2015/9/30 Wed
Twitter広告の活用と新たなチャレンジ (前編)
笹本 裕(ささもと ゆう)氏
Twitter Japan 株式会社 代表取締役
伊達 学(だて まなぶ)
株式会社サイバーエージェント 執行役員 インターネット広告事業本部 統括
Twitter広告の活用と新たなチャレンジ~前編~
Twitter Japanより、代表取締役 笹本 裕氏をお迎えし、当社執行役員 伊達と対談を実施。Twitter広告の活用ポイントや、Twitterの日本市場における戦略を突き進める笹本氏が描く構想を、特別にお話しいただきました。
前編と後編に分けてお伝えします。
日本企業のTwitter広告活用における変化
CA伊達:当社におけるTwitter広告の取扱高は伸びており、お客様も効果を非常に実感していらっしゃいますが、ここ最近ではどのような変化がありましたか?
笹本氏:これまではどちらかと言うと、パフォーマンス商品としてのTwitter広告、という活用方法が非常に多かったのですが、最近ではブランド系のお客様がどんどん増えてきています。最近よく、ブランド系のお客様とお話をさせていただく機会がありますが、Twitter広告をどのように活用したら良いかというご相談をいただきます。また、社内で担当者をうまく配置できないんだけれど、どうしたらいいだろうなどという社内の体制に関するご相談もありますね。
CA伊達:お客様の社内におけるTwitterの担当ということですか?
笹本氏:そうです。企業の宣伝部の中にも、ソーシャルメディアに理解があるご担当の方がいらっしゃると、ブランド系のお客様のTwitter広告のご活用がより増えるのではないかと考えています。なかなか、まだノウハウをお持ちでないので。そういった人材の確保というのが1つと、あとはそれこそデジタルの代理店のサポートが必要だと思います。ちょうど今、そういう転換期にきているという気がすごくしていますね。
CA伊達:実際にその準備ができている、もしくはかなり初期の頃からTwitterのプラットフォームに向き合って、うまく活用できている広告主はどこかありますか?
笹本氏:ブランド領域でいうと消費財メーカーさんは、非常にうまくいっていると感じています。特に外資系の企業が進んでいますね。アメリカなどでTwitterやソーシャルメディアの重要性を数年前からしっかりと理解し、投資をして、マーケティングに取り組んでいるので、当然日本においても進んでいます。特にここ1年くらい、お客様のお話を伺っていると日本の企業においても、宣伝部にソーシャルメディア担当の方がいて、その方が社内の啓発活動をされているというケースが増えてきていますね。
CA伊達:そういう方は実際にどういうところで経験を積んで、ブランド系のお客様のソーシャルメディア担当になるのでしょうか?
笹本氏:私もそうですが、もともとデジタル系のメディア出身の方などが多いですね。そういった方のソーシャルメディアへのご理解は、ブランド広告主の宣伝チームにおいてもものすごく高いです。このような方の需要は、これから企業においてますます高まっていくでしょうし、おそらくしっかりとKPIもトラッキングできていると思います。
単に一方通行の広告を出すということではなくて、消費者に対するロイヤリティを高めるために、消費者にどのように接していくのが良いのかというところに着眼されています。そのためには、ソーシャルメディアをどう活用するべきなのかということを、よく理解されていると感じています。
Twitter広告活用の現状と、活用のポイント
CA伊達:日本への期待値に対して、今の進捗は、笹本さんの中でどれくらいでしょうか?
笹本氏:まだまだですね。単純に言うと、アバブザライン(※1)からビロウザライン(※2)といった、マーケティングの考え方があるじゃないですか。デジタルは非常にビロウザラインの部分が強いですが、Twitterの場合はアバブザラインの部分とのシナジーが強くあります。そこでの役割をポテンシャルに対してまだ果たしきれていないと思うんですよね。そういう意味で、ブランド系のお客様に対して動画広告をはじめとしたTwitter広告を理解していただく必要性があると思っています。
(※1)アバブザライン(above the line)・・・ ブランド認知を目的とした、マスメディアを中心とした広告
(※2)ビロウザライン(below the line)・・・顧客獲得を目的とした、マスメディア以外の広告または販売促進を用いる広告
CA伊達:お客様が広告において、上手くTwitterのプラットフォームを活用していくにあたり、専任の担当やチームがいるというのはやはり大きいですか。
笹本氏:大きいと思います。先日、あるIT系の企業にお邪魔しましたが、Twitter活用においてB to Cはなんとなくわかる。でも、B to Bで使いたいんだけど、どうなんだろうという質問をいただきました。それに対して私からお話ししたのは、トップ営業マンのTwitterアカウントを作られたらいかがですかということです。B to Bでビジネスをされている企業にとって、その企業の営業マンがその企業の商品やサービスの説明や宣伝を、最も分かりやすくできると思うんですよね。極端な話ですが、ソーシャルメディア担当の方がいなかったとしたら、そういうトップ営業マンのTwitterアカウントを作ってもよいのではないでしょうか。
そうしたら、企業アカウントの中でトップ営業マン個人の言葉を発するのがいいのか、それとも個人のアカウントを別に立てて、それをその企業の公式アカウントとして出すのが良いのかと聞かれたので、それは後者だと答えました。やはりTwitterの場合、アカウント自体が人格だと思うので、人格をちゃんと活かした運営をするのが良いのではないかと思います。そのような形で進めて、もう少し気軽に消費者と「会話」をする。そういう何気ない「会話」が、まさにB to Bマーケティングの新しいやり方なのではないかと思います。
CA伊達:実際にそれをお話しされた後の、企業の方の反応は、いかがでしたか?
笹本氏:反応はすごく良かったですね。例えばトップ営業マンが、プロモーションをしていくアカウントのオーナーになるとすると、その方は自社のアカウントを盛り上げていくために、世の中において他の企業がソーシャルメディアで製品やブランドに対してどんなことを語っているのかということを、より多くインプットしていかなければならなくなります。そういった点では、ワードクラウドやあらゆるソーシャルデータを見ながら、「世の中でこういうことが語られていますが、じゃあ我々はこういうふうに語っていこう」という戦略がもっと必要になってきます。我々もその助けになるツールをご提供できれば、Twitterの特徴的な会話や拡散性、リアルタイム性などにおいて、まだまだ効果が出せるのではないかと思っているので、力を入れていきたいと思っています。
Twitter広告の新しい価値
CA伊達:そのほかに、Twitter社からそういったTwitter活用における新しい価値の提供など、啓発活動をされていることは何かありますか?
笹本氏:まさにサイバーエージェントさんに使っていただいていることだと思います。私たちが自社の製品についてお話をするのは当然のことですが、他社のソーシャルメディアを含め、世の中のソーシャルメディアのあり方をとても熟知されているサイバーエージェントさんにお話ししていただきながら、Twitterも一緒にスケールしていくということが必要だと私は思っています。今年は、例えばIT系企業など今まではどちらかと言うとマス広告で一方通行にブランディングをされていた企業が、個人との接触を生かしながら双方向のコミュニケーションにおいてブランドの訴求をするという過渡期にきているではないかと思います。
日本においては特に、Twitter広告の伸びしろがずいぶんあると感じています。日本はTwitterの利用が最も多い国の一つなので、在庫としてはまだまだあると思っています。
CA伊達:在庫を使いきれていないということですか?
笹本氏:使いきれていないですね。今、在庫をもっと増やすということに力を入れています。Twitterの利用方法が、日本ユーザーは特殊だと思います。例えばTwitterのサーチでいうと、ハッシュタグやキーワードでサーチしたりします。いろいろなサーチの仕方がありますが、一番多様性を持っているのは、主要国の中では日本なんですよね。おそらく、日本のTwitterユーザーは世界で最もリテラシーの高いユーザーだということを、最近すごく実感しています。そういう意味では、アクティブに使っていただいているTwitterの現ユーザーの方々に対する適切な広告配信に関しては、まだまだ伸びしろがあります。Twitterは今年、さらに新しいユーザーを増やしていくための機能やサービス開発に注力しており、日本に初めてエンジニアを迎え開発チームを設置することを決めました。実際に活動し始めるのはこれからですが、こういったチームを作るというのも、Twitterとして日本の市場としての可能性も大きく感じていて、期待値があるからです。
CA伊達:日本発信の新しいアドフォーマットを作ることが狙いですね?
笹本氏:メディア軸と広告軸、両方あると思っています。まずは、新しいユーザーを増やしていくためのプロダクトや機能を追加し、そこには当然、広告の可能性も広がります。我々としては日本ならではの広告配信のスキームを作って、行く行くはそれが世界にもスケールするようにという期待をしています。先ほどお話ししたように、日本のユーザーはすごくリテラシーが高いですし、そういう意味では、日本のデジタルにおける広告手法は世界的にも先行していると思うので、Twitterの開発チームにとって日本はとてもやりがいのある環境だと思いますね。
ユーザーグロースと新たな広告商品の開発
CA伊達:Twitterのユーザー数の拡大については、具体的にはどのような施策をされていますか?
笹本氏: Twitterは、特に若い方に多く使っていただいているイメージが強いですが、昨今30 代や40代のユーザーも増えており、実は1ヶ月ほど前に「ニュース」の機能をリリースしました。ツイートするだけではなくて、情報収集するツールとしてもTwitterを使っていただきたいという目的があります。
当然ユーザー数を拡大するだけではなく、ユーザーと接触する企業の広告の枠も開発を進めていきます。でも、ユーザー数が多くなれば広告の枠が多くなるから良い、というふうにはあまり思っていなくて。例えば、ブランド系のお客様にとってはこういう利用者が増えることで、パフォーマンスも高くなるというような、広告のロジックを考えた上で商品を出していきたいと思っています。
例えば先ほど申し上げたように、サーチにおいては日本ユーザーのリテラシーが非常に高い。そうすると自然と利用者の方々の多様性に対して、様々な企業のブランディングの機会も増えていきます。そこで、ユーザーに対して適したターゲティングがしっかりできるということも必要でしょうし、まだまだそういった日本ならではのものができてくるんじゃないかなとは思いますね。
CA伊達:時期的にはいつくらいを想定していますか?
笹本氏:思いの外、Twitterの動きは早いですね。ただ、今は新たに市場を作っていくくらいの気概で取り組んでいるので、スピード感よりもしっかりとテストをしながら市場を見ていきたいと考えています。ただ、2ヶ月前に立ち上げたニュース機能は常に利用度が高くアクティブなので、潜在力はあると思っています。
CA伊達:大きな方向性として、比較的相性が良くてすでに利用されているユーザーにより使ってもらうというよりは、今のところ親和性が薄いとされているゾーンのユーザーに使ってもらえるようにする、という方がメインになりそうですか?
笹本氏:両方ありますね。今使っていただいているユーザーにさらに使っていただくというのは、より確実に伸ばしていけるところだと思いますし、逆にそこをしっかりとやらないと、新たに使っていただいても離れてしまう危険性がありますから。今利用していないユーザーに対しては何故使っていないのかを検証した上で、それに対する機能やサービスを開発したり、認知を拡大したりという2軸でやっていこうという考えです。
CA伊達:それに伴って、新しいアドフォーマットも日本発のものがぜひできると良いですね。
笹本氏:はい、なかなかチャレンジングですけど、頑張ります!
笹本 裕(ささもと ゆう)氏
Twitter Japan 株式会社 代表取締役
タイのバンコクに生まれ、1988年にリクルートに入社。その後、株式会社クリエイティブ・リンク取締役COOに就任し、「レストランガイド」を立ち上げる。2000年からはMTVジャパン株式会社取締役COOに就任し。2007年からはマイクロソフトでオンラインサービスやアジア太平洋地域の統括を担当後、2014年にTwitter Japan代表取締役に就任。
伊達 学(だて まなぶ)
株式会社サイバーエージェント 執行役員 インターネット広告事業本部 統括
2002年 株式会社サイバーエージェントに入社。入社以降インターネット広告事業に従事し、現在は統括を務める。2014年 執行役員に就任。
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