2016/1/14 Thu

Yahoo! JAPANの思想と今後の展開(前編)

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矢吹 泰教 (やぶき やすのり) 氏

ヤフー株式会社 マーケティングソリューションカンパニー ディスプレイ広告ユニット Yahoo! ディスプレイアドネットワーク サービスマネージャー

淵之上 弘 (ふちのうえ ひろし)

株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 第2本部 統括

竹ノ内亮太 (たけのうちりょうた)

株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 エグゼクティブアカウントプランナー

ヤフー株式会社より、Yahoo!ディスプレイアドネットワーク サービスマネージャー 矢吹氏をお迎えし、当社 インターネット広告事業本部 第2本部 統括 淵之上、エグゼクティブアカウントプランナー竹ノ内との対談を実施。
Yahoo! JAPANの開発における思想や方向性、また今後の展開について、詳しくお話を伺いました。

前編と後編に分けてお伝えします。

ディスプレイ広告の変化

CA 淵之上:当社は、Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(以下YDN)を含めたディスプレイ広告の販売に以前より力を入れています。インフィード広告がリリースされてからさらに、インフィード広告の専門チームを作りより強化したことで、取り扱いも顧客数も好調に増加しています。
ディスプレイ広告の効果についても、CPAという基準で見ても非常に良くなっています。ダイレクト系のお客様は、一昔前はディスプレイ広告と検索連動型広告のCPAに差があるためディスプレイ広告を実施するのが厳しい時代もありましたが、今や効果が検索連動型広告と比べても同じくらい、むしろディスプレイ広告の方が高いくらいのお客様もいるほどです。
その一方で、現状はリターゲティングに偏っているのでマーク数(一度サイトに来訪したユーザーの数)に限界があることや、ユーザーの新規率が低いこと、さらに拡大しようとした時に起点がマークになっていると難しい場合もあるといった課題も認識しており、今後私たちがお客様の効果最大化に向け、この課題をどう解決するべきかを含め、今後の戦略について、お話を伺いたいと思っています。

矢吹氏:当社ではフィーチャーフォン時代、検索連動型広告を起点にしてコンバージョン数の限界が生じた際はディスプレイ広告も使っていきましょうと広告主にお伝えしていました。ただ、スマートフォンが出ると、検索連動型広告は伸びているものの、必ずしも起点になるとは限りませんでした。よりディスプレイ広告の活用方法が多様化しています。例えば指標でCPAを見ても、ディスプレイ広告が必ずしも検索連動型広告に劣るということはないというのを実感しています。それこそ、特に若年層がスマートフォンを利用するというユーザー動向がある中で、必ずしも検索連動型広告を起点にする必要はないと考えています。まずはディスプレイ広告を最初に実施してから検索連動型広告も一緒に実施しても良いと思います。

CA 竹ノ内:ディスプレイ広告のみを実施しているお客様は、以前より増えていますか?

矢吹氏:ディスプレイ広告だけというのはまだあまり多くありませんが、併用率はかなり上がってきていますね。また、スマートフォンに限って言えば、単独利用は増えてきています。

CA 淵之上:そうなのですね。当社のお客様を見ても、スマートフォンにおいては単独利用もありますし、業種によってはディスプレイ広告に検索連動型広告の4~5倍の予算を投じているお客様もいらっしゃいます。DB系のEC、総合通販、人材、旅行などといった検索連動型広告をメインに実施してきたお客様は、検索連動型広告の割合が大きいものの、スマートフォンサービスを運営する企業や、リピート通販企業、LTV指標のお客様は、ディスプレイ広告の割合が大変大きくなってきています。

インフィード広告の登場とその次の展開

矢吹氏:昨年の5月に、PC時代をある程度受け継いでいたスマートフォンのトップページのUIを、スマートフォンネイティブなものにリニューアルしました。広告商品についても、5月にタイムライン形式のインフィード広告をリリースし、非常に好調です。
特にスマートフォンのディスプレイ領域では、インフィード広告の次の展開が重要だと思っています。ダイレクト系ではないお客様が、スマートフォン上でマーケティング活動をするにあたり、どのように自分の実現したい世界を表現するのかということが一番のポイントだと思います。

CA 淵之上:次の展開の方針などは決まっていますか?

矢吹氏:1つは、“クリエイティブのリッチ化”というのが大きいと思います。例えば予約型とか、インプレッション保証型だけではなく、後課金のCPCという商品でもクリエイティブのリッチ化はありえるのではないでしょうか。GIF+テキストというものより、もう少し表現豊かに出せる広告商品を揃えていかなければならないと思います。

CA 竹ノ内:最近リッチメディアのような、普通の静止画ではない動きをするものでも、ダイレクトで効果を狙うケースがかなり増えてきています。“リッチメディア”と“ブランド領域”の提案の境界線がなくなってきていますね。

矢吹氏:そうですね。そのようなニーズがあるのは理解していますので、社内の開発力をもっていかに早く提案していけるかが勝負だと思っています。

Yahoo! JAPANの開発における思想

CA 淵之上:御社が開発において心掛けていることをお教えいただけますでしょうか。

矢吹氏:ビジネスとして成立させるのはもちろんですが、Yahoo! JAPAN上でコンテンツと広告が全く別物として存在しており、これらが時には利益相反する状態になることはあると思うんですね。その中で広告も、ユーザーに届ける有益な情報として成立するという世界観にしていきたい、というのが大きな目標ですね。そのために、ディスプレイ広告として提供するのか、今注目されているコンテンツマーケティングという形になるかは分かりませんが、それを実現するための開発をしていきたいと考えています。
それを実現できれば、ユーザーが喜んで広告主のメッセージを受け取り、消化することができる。そういうエコシステムを作りたいという思想が根底にありますね。インフィード広告でそこに近づけたのかなと感じています。

CA 淵之上:以前と比べると、自分の興味関心と合った広告が優先的に出てくるようになっているので、ユーザーもだいぶストレスがなくなってきているかなと感じています。

矢吹氏:実際に、社内でもYahoo! JAPANのトップページをスマートフォン向けにリニューアルした際に、一般のユーザーに「変わってみてどうですか?」といったアンケート調査をしました。例えば女性に対して、ダイエットやサプリなどといった商材のターゲティング広告や、それに関連したコンテンツが流れますよね。
ユーザーに、「Yahoo! JAPANのコンテンツの中で、興味を持ったものは何ですか?」というアンケートをとってみると、実は通常のコンテンツより広告の方が多いといった事例が実際にありました。
以前のPC時代は広告であることが分かりやすくなっていた影響もあるとは思うのですが、広告が煩わしいという状態から、インフィード広告は情報としてユーザーにスムーズに摂取されるようになったと感じています。それにより、広告効果も高く出ています。

インフィード広告におけるクリエイティブの重要性

CA 淵之上:インフィード広告におけるターゲティングの精度は上がっていて、どのようなクリエイティブがそのターゲットにマッチするかということを、当社も広告主企業も考えています。加えて、今まで以上にLPが効果に与える影響は大きく、クリエイティブの重要性がより高まっています。LPによるCVR変動は、もともとかなり大きな変数ですが、インフィード広告の場合は、コンテンツ型の広告で誘導しているため、LP施策の捉え方が変わっています。
現在、当社ではLPを数本作ってバナーとの掛け合わせでテストをするなど、「どのようなLPを作成すれば効果が上がるか?」ということに注力しています。そういった、外側の集客だけではなく、内側のコンテンツのマネージメントにも注力するのが今のトレンドだと感じています。

矢吹氏:まさに広告が情報として使われつつあるということだと思います。弊社のインフィード広告のコンテンツに関しても、ユーザーが見出しを見てクリックして、リンク先のページを見てガッカリしてすぐ帰るというようなことは、一番あってはならないことだと考えています。そのため、そこをケアしながらコンテンツやニュースなどを配信しています。広告もコンテンツと同じように、訴求内容と表現のトンマナを合わせて出して、情報として消費していただくというのが求められる世界になっています。もう広告もコンテンツと同じ考え方かなと。

CA 淵之上:そうですね。コンテンツをしっかりと作って、ちゃんと読み物として意味のあるページでないと、厳しくなっていますよね。コンバージョンボタンの画像を大きくするというような従来の手法ではなく、ちゃんと読んで理解してからアクションしていただくことが重要です。今まではコンバージョンまでの遷移をどれだけ減らすかというのが勝負でしたが、あえて遷移を増やしてもCVRが上がることも実績として出てきています。我々も今までのマーケティングの原理原則を、柔軟に改めていかなければならないと感じています。

矢吹氏: マーケティング戦略上で、ユーザーが一番最初に触れるタッチポイントとその先のコンテンツは、絶対に何かしらの関係性があって、ここが分断されているのは良くないですよね。その一体感はもっと注意して作っていくことが重要だと思います。
今後は代理店や広告主企業だけでなく、Yahoo! JAPANからも“メディアが作るLP”というものをセットでご提案できたら面白いと思います。
CA 竹ノ内:インフィード広告のクリエイティブは、差し替えをすることで数字が動くんですよね。今までの広告で、差し替えてCTRが1回必ず上昇するという広告形式はありませんでした。これまでは、感覚的に作ったクリエイティブを大量に入れれば上がることもあれば下がることもありました。インフィード広告に限って言えば、この大量のクリエイティブをいかに質の高いものにできるか、ベースを上げられるかが重要になります。けれどもそこは代理店側だけではなく、「Yahoo! JAPANの媒体上ではこう表現した方が良い」という御社の知見は、インフィード広告に限らず各メニューにベースとして備わっているとものすごく助かりますね。

矢吹氏:まさにそのようなクリエイティブ周りのトライアンドエラーというのは、社内でも専門のチームがあるくらい注力している点ですし、そのノウハウも代理店や広告主企業の皆様に還元したいと思っています。クリエイティブも運用もそうなのですが、人が介在しない世界はまだまだ難しいなと個人的に思っています。機械でできることは機械が速攻で良いものを出しますが、人間がやるべき重要な部分は、そのデータや実績から学びを得ることだと思うんですね。業種なり、クライアント単体なりで最適なクリエイティブのパターンはどういうものか、PDCAを回していくうちに学習できてきます。そのような『まとめる』部分や『サマライズする』部分を、運用することでどんどん培っていくことが重要ですし、そのようなノウハウを御社からもご提供いただけると、例えばエンジンが最適化するように裏側を改善したりなど、win-winで効果を上げることができると思います。

矢吹 泰教 (やぶき やすのり) 氏

ヤフー株式会社 マーケティングソリューションカンパニー ディスプレイ広告ユニット Yahoo! ディスプレイアドネットワーク サービスマネージャー

独立系Sierにシステムエンジニアとして勤務。2011年にヤフー株式会社に入社。2012年よりYahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)のプロジェクトマネージャーとしてインタレストマッチや各種ターゲティング機能の構築・市場導入に従事。2014年よりヤフーの主要な広告サービスであるYDNのサービスマネージャーを務める。

淵之上 弘 (ふちのうえ ひろし)

株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 第2本部 統括

2008年、サイバーエージェントへ入社。インターネット広告事業本部にて、営業としてDB系最大手クライアントを担当。2014年より統括に就任し、リスティング広告、ディスプレイ広告の運用、メディアの責任者を務める。

竹ノ内亮太 (たけのうちりょうた)

株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 エグゼクティブアカウントプランナー

2011年、サイバーエージェントへ入社。インターネット広告事業本部にて、アカウントプランナーとして大手クライアントのディスプレイ広告を中心としたプロモーションを担当。2012年より、プレイヤー職の最高ランクであるエグゼクティブプランナーに就任。

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