2015/5/18 Mon

LINEを活用した企業のマーケティング (前編)

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田端 信太郎 氏

LINE株式会社 上級執行役員 法人ビジネス担当

伊達 学

株式会社サイバーエージェント 執行役員 インターネット広告事業本部 統括

LINEを活用した企業のマーケティング ~前編~

LINE株式会社より田端氏をゲストにお迎えし、LINEの広告商品について、企業のマーケティング活用の仕方や田端氏のビジネス構想、今後の展望などをお聞きする、当社執行役員の伊達とのインタビュー対談。
企業のマーケティングご担当者向けにLINEを活用したマーケティングのヒントとなる、本インタビューだからこそ聞ける内容を、ざっくばらんにお話しいただき、前編と後編に分けて内容をお届けいたします。

LINEのスタンプ商品は、果たして広告商品なのか?

伊達: LINEというサービスは、今のタイミングですとユーザーファーストに重きを置いていて、『広告』はその次という段階かと思うのですが、今後は広告のイニシアチブが多少はとれる時代が来るのか?そのあたりのお話しをまずは伺えますか。

田端氏:『広告』という言葉は、誰もが知っている分かりやすい言葉なのでこの言葉を使っていますが、LINEの広告において、本質的には広告をやりたいという考えではありません。じゃあ、「広告って何?」という問いなのですが、例えば、LINEのスタンプは広告商品なのか?という話です。

広告というと、ユーザーにとってどうしてもウザったい扱いになりがちですが、LINEのスタンプ商品は、広告のウザったさをユーザーに感じさせることなく、むしろ『広告』と『コミュニケーション』が混然一体になっているんです。
一昔前の話しをすると、『広告』と『コンテンツ』と『コミュニケーション』は、はっきり分かれていました。
例えば、テレビドラマ。これは各テレビ局の『コンテンツ』ですよね。その合間に企業の『広告』としてCMが流れます。コンテンツと広告は、ドラマ本編とCMできちんと分かれています。そして翌朝、学校に行き、「昨日のドラマ観た?」という話題になると、「あそこでああ言ってたら良かったのに」とか「あのシーンはありえない」などといった、『コミュニケーション』が発生します。

しかし現在は、ドラマを見ながら手元のスマートフォンをいじり、LINEやTwitter、2chの実況スレッド上などで、リアルタイムにドラマの展開をみんなでつぶやきながら『コミュニケーション』が発生しています。

今は、『広告』を、そのまま広告として差し出しても、それほど見られない。そういった意味で、『広告』と『コミュニケーション』が混然一体となっているLINEのスタンプ商品は、広告というものに対して少しは楔を打ちこめているのかなという意識はあります。

こういう場でないとなかなか言えないのですが、やはりみなさん「CPAはどうなの?」とすぐに仰るじゃないですか。

伊達:すみません、私、一番言ってます(笑)。

田端氏: CPAの指標を求める際に、「本質的なCPAとは何なのか?」ということをもっと考えてほしいと感じています。


例えば、口座開設の件数を増やしたい場合、口座開設のCPAの数値しか見ていない場合もありますよね。ですが、流入元が、2chのネットワークからたまたま入ってきて、「口座開設で一万円キャッシュバック」というキャンペーンなどに惹かれ、口座開設だけして終わり、というケースもあるかもしれない。かたや、検索から入ってきて5年10年続く人もいるかもしれない。質の違うユーザーを一緒くたにして、“CPA”と括ってしまうのは、「本当にクライアントのためになっているのか?」と疑問に感じます。

伊達:LTVをしっかりと見ていきたいですね。

田端氏:考えるべきは、クライアントにとって何が意義のあることで、本質的に大事なことは何なのか?ということです。

ユーザー視点であり続けることで、広告ビジネスをリードする

伊達: 田端さんのご経歴から遡ると、ライブドア社に在籍していた頃はバナー広告のセールスをされていたところから、今に至っていますよね。LINE社に入ったから今のような思想にぐっと変化したのか、もしくは前から課題に感じていて、いよいよそれを実現できるのがLINEだったのでしょうか?

田端氏:うーん。どうでしょうね(笑)。
私がずっと考えていることは、ユーザーを泣かせて広告主に媚びたり、逆に広告主を泣かせてユーザーに媚びたりと、どちらか一方に偏るのではなく、そこの矛盾をどう解いていくか?というメディア屋としての気構えをずっと抱いています。
ユーザーファーストで、LINEをより良くしようと考えているので、広告代理店さんからすると、「LINEはなかなか融通が利かない」と映ってしまう部分もあるかもしれません。
しかしユーザー視点で考えることが、長期的には、広告ビジネス的に見ても合理性があるはずだと考えています。また、我々がそうしていかなくてはならないという責任やプレッシャーも感じています。

伊達:我々は自社でAmebaなどのメディアを運営し広告枠を持ちながらも、一方で広告代理店でもあるというユニークな立ち位置です。当社のメディア運営サイドからすると、今のメディアの生態系を壊してまで広告枠の設置はしないという意志を持っていて、それに対し我々広告代理事業サイドは、広告枠の交渉を行ったりしています。当社間でもそういったメディアと代理店の交渉はあったので、メディア側の想いというものは、多少なりとも理解しているつもりではいます。

現地マーケットでも盛り上がる、海外活用事例

伊達:最近ですと、企業の海外進出が活発になっていきそうだと感じているのですが、LINEをプロモーション活用している日本企業が、海外進出する時の活用事例はありますか? 

田端氏:海外での活用事例はとても増えています。タイやインドネシア、台湾などLINEが盛り上がっている国では、より一層活発ですね。
例えば日産様ですと、タイで公式アカウントを実施しているのですが、日本ではまだ実施して頂けていません。タイが先行しているとも言えます。また、カネボウ様やPanasonic様は、ラテンアメリカでLINEのスタンプを実施していただいています。日本では展開せずに、海外でLINEを活用したプロモーションを行う企業も結構多いんです。

海外でプロモーションを展開する際でも、商談は日本で行えます。配信先がどの国であろうと技術的な仕組みは一緒なので、すぐに展開が可能です。

伊達:日本で商談し実装もお願いすれば、後は自動的に現地の方とやりとりして頂いて、海外向けに配信が出来てしまうのですね。

田端氏:LINEのスタンプであれば、言語依存しないので簡単に配信可能です。
公式アカウントの場合ですと、メッセージ文を現地の言葉に合わせる必要があるので、そこはクライアントの現地法人などに協力をしていただいています。

伊達:言語依存の必要のないスタンプは、手間がかからなく良いですね。

田端氏:タイでは、LINEのスタンプの広告単価と、テレビのスポットの広告単価では、ほぼ変わらないか、むしろLINEの方が高いくらいのようです。

伊達:現地企業においても、LINEのスタンプ活用が活発なんですね。

田端氏:特に、タイと台湾の現地企業が活発です。タイは日系企業が多いですが、台湾は、現地のレストランや携帯電話会社などですね。

LINEの特性を活かした、新たな可能性

伊達: LINEを活用した最近の好事例を聞かせいただけますか。

田端氏:LINE@の活用にも近しいのですが、レストランについてのお話しをしましょう。
家族で食事に出かけるとき我々の世代ですと、「このレストランって子供を連れて行ってもいい雰囲気かな?」と思った時、よほど、このレストランに行こうと決めていない限り、子連れでも大丈夫かどうか電話で確認しないですよね。
それが、LINEで気軽に聞けるのであれば、軽く迷っているくらいでも「子供連れでも平気ですか?」と一言聞いたら、「大丈夫です」と返答がきたり、OKスタンプで返答することが可能です。
今まででしたら、電話をかけてまで聞くことではないと思われていた、こぼれ落ちてたようなニーズを、LINEを活用することで創出できる可能性があります。
攻めのカスタマーサポートのもう少し手前の、マーケティングに近い部分をもう少し拾っていけるのではないかと可能性を感じています。

伊達:それこそがLINEというプラットホームの特性ですよね。通常のメールのコミュニケーション内で、″ペコッ″とした顔文字などを使われたら違和感を感じますが、LINEのメッセージ内ですと、スタンプが上手くコミュニケーションに活かされますよね。

田端氏:今の時代、電車の移動時間がスマ―トフォンのゴールデンタイムですよね。電車内で電話は掛けられないので、レストランなどのサービスに疑問があっても、家に着いて落ち着いた場所から掛けようと思います。
ところが、そのレストランなどとメッセージの送受信が出来れば、場所に関係なくいつでもどこでも、問い合わせが可能になります。それが実現することで、このようなこぼれていたニーズや顧客を拾える可能性は高まるだろうと考えています。

伊達:良いですね。新たなLINEの可能性を、代理店として、我々も一緒に考えたいです。
田端氏:LINE ビジネスコネクトを活用したスマホのインパクトというものを、企業のみなさまにももっと知ってもらいたいと思っています。
チェーン店カフェや商業施設などのフードコートに行くと、メニューを注文しにレジに並びますよね。
ですがLINEビジネスコネクトを活用すれば、まず席に着いてメニューを開き、ラテの注文を手元の端末で選択する。すると店員さんがラテを運んでくる、ということも可能になります。
ファミレスやコンビニなどの業務システムというものは、企業の専用端末を使っていますが、それをLINE ビジネスコネクト越しに活用することができると、消費者からすれば、メニューを自分の目で直接見て選択できるので、とてもスムーズです。企業からすると、注文の応対にかかる店員のリソースが減ります。
また、今後は、LINE Payを活用することで、支払いはシームレスに完了することができるようになるかもしれません。

伊達:その世界観はとても良いですね。

田端氏: LINE TAXIの特長は、タクシーを呼べるという点ですが、実はそのサービスの良さは、LINE Payと連携していることで、乗降時に料金支払いが不要なところです。その一番の快適さは、自身で体験しないと分からないところです。

伊達:スマートですよね。

田端氏:みんなが手元に持つ端末に、LINE ビジネスコネクトを利用することで、企業の様々な基幹システムと直結して在庫情報の管理やメニューの注文などいろいろなことが可能になります。このインパクトの大きさを企業のみなさんにはもっと知っていただきたいですね。

一般論として、広告代理店の営業は広告セールスだ、というマインドで顧客と向き合っていると、先ほど申し上げたようなLINE ビジネスコネクトを活用してフードコートでこんな使い方もできる、といった切り口の提案は出来ないと思うんです。それはそれで良いのですが、やはりそういったスタイルでは、既存の広告販売でしかないので、もう少し顧客企業に向けて考え抜くことはできるのでは、と感じています。

田端 信太郎 氏

LINE株式会社 上級執行役員 法人ビジネス担当

1975年10月25日 石川県生まれ 1999年3月 慶應義塾大学 経済学部卒業 株式会社リクルートにて、フリーマガジン「R25」の立上げを行い、創刊後は、広告責任者を務める。その後、株式会社ライブドアにて、ライブドアニュースの責任者を経て、執行役員メディア事業部長に。ポータル、ニュース、ブログなど広告を主な収入源にするメディア事業部を統括し、ライブドアのメディア事業の再生をリードした。 2010年5月 コンデネット・ジェーピーにて、カントリーマネージャーに就任。ウェブ部門を統括。 2012年6月 NHN Japan株式会社(2013年4月LINE株式会社に商号変更) 執行役員に就任。広告事業部門を統括。 2014年4月 LINE株式会社 上級執行役員 法人ビジネス担当に就任。法人ビジネス全般を統括。現職。

伊達 学

株式会社サイバーエージェント 執行役員 インターネット広告事業本部 統括

2002年 株式会社サイバーエージェントに入社。入社以降インターネット広告事業に従事し、現在は統括を務める。 2014年 執行役員に就任。

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