時代に選ばれるブランド戦略〜

株式会社せーの代表取締役
石川 涼(いしかわ りょう)
1975年生まれ、静岡県出身。 2000年起業。 2004年ファッションブランド「VANQUISH」創設。 2010年ジャパンファッションウィーク(JFW)に109ブランドとして史上初めて参加し、コレクションをショー形式で発表。 時を経て2014年、Instagramから始まり世界から注目を集めるコンテンツ「#FR2」の仕掛け人。 Instagram: https://www.instagram.com/fxxkingrabbits/
VANQUISH創設時に出会ったリアルな熱狂とブランドの始まり
2004年、当時渋谷にたくさんいたギャル男たちのためのファッションブランド 「VANQUISH」を作りました。

当時はまだガラケーが主流で、オンラインで洋服が売れるなんて、誰も信じていない時代でした。小さな画面では服の素材もサイズも伝わらないし、試着ができないのに買う人なんていない、とファッション業界の多くが考えていたのです。しかし僕の周りにいたギャルたちは、ガラケーでオンラインストアにアクセスし、たくさん服を買っていました。目の前ではたしかにギャルたちがこんなに熱狂してるのに、どうしてファッション業界の人はオンラインで服は売れないと思っていたのでしょうか。実際、「VANQUISH」は当時熱狂が生まれていたオンライン販売に賭けたことで大きく売上を伸ばし、ブランドを成長させることができました。
その時からずっと、僕は熱狂を追いかけてブランドを作ってきました。世の中では日々、多くの人を熱狂させるブームが生まれ、いずれそれにも慣れて、感動は薄れていくものです。だからこそ僕は常に、今どこに消費者の熱狂があるのか、そしてそのカウンターはどちらにあるのか、を探し続けています。
逆に、熱狂を感じなくなったものは迷わずやめる判断をスピーディーにしていきました。商業施設からの店舗撤退を決めた時、まだ利益は出ていましたが、販売の現場を見る中でお客様の反応や買い方に以前の勢いが感じられなくなっていました。社内ではまだ利益があるのに閉じるのはもったいないと反対の声もありましたが、ブランド価値が下がっているのに惰性で続けるほうが実はリスクは大きいのです。ブランドにとっては利益よりも、熱狂を失うことのほうが致命的だと思っています。
#FR2で体現する、わざわざ行きたくなる「ここにしかない熱狂」
2014年、新しいことを始めたいと思い海外戦略に向けて立ち上げたのが「#FR2」です。当時はスマートフォンが普及しInstagramが流行し始めた頃だったので、SNSこそが熱狂の震源地でした。ロゴもネーミングも画面の中でいかに興味を惹き思わず指を止めさせるかを意識して作りました。
「VANQUISH」が当時先駆けてはじめたオンライン販売も、時を経て、スマートフォンやアプリの利便性が増し、ほとんどの商品がオンラインで簡単に買えて、翌日に届くのが当たり前の時代になりました。とても便利になった一方で、商品を探す楽しみ、心待ちにする時間が消え、物を手に入れたときの「特別感」や「高揚感」、そこにかつてあった熱狂が失われていると感じていました。なので、自分たちはあえてオンライン販売はせず、原宿、京都、沖縄など観光地に店舗を出すという新たな戦略を立てました。
ここでしか買えない、旅の記念や友達と遊びに行った証になるような、足を運んで旅行した先の思い出の一つとして、価値のあるブランドにしたい、と考えたんです。
しかしながら、足を運ぶことでしか得られない高揚感や記憶をブランドの価値として届けようとしていた最中、コロナ禍によりお客様が動けない状況になってしまいました。売上の7・8割が外国人だったので、インバウンド需要が突然ゼロになって売上が激減してしまったんです。「だったら、こちらから動こう」と考え僕ら自身が全国をまわって直接届けに行くことにしました。それが2021年に始めた「#FR2DOKO?」です。

子供の頃に楽しみだった移動図書館をヒントにした移動販売車を思いつき、GPSアプリと連携して、販売場所は開始15分前にだけ位置を公開するという宝探しのような仕掛けをつくりました。実際に移動店舗を走らせてみると、思った以上に多くの方がSNSで追いかけてくれたり、高速道路の出口で待ち伏せをする人まで現れるなど、こちらの予想を大きく超える熱狂を生むことができました。
最近では、2025年2月に、無人販売店舗「#FR2羊蹄」を北海道・ニセコにオープンしました。当初、この店舗となった倉庫の横にある大きなスペースでカフェを開くことを提案されていたのですが、下見で実際に足を運んだ時、隣にぽつんと立つ倉庫を一目見て、「ここならいいものができるかも」という直感がありました。2018年にオープンしたプラダの砂漠の店舗「PRADA MARFA」のように、人が勝手に広めたくなる風景をつくれるのではないかと思ったんです。

正直、販売当日までニセコの山奥にまでお客さんが足を運んでくれるかどうかは全く分かりませんでしたが、実際、広告を打たずとも初日から完売し、反響は想像以上のものになりました。
僕はずっと、世の中の「普通」に疑問を持ちながら生きてきたように思います。ニュースなどで世の中全体が盛り上がっているように見えることでも、本当にそうなのか、子どもと同じようなフラットな視点で疑うことを大切にしています。話題になっていても、それが常識だと言われても、自分の感覚とずれていると感じたときは、その違和感を大切にしています。自分が目で見て感じて、確かめたものを信じ、世の中の声よりも自分の中に生まれたわずかな違和感を信じることが、僕が作るブランドの源泉なのかもしれません。
今、「熱狂」の現在地
いつでもどこでもインターネットで手に入る時代、日本に限らず世界中で、モノを買うこと
の価値も優先順位も下がっていると感じています。その代わりに、絶景を目指して足を運び写真を撮ること。予約の取れないレストランに行くこと。そこには時間や手間をかけてでも「行きたい」と思わせる強さがあります。今は「買うこと」の優先順位は下がり、「移動すること」そのもの、そこで体験した「思い出」に価値が生まれている時代なのではないかと思っています。目的地に向かって移動を始めるところからもう熱狂は存在しているのです。
新たな熱狂の場所を探しながら、強いブランドを作る 「世界のお土産屋」としての#FR2
#FR2を立ち上げる前の2010年頃、僕は当時ブランドの海外展開を見据えて海外で生活していたのですが、現地で感じたことの積み重ねが、今の考え方を形づくっているように思います。
かつて、僕はグローバルブランドになるためには「自分たちが海外に出ていくこと」が正しいと思っていました。けれど今、年間3,300万人を超える外国人が日本を訪れており、数年のうちには5,000万人に達するとも言われています。訪日外国人が今後さらに増えることを考えると、世界へのビジネス戦略として海外に出ていくよりも「日本が世界中から訪れたい場所になっている」という事実に目を向ける方が賢明なのではないかと考えました。
日本で体験し、日本で手にしたものを単なる商品ではなく思い出ごと持ち帰る「世界のお土産ブランド」として成立させていくことが、今僕が描いている#FR2のあり方です。移動して、足を運んできた人の思い出に残るようなブランドとして、これからの時代の中で移ろいゆく熱狂と共に#FR2もさらに成長させていきたいと考えています。

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