2015/10/30 Fri
進化するCriteoの成功の鍵と構想(後編)
天野 耕太(あまの こうた) 氏
CRITEO株式会社 シニアセールスダイレクター
堀 里恵(ほり りえ) 氏
CRITEO株式会社 チャネルセールスマネージャー
大久保 晶平(おおくぼ しょうへい)
株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 ディスプレイ戦略局 局長
澤田 陽介(さわだ ようすけ)
株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 ディスプレイ戦略局 シニアコンサルタント
CRITEO社からシニアセールスダイレクター天野氏、チャネルセールスマネージャー堀氏をお招きし、当社のディスプレイ広告のプロダクト担当 大久保、澤田と対談を実施。Criteoのグローバルと日本市場の違いや戦略、今後の展開について伺いました。
前編と後編に分けてお伝えします。
前編記事は
【こちら】よりご覧ください。
「バリューオプティマイザー」が運用の差に
CA澤田: Criteoにおける最新の広告運用の話だと、今後「バリューオプティマイザー(※3)」を活用することにより、事業における在庫の課題などに対して、より柔軟に対応できるようになると思います。この機能はいつ頃日本で導入されるのでしょうか?
※3 バリューオプティマイザー・・ROI最適化を志向したエンジン。例えば、個別の商品の粗利率を考慮した広告配信を、粗利率をフィードに追加することにより実現する機能。
天野氏:そうですね、まもなくできるようになる予定です。最近は、欧米が先でアジアは後回しということはないので、「バリューオプティマイザー」についても、グローバルと展開のスピードは同じです。「バリューオプティマイザー」は、KPIについて単なるCPAだけではなく、ROI(投資対効果)まで見ていきましょうという提案に基づく機能であり、事業から見た利益率を上げていくという考え方に繋がっています。
日本の代理店各社がよく、「Criteoの運用レバーは少なく、運用力の差がどこでつくのか」というお話をされますが、「バリューオプティマイザー」によって大きな差がつくのではないかと思います。
CA大久保:これまでのディスプレイ広告は、いかに運用するかが重要だったと思います。ただ、Criteoの取り扱いを始めてからは、パフォーマンスを上げて売上を伸ばしていくために、運用もそうですが、設計コンサルティングの方がより重要になってきますよね。
天野氏:そうだと思います。
CA大久保: CPCの調整というよりも、フィードやタグの設計による改善や施策の提案をしていくことが多いと思っています。
天野氏:そうですね。Criteoは機械学習の考え方がメインとなっており、人力でやることをすごく嫌う会社なんです。レコメンドエンジンを開発している中で広告展開をしたところから事業が始まっているくらいです。人力の調整をなるべく減らして、そのかわりにCriteoを利用していただいている方々に、きちんと事業の話や事業の指標から見た時の使い方などをコンサルティングしていくというのが、我々の営業スタイルです。日本の場合は、それを代理店の皆さんと一緒にやりたいです。
アプリのリターゲティングでCriteo独自のアドバンテージを
CA大久保:Criteoの今後の戦略の切り口は、スマートフォンでしょうか?
天野氏:スマートフォンですね。日本において、CriteoはPCが得意というイメージだったと思いますが、急激にスマートフォンにシフトして、直近ではようやく売上の約半分の割合になりました。
CA大久保:グローバルのマーケットでは、スマートフォン広告はアプリの割合が高いのですか?
天野氏:はい。そこはもう大きな差がありますね。
CA大久保:今、日本でも注力されているアプリリターゲティングを実施されていますよね。日本はグローバルに比べて、スマートフォン技術は進んでいるのでしょうか?
天野氏:国によって全然違いますが、日本は進んでいる方ですね。また、スマートフォン対策について、アプリをメインにやろうという温度感が、日本よりも高い国もあったりするなど、各国で事情が違いますね。
CA大久保:アプリのリターゲティングは、ゲームもそれ以外も2016年のテーマになりそうな気がしています。Criteoは、ゲーム以外のアプリはもともと得意分野というか、実績をお持ちですよね。
天野氏:そうですね。ですが、世の中にはアドネットワークやDSPをはじめとする良いソリューションがたくさんあるので、それに対してCriteo独自の優位性をさらに作っていかなければならないと思っています。
CA大久保:今まで、日本のスマートフォン市場は基本的にゲームが中心でしたが、Criteoはゲーム以外のサービスが主力になっていますよね。ゲーム以外の広告主企業は、これからアプリのインストール訴求の伸びが予想されており、今後のポテンンシャルが大きい部分ですね。
天野氏:アプリマーケティングに関してはそうですね。市場環境はだいぶ変わってきていると思っています。要因のひとつは、例えばFacebookなどもアプリ展開をしていて、そういったファーストパーティーのデータを保有するプレイヤーが強いということがあります。あとは、Googleのディープリンクですね。考え方としては、Webとアプリの境目をなくすということだと思いますが、それによって生まれるマーケティングの新しい考え方や広告商品へのポテンシャルは大きいですよね。「アプリ業界」とくくらずに、もっとシームレスになった方が個人的には面白いと思いますし、最終的には市場も大きくなるんじゃないかなと考えています。
CA澤田:サービス提供者のユーザーデータをひとつのキーとして活用し、ユーザーがどの面に行っても、そのユーザーに最適な広告配信ができるようにするということでしょうか?
天野氏:もちろんそれもあります。一方で、Facebook社のDPA(※4)などの連携に関しては、Facebook側でやっています。Criteoは、どれも方法論としてはあるわけですが、エンジンの進化でやりたいことは、次にどのランクのユーザーに出すかということと、あとはしかるべきユーザーでも出せるところを探していくといったことです。Criteoがデータ量を重視するのもそこをシームレスにする手法のひとつですし、そういうことができる会社と組むというのもひとつの案です。
※4 DPA(Dynamic Product Ads)・・・米Facebook社が提供するダイナミックリターゲティング広告
CA澤田:サービス提供者との取り組みでは色々とやり方はあると思いますが、例えばDMPと連携するなど、ファーストパーティー以外のデータを使っていくような展開も考えられていますか?
天野氏:一部海外ではありますね。オフラインコンバージョンデータなどです。我々がどうタグを出しても取得できないデータです。
CA大久保:それは、日本では実施しないのでしょうか?
天野氏:議論はしていますが、データを混ぜて分析するのはすごく難しいので、今のところはまだですね。一般的なDSPは、誰に配信するかを決めることができます。そのユーザーが誰かというのをCookieシンクして連携すれば配信ができますが、Criteoはその先のパフォーマンスまできちんと予測しながら配信していかなければなりません。レコメンドエンジンの中に、いただいたデータを入れてアルゴリズムを作っていくのはハードルが高くなります。DMPもDSPも他にたくさんある中で、単純に他のDSPでできることをやってもあまり意味がないと思っています。
CA大久保:既存ユーザーの最適化というよりは、コンバージョンしてもらうためのロジックにおいて、ファーストパーティー以外の動きは重要なキーになってきそうですね。
天野氏:そうですね。今後の可能性の話になりますが、いただいた情報で単純に配信するのではなく、いただいた情報に基づいて、どういうユーザーがデータ的にどのような特徴があるからコンバージョンするだろうか、そして客単価が高くなるだろうか、というように予測していかないと、我々の強みになり得ません。ここは実現していきたい点です。
2016年、さらなる成長のためのCriteoのチャレンジ
CA澤田:Criteoは現在も順調に伸びていらっしゃいますが、2016年にさらに成長するために、どのようなことを実現したいと考えていらっしゃいますか?
天野氏:Criteoとしてビジネスを大きくするために、まだまだチャレンジしなければならないことが多いと思っています。
2016年には、「誰に出すのか」というエンジンの進化と、それを「どう表現するか」というクリエイティブの進化が構想としてあります。また、デバイスが多様化している市場環境において、どこでもう1回ユーザーに接点を持つかという時に、従来のPCと同様の方法ではうまくいきません。
そのような課題に対し、画像+テキストのタイムライン型の掲載を増やすことで、枠が少ないスマ-トフォンにおいてもユーザーとの接点をきちんと作れるようにしたり、ユーザーの滞在時間がアプリにシフトしていく中で、アプリの配信面でもWebと同じようなことができるようにするなどの対策が必要です。さらに、来年にはユーザーとの再接点を持つ新たな場所として、これまでのWebに加え、Eメールも追加する予定です。
これ以上に、来年は新たな取り組みが出てくると思いますが、我々がチャレンジする時に、代理店の皆さんとは是非、一緒にチャレンジさせていただき、足りない部分は率直にご意見をいただけると嬉しいです。
CA大久保:当社としても、Criteoを広告主の皆さまに提供する上で、最高品質レベルのサービスとはどのような状態かというのを考えています。
貴社からの代理店に対する要望はぜひ取り入れて実行することで、広告主企業にとって、より高品質でご満足いただけるような展開をしていきたいと思っています。
天野 耕太(あまの こうた) 氏
CRITEO株式会社 シニアセールスダイレクター
オーバーチュア株式会社およびヤフー株式会社において配信メディアネットワーク拡大に寄与。その後、インモビジャパン株式会社の立ち上げに参画し、スマートフォン広告事業の拡大に貢献。2012年よりパフォーマンスディスプレイ広告のCRITEO株式会社にて、配信ネットワーク部門を統括した後、2015年より営業部門の統括を務める。
堀 里恵(ほり りえ) 氏
CRITEO株式会社 チャネルセールスマネージャー
Email広告媒体社から、2002年Overture Japanのスタートアップに営業として参画し、広告代理店セールスを通じてSEM市場の認知・拡大に携わる。その後、Microsoftの新事業メンバーとして2006年に参画。セールスストラテジー/マーケティング部門を経て、ダイレクトセールスとしてディスプレイ広告だけでなく、Xbox Liveを活用した広告など新しい枠の提案と販売。2011年よりCriteo日本法人の立ち上げに営業として参画。2015年よりチャネルセールスマネージャーを務める。
大久保 晶平(おおくぼ しょうへい)
株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 ディスプレイ戦略局 局長
2012年、サイバーエージェントへ入社。スマートフォンの広告商品の拡販に努める営業として大手企業を担当。その後スマートフォン広告の専門部署にて、スマートフォンアドネットワーク広告のコンサルタント兼営業として取り扱い規模拡大に寄与。2013年にマネージャー、2014年に局長に就任し、広告商品のコンサルタント兼セールス組織の責任者を務める。2015年よりDSP、アドネットワークなどのディスプレイ広告商品のコンサルタント兼セールス組織の責任者を務める。
澤田 陽介(さわだ ようすけ)
株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部
ディスプレイ戦略局 シニアコンサルタント
2011年、サイバーエージェントへ入社。インターネット広告事業本部にて、大手人材系広告主の営業に従事。その後、大手不動産系広告主を中心にデータベース系の広告主のDSPコンサルタントとして従事。2013年よりCriteoの販売責任者として、Criteoを中心としたダイナミックリターゲティング広告の取り扱い規模拡大に寄与。
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